木酢液は煙の臭いと酢の臭いが混じった独特な香りのする液体です。蜂よけや害獣よけ、青虫等の忌避剤、土壌改良などに使えるため、園芸や農業においては身近なアイテムといえます。その一方で「聞きなじみがない」「どんなものかよくわからない」という人も多いのではないでしょうか。
本記事では、木酢液の成分と効果、作り方や市販品の選び方に至るまで詳しく解説します。後半では蜂よけとして使うときの設置方法や木酢液のデメリット、使用上の注意点も解説するので、ぜひ参考にしてください。
木酢液とは

木酢液は木炭を製造する過程で生じる煙を、冷却して液体にしたものです。液体の80~90%水分ですが、残りの10~20%は次のような成分で構成されています。
- 酢酸・有機酸
- アルコール類(メタノールなど)
- 中性物質(アセトンなど)
- フェノール類
- ホルムアルデヒド
水分以外の主成分は酢酸・有機酸で、強酸性の液体です。人間にも有害な毒素であるホルムアルデヒドも含みますが、基本的には希釈して使うため人体に影響するほどではありません。
木酢液の効果

木酢液は原液を希釈する濃度によって、効果・用途が異なります。次の表をご覧ください。
| 希釈濃度 | 効果・用途 |
|---|---|
| 0倍(原液) | カビの除去、強殺菌 |
| 2~5倍 | 蜂・害獣よけ(ボトルに入れて設置) |
| 20~30倍 | 土壌消毒(土壌病害菌の繁殖防止) |
| 50~100倍 | 生ごみの消臭、土壌改良 |
| 200~300倍 | 植物の生育抑制、青虫等の害虫忌避剤 |
| 500~1,000倍 | 植物の成長促進 |
原液は強酸性なので、カビや菌の除去に使えます。2~5倍に希釈したものは、ペットボトルなどに入れて設置することで、蜂・害獣よけとして効果があります。ただし、人間にとっても心地いい臭いではないため、屋外の使用向きです。
20~30倍は土壌に住む病害菌の繁殖防止に使えます。酸性が強いため、散布直後は植物の生育には向いていませんが、植え付けよりも前の期間で散布すれば土壌の環境を整えることが可能です。この他、希釈濃度によって消臭や植物の生育抑制、あるいは成長促進に使えます。
木酢液には人間にとっては有害な成分が含まれていないため、農薬や殺虫剤などを使いたくないときにおすすめです。
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木酢液の作り方

木酢液は設備さえあれば自分でも作れます。手順は次のとおりです。
- 耐酸性のパイプがついた炭窯を用意する
- パイプ(排煙口)を80~150℃に冷やす
- 排煙口の下に耐酸性の容器を置く
- 汚染のない木を釜で燃やす
- 煙をパイプに集めて2で冷やす
- 冷やされた煙が液体となって出てくる
- 6の液体を3~6カ月、冷暗所で放置する
- 7で液体が3層(油分、木酢液、タール)に分かれる
- 8の2層目にある木酢液だけを採取する
炭窯はドラム缶にパイプをつけるなど、工夫したものでも構いません。煙を集めて冷却できるように設計しましょう。ただし、煙を冷やしただけの液体は、人間にとっても有害なタールなどが含まれているため使えません。3~6カ月の放置によって木酢液だけを抽出する必要があります。
木酢液を多用する場合は上記の方法で自作するのも手ですが、一般家庭でこれらの設備を用意するのは現実的ではありません。次の市販品の選び方を参考に、商品を購入することをおすすめします。
市販の木酢液の選び方

市販の木酢液を選ぶときのポイントを4つ紹介します。
広葉樹が原材料のものを選ぶ
高品質な木酢液を求めるなら、広葉樹が原材料となっているものが良いとされています。具体的には、クヌギ・ナラ・ブナ・カシなどです。
一方、ウルシ・ハゼノキ・クスノキなどの木から作られた木酢液は避けるべきとされています。人間にとって有害な成分を含む木なので、安全性がわからないからです。海外産の木酢液などで、使用されている木材が記載されていない場合は、念のため避けましょう。
にごり・沈殿がないものを選ぶ
作り方で確認したとおり、しっかりした製法で作られた木酢液は油分やタールとは分離するため、にごりや沈殿は少なくなります。高品質なものほど透明度が高いため、見た目もしっかり確認しましょう。にごり・沈殿物・浮遊物がみられる場合は避けるのが無難です。なお、色は通常、濃い黄褐色~赤褐色で麦茶のような見た目をしています。
pH2.8~3.2の酸性度を選ぶ
木酢液では酸度がpH2.8~3.2のものが高品質といわれています。なお、pHが低いほど酸度が高いことを示しています。pH4.5~6.0は弱酸性、pH7は中性、pH7よりも大きいものはアルカリ性です。
市販の木酢液の酸性度はpH1.5~3.7ですが、pH2.8よりも酸度が高いものは、酢酸などの有機酸を添加している可能性があります。逆に、ph3.2を超えるものは希釈されている可能性があります。いずれも純粋な木酢液の効果とは異なる可能性があるため注意が必要です。
蜂よけとしての木酢液の使い方

蜂よけとして使う場合は、木酢液をペットボトルに入れて外に吊るすだけでOKです。木酢液の臭いが広がるように、ペットボトルの口を切り取るか側面に複数の穴を開けましょう。上部にも穴を開けて紐や針金を通し、2~5倍で希釈した木酢液を充填したら木に吊るします。周辺に木酢液の臭いが広がれば設置完了です。
ただし、雨で薄まったり蒸発したりすると効果が薄れるので、2週間に1度は交換するよう心がけましょう。大雨の後は経過時間に関わらず交換することをおすすめします。
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木酢液の注意点・デメリット

木酢液にもデメリットと使用上の注意点があります。代表的なものを3つ紹介します。
金属・機器に付着すると腐食させるリスクがある
酸性の物質が金属に付着すると、化学反応で金属が溶ける恐れがあります。とくに気を付けたい金属は、亜鉛・鉄・アルミニウムです。また、金属の塗装を剥がすこともあります。室外機や給湯器、窓のサッシなどの近くで木酢液を使うのはやめましょう。
濃度によっては植物が枯れる
200~300倍よりも高い濃度で希釈すると、酸性が強すぎて植物の生育が抑制され、枯れることがあります。また、夏場は500倍以上で希釈しても水分が蒸発することで高濃度になり、植物が枯れることがあるため注意が必要です。1,000倍で希釈したものを植物にかけ、様子を見ることをおすすめします。
濃度によってはカビの繁殖を助ける恐れがある
希釈した木酢液はカビにとって好条件の弱酸性になる可能性があります。
カビはpH2.0~8.5の酸性の環境で生育可能です。言い換えれば、pH2.0よりもpH値が低い強酸性の環境では生育できません(酸性生育限界)。このため、pH1.5~3.7の木酢液の原液であれば、カビの除去にも効果があります。
一方、カビはpH5.0~6.5の弱酸性の環境を好むという特性もあります。500倍に希釈した木酢液のpHは5.5~6.0になり、カビが好む条件と合致するため、希釈した木酢液を使うと逆効果です。期待する効果に合わせた濃度に調整しましょう。
木酢液を蜂よけに使うなら2~5倍に希釈して設置しよう
木酢液は希釈濃度によって異なる効果が得られる、汎用的な液体です。蜂よけに使うのであれば、2~5倍で希釈した高濃度の状態のものを、ペットボトルに入れて設置しましょう。蜂は木酢液の臭いを嫌うため、寄り付かなくなるはずです。ベランダの手すりや庭木に設置することをおすすめします。
ただし、木酢液は強酸性であるため、金属とは相性がよくありません。また、植物に使う場合は濃度を間違えると枯らすこともあります。使用目的に応じた濃度は覚えておきましょう。
また、蜂よけとしては使えますが、殺虫効果はありません。蜂の飛来を根本的に解決したい場合は、巣の場所を特定して駆除しましょう。巣がどこにあるかわからない場合や危険度が高い場合は、ぜひプロに相談してください。
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木酢液に関するよくある質問



