スズメバチとアシナガバチはどちらも縞模様が目立ち、危険性が高いイメージがあるでしょう。実は分類も途中までは共通しているので、見た目や性格も似ているところがある2種類です。しかし、分類が異なる以上、明確な違いも存在します。
そこで本記事では、スズメバチとアシナガバチを6項目で比較し、違いを解説します。見た目・巣・飛行能力・性格・毒性・活動時期の違いがわかるので、ぜひ参考にしてください。
スズメバチとアシナガバチ違い一覧


| 種類 | スズメバチ | アシナガバチ |
|---|---|---|
| 分類 | スズメバチ科スズメバチ亜科 | スズメバチ科アシナガバチ亜科 |
| 体長 | 11~37mm | 11~26mm |
| 見た目の特徴 | 大きい種類が多い 腹部が膨らんでいる | 脚が長い 細く見える |
| 飛び方 | まっすぐ飛ぶ | ふらふら飛ぶ |
| 性格 | 攻撃性が強いものが多い | 比較的おだやか |
| 活動時期 | 4~11月 | 4~11月 |
| ピークの時期 | 7~10月 | 6~8月 |
| 巣の特徴 | 硬くマーブル模様の球型 | 紙に似た質感の傘型 |
| 巣の場所 | 閉鎖的な場所 | 開放的な場所 |
| 毒性 | 強いものが多い | 中程度 |
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スズメバチとアシナガバチの分類(分岐図)

スズメバチもアシナガバチもスズメバチ科に属する蜂です。スズメバチ科の中で、スズメバチ亜科とアシナガバチ亜科に分かれます。体の特徴や巣の形、習性などが分類の基準です。
スズメバチとアシナガバチの見た目の違い
体の大きさや特徴、頭部の形状、飛び方など成虫の見た目の違いを解説します。
体長の違い

国内最大の蜂はスズメバチ亜科スズメバチ属のオオスズメバチです。その他のを含めてスズメバチは17種類が日本で確認されていますが、スズメバチ属に分類される8種類は20mmを超え、30mm近いものも見られます。ただし、スズメバチ属以外のスズメバチには小さいものもいます。
一方のアシナガバチは日本に11種類が生息していますが、14~20mm以下が中心です。大きい種類でも最大の体長が26mmで、オオスズメバチと比較すると1cm以上小さいサイズといえます。
体の特徴の違い
スズメバチ

アシナガバチ

| 種類 | スズメバチ | アシナガバチ |
|---|---|---|
| 頭部 | 丸みがある | 細い |
| 大顎 | 発達している | 目立たない |
| 腹部 | 膨らんでいる | 細い |
| 脚 | 短い | 長い |
最も大きな違いは脚の長さです。名前のとおりアシナガバチの脚は長く、飛行時・着地時ともに目立つため簡単に見分けられます。
また、スズメバチは頭部・胸部・腹部ともに丸みがある一方、アシナガバチは全体的に細い傾向があります。大顎は口の部分で、スズメバチの方が発達しており大きいことが特徴です。アシナガバチにも大顎はありますが、スズメバチほど目立ちません。
スズメバチとアシナガバチの巣の違い


| 蜂の種類 | スズメバチ | アシナガバチ |
|---|---|---|
| 巣材 | 樹木の繊維 樹皮 唾液 | 樹木の繊維 唾液 |
| 形 | 初期段階は提灯型またはとっくり型 球形に変化 | 傘型・お椀型 |
| サイズ | 20~80cm | 10~20cm |
| 色・模様 | 波模様やマーブル模様 | 灰色~茶色 |
| 質感 | 硬い | 紙のような質感 |
| 構造 | 外殻と中枢(育房室等)の間に空気層がある | 六角形の育房室がむき出し |
| 場所 | 閉鎖的な場所を好む(屋根裏、床下、木の洞など) 高い木の上部の枝下などにも営巣可能 | 雨風をしのげる開放的な場所(低木の茂み、軒下など) |
| 営巣開始時期 | 4月下旬~5月 | 4~5月 |
スズメバチの女王蜂が単独で営巣する初期段階の巣はとっくり型や提灯型です。その後、働き蜂が羽化してから球型に変化していきます。巣材は樹木の繊維や樹皮と唾液を混ぜたもので、さまざまな木から素材を集めるため、外殻にマーブル模様があらわれます。外殻と中枢の間に空気層があるのも特徴です。営巣場所には閉鎖的なところを好みます。
スズメバチの巣が最大80cmもの大きさまで肥大するのに対し、アシナガバチの巣は最大20cmと小さめです。外殻と中枢という構造ではなく、六角形(ハニカム構造)の育房室が外に向かってむき出しになっています。質感は紙に似ており、色は灰色~茶色が中心です。営巣場所には雨風・直射日光をしのげる開放的な場所を好みます。
スズメバチとアシナガバチの飛び方・飛行能力の違い

スズメバチは直線的に飛ぶ一方、アシナガバチはふらふらと飛びます。アシナガバチは脚をだらんと垂らして飛ぶのも特徴です。
飛行能力はスズメバチの方が高く、通常時は時速25~30kmで飛行します。攻撃時は瞬間的に時速40kmで飛ぶことも可能です。また、オオスズメバチに関しては通常時でも時速40kmの飛行能力をもっています。日本人男性の100m走の平均タイムは13~14秒、時速にして25~27kmなので、スズメバチから逃げ切るのは困難です。
行動範囲もスズメバチの方が広く、アシナガバチが巣から50~100m圏内で行動するのに対し、スズメバチは平均1~2km、周辺のエサがなくなれば10kmまで行動範囲を広げます。
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性格の違い

性格に関しては、スズメバチ亜科とアシナガバチ亜科を単純には比べられません。各亜科の中でも分類によって性格がまったく異なるからです。攻撃性に注目すると次のような順番になります。
- スズメバチ亜科スズメバチ属
- アシナガバチ亜科アシナガバチ属
- アシナガバチ亜科ホソアシナガバチ属
- スズメバチ亜科ホオナガスズメバチ属4種類
- スズメバチ亜科クロスズメバチ属
- アシナガバチ亜科チビアシナガバチ属
攻撃性1位のスズメバチ亜科スズメバチ属は、巣に近づく存在を外敵とみなして攻撃します。近づいてきた段階でカチカチと顎を鳴らして威嚇し、威嚇を無視して接近してくるものに攻撃するのが特徴です。1匹の攻撃を合図に、巣から大群が飛び出してくることもあります。
攻撃性2位以下は刺激されると攻撃しますが、自ら積極的に襲うタイプではありません。しかし、スズメバチ属と比べて巣が目立たないことも多いため、気づかぬうちに巣を刺激して攻撃されるケースはあります。
以下の記事では次で解説する毒性の違いも含めて、蜂の危険度ランキングを掲載しているので、ぜひご覧ください。

スズメバチとアシナガバチの毒性の違い

| 毒の種類 | 作用 | スズメバチ | アシナガバチ |
|---|---|---|---|
| ヒスタミン | 血管拡張、腫れ、発熱 | 〇 | 〇 |
| セロトニン | 強い痛み | 〇 | 〇 |
| カテコールアミン | 痛み、神経興奮 | 〇 | × |
| アセチルコリン | 強い痛み、神経興奮 | 〇 | × |
| ハチ毒キニン | ―(痛みに作用する可能性) | 〇 | 〇 |
| マストパラン | 肥満細胞の破壊 | 〇 | × |
| ホスホリパーゼA1 | 細胞膜の破壊(アレルゲン) | 〇 | × |
| ヒアルウロニダーゼ | 毒の浸透促進 | 〇 | 〇 |
| アンチゲン5 | ―(アレルゲン) | 〇 | 〇 |
| プロテアーゼ | タンパク質の分解 | 〇 | × |
| マンダラトキシン | 神経毒 | △ | × |
スズメバチの中で強い毒を持っているのはスズメバチ属です。多用な成分を含む毒のカクテルを持っているのが特徴で、複数匹に刺されれば刺されると重症化するリスクが高いといえます。
その中でも、オオスズメバチはマンダラトキシンという独自の神経毒を持っているため、1匹に刺されるだけでも、めまいや呼吸困難を引き起こす恐れがあります。ただし、クロスズメバチ属やホオナガスズメバチ属の毒はそれほど強くありません。
アシナガバチの毒はスズメバチ属と比べると弱く、痛みや腫れは生じますが軽度な症状で収まることが少なくありません。ただし、以前に蜂に刺されたことがある人は、蜂の種類に関わらずハチアレルギーによるアナフィラキシーショックを引き起こすリスクがるため、油断せず遭遇を回避しましょう。

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活動時期の違い

スズメバチ、アシナガバチともに、女王蜂が冬眠から目覚めるのは4月が目安です。女王蜂単独で小さな巣を形成すると産卵し、以降は羽化した働き蜂に営巣や子育て、狩りを任せて産卵に専念します。
スズメバチの巣は、働き蜂が羽化する6月下旬から10月まで肥大化を続け、働き蜂の数も数百匹単位まで増加します。種類によっては2,000匹もの大群になるため注意が必要です。営巣と攻撃性は9~10月にピークを迎えます。
アシナガバチは働き蜂が羽化する6月から9月まで営巣しますが、最大直径でも20cm程度です。働き蜂の最大数も100匹程度で、それほど多くはありません。営巣と攻撃性がピークを迎えるのは8~9月です。

種類によっても差があるのでアシナガバチでも油断は禁物
スズメバチとアシナガバチを比較すると、平均的にはスズメバチの方が大きく、攻撃性・毒性・飛行能力が高いため危険であることがわかりました。全体的に丸みのあるフォルムで、素早く飛ぶ大きな蜂をみかけたら近づかないようにしましょう。
ただし、細分化した種類によってはアシナガバチの方が危険な可能性もあるため、油断は禁物です。たとえば、クロスズメバチとセグロアシナガバチでは、毒性・攻撃性ともにセグロアシナガバチの方が強力といえます。また、事故事例でもアシナガバチの被害件数が少ないわけではありません。
7月以降はスズメバチ、アシナガバチともに働き蜂が羽化し、攻撃能力が高まっているため注意しましょう。駆除が必要なときは、ぜひプロへの相談をご検討ください。
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