蜂を頻繁に見かけるようになると、近くに巣があるのではと疑うことがあるでしょう。しかし、場所がわからないと、気づかぬ内に巣に近づきすぎる可能性があります。ある程度は目星をつけて、巣がないかを確認しておきたいところです。
そこで本記事では、蜂が巣作りに好む環境と蜂が巣を作りやすい場所を紹介します。人の生活圏編と自然環境編に分けているので、日常生活とアウトドアを楽しむときの参考にしてください。なお、各場所でさらに詳しく解説した記事へのリンクも掲載しています。
蜂が巣作りに好む環境

蜂の種類によって、閉鎖的な場所を好む蜂と開放的な場所を好む蜂に分かれますが、どちらにも共通して選ばれる場所の条件があります。ここでは、蜂の種類を問わず好まれる環境・条件を解説します。
雨風・直射日光をしのげる場所
雨に濡れたり風に煽られたりすると、蜂は上手に飛行できなくなるため休まざるを得ません。狩り・採蜜・営巣の効率が低下するため、雨風をしのげる場所を選びます。
直射日光を避けるのは、巣内の温度上昇を防ぐためです。スズメバチは44~46℃が致死温度、ミツバチは50℃近くまで耐えられますが、気温がピークの8月の日中は巣内で休む傾向にあります。このように熱には強くないため、比較的涼しい日陰が蜂にとって好条件です。
外敵から身を守りやすい場所
蜂の天敵はハチクマ(鳥)やアナグマなどです。これらの天敵を避けるために、営巣には鳥獣に発見されづらい場所や侵入されづらい場所を好みます。具体的には、上空から発見しづらい木陰、土の中や壁・屋根に囲われた場所、狭い隙間などが好条件です。

エサ場が近い場所
エサ場が近い方が育児の効率が高いため、次のような条件の場所を好みます。
- 甘い香りがする場所
- 芋虫などの他の虫が多い場所
自然界における甘い香りは蜂のエサになる花の蜜や果汁が近いことを示すため、蜂が営巣場所に選ぶ傾向があります。ただし、蜂は香水や柔軟剤、ジュースなどの人工的な香りでもエサ場が近いと判断するため注意が必要です。
また、他の昆虫を捕食するスズメバチやアシナガバチは、他の虫が多いところもエサ場とみなします。具体的には、落ち葉が溜まった場所や水場の近く、田畑などです。
蜂の巣が作られやすい場所【人の生活圏編】

人の生活圏において蜂の巣が作られやすい場所は次のとおりです。
- 屋根裏
- 軒下
- ベランダ
- 換気扇フードの中
- 室外機の中
- シャッター・戸袋
- 床下
- 木のうろ
- 低木の茂み
- 土の中
それぞれの場所を好む蜂の種類を含めて、以下で詳しく解説します。
屋根裏

屋根裏は閉鎖的な場所を好むスズメバチが巣を作りやすい場所です。外壁の亀裂や通気口から入り込み、屋根裏に到達して営巣を開始します。
働き蜂が増え、羽音や木をかじる音が大きくなるまで気づかないことも多いため、注意が必要な場所です。スズメバチを頻繁に見かけるようになり、なおかつ蜂の巣がみつからない場合には屋根裏を疑いましょう。
なお、屋根裏にスズメバチの巣が作られた可能性が高いときは、自分で屋根裏を確認するのはNGです。可能性があると判断した時点で蜂駆除業者に相談しましょう。点検口を開けた瞬間に蜂が室内に侵入したり、刺されたりするリスクがあるからです。
屋根裏に蜂の巣を作られるケースを詳しく知りたい人は、次の記事をご覧ください。

軒下

玄関などの軒下は雨風をしのげるため、アシナガバチやミツバチなど、さまざまな蜂が巣を作る可能性があります。人の出入りがある場所なので、攻撃される可能性が高く要注意な場所といえます。
一方、巣の初期段階でも目視しやすい場所でもあるため、自力で駆除できる可能性があります。巣の大きさが10cm以内であれば、自分で駆除できるかどうかを検討してみましょう。ただし、攻撃性・危険性の高いスズメバチの場合はハイリスクです。
玄関に蜂の巣を作られるケースや自分で対処する方法を詳しく知りたい人は、次の記事をご覧ください。

ベランダ

ベランダも雨風をしのげるため、さまざまな蜂が巣を作りやすい場所です。とくに、花のプランターを置いている場合や香りの強い柔軟剤を使った洗濯物を干している場合は好まれます。
ベランダの中で巣を作られやすい場所は次のとおりです。
- 室外機
- 室外機とエアコンをつなぐダクト付近
- 軒先
- 柵
- プランター同士の隙間
- 大型植物の中
一見するとわかりにくい場所に巣を作られている可能性があるので、1匹みかけたら、窓を閉めた状態で室内から観察してみましょう。網戸を閉めて燻煙材やミントの香りを焚くのもおすすめです。

換気扇フードの中

換気扇も蜂が巣を作りやすい場所の1つです。ダクトを通して家の内部とつながっているため、蜂が室内に侵入する可能性があります。巣を作られてしまった場合は、換気扇を常に回して蜂の侵入を防ぎましょう。
換気扇付近に巣を作る蜂はスズメバチやアシナガバチなど、さまざまな蜂の種類が考えられます。危険性の高い蜂の可能性もあること、作業しづらい場所であることから、自分で蜂の巣を駆除・撤去するのはおすすめできません。
蜂が嫌がる燻煙剤やミントの香りを室内で焚き、換気扇に吸い込ませることで追い出せる可能性はあります。これで逃げない場合は、蜂の駆除業者や賃貸物件の管理会社などに相談しましょう。
換気扇や換気口(通気口)に蜂の巣を作られるケースを詳しく知りたい人は、次の記事をご覧ください。

室外機の中

室外機の中に巣を作りやすいのはアシナガバチです。アシナガバチは開放的な場所を好むため、特別に好んで営巣するわけではありませんが、巣が小さいため室外機も選択肢に入ります。
なお、室外機に蜂の巣を作られたときは、必ず蜂駆除業者に依頼しましょう。市販の薬剤では、室外機の基盤や配線をショートさせる恐れがあるからです。仮に駆除できたとしても、撤去には技術が求められます。
また、やむおえない状況で室外機自体を撤去・解体する必要がある場合、フロンガスの取り扱い資格や電気工事士の資格が必要です。個人で対応するのは難しいといえるでしょう。
室外機に蜂の巣を作られるケースを詳しく知りたい人は、次の記事をご覧ください。

シャッター・戸袋

シャッターを開けっぱなし、あるいは閉めっぱなしの期間が長い場合、窓との隙間や戸袋(収納場所)に巣を作られることがあります。戸袋内部に作られた場合は目視できないため、蜂の行動を観察して推察するしかありません。
閉鎖空間を好むスズメバチが巣を作りやすく、一般的なスプレーでは薬剤が回りにくいため自力での駆除が難しい場所です。内部で想像以上に巣が大きくなっている可能性もあり、集団で襲われるリスクがあります。
シャッター付近を蜂数匹がうろうろしていれば、シャッター内部に蜂の巣があると考えて良いでしょう。実態がわからない段階でも、蜂駆除業者に相談することをおすすめします。
シャッターに蜂の巣を作られるケースを詳しく知りたい人は、次の記事をご覧ください。

床下

床下は閉鎖的な場所を好むスズメバチが巣を作りやすい場所です。湿度や温度を保ちやすく、日光の影響も受けないためスズメバチにとって好条件がそろっています。侵入経路は換気用の隙間や外壁の亀裂などです。
床下は目視が難しいため、営巣されると気づかぬうちに巣が肥大化する可能性があります。床下から羽音やカリカリというような音が聞こえたら、スズメバチの存在を疑いましょう。ただし、自分で駆除するのは避けるべき場所です。詳しくは次の記事で解説しています。

木のうろ・低木の茂み

木や低木の茂みも蜂が好む場所です。閉鎖的な環境を好むミツバチとスズメバチは、木のうろ(洞)を好む傾向があります。開放的な場所を好むアシナガバチにとっては、茂みの中が好条件です。
ただし、ミツバチやスズメバチでも葉や枝が覆い茂った木であれば、うろ以外の場所にも営巣することがあります。
なお、低木や手の届く枝に巣が作られたときは自分で駆除できる可能性がありますが、高いところに作られたときや巣の全体像が見えないときは蜂駆除業者に依頼しましょう。脚立やはしごを使うと襲われた際に転落するリスクがあり、巣の規模がわからないと大群に襲われる恐れがあるからです。

土の中

土の表面に穴があるときは、蜂の巣の可能性があります。人の生活圏においては比較的攻撃性の低いツチバチやドロバチの可能性が高いものの、極めて危険なオオスズメバチの恐れもあるため注意が必要です。
また、土の中の巣は見つけにくく、誤って踏み抜いてしまうこともあります。攻撃性の低い蜂でも踏んでしまえば危険なので、土の中に巣ができた可能性があるときは家族や周辺住民に注意を促すことをおすすめします。
土の中に蜂の巣を作られるケースと蜂の種類を詳しく知りたい人は、次の記事をご覧ください。

蜂の巣が作られやすい場所【自然環境編】

ここでは、河原・森林・山を好む蜂の種類を紹介します。
河原
河原はアシナガバチやスズメバチが巣を作りやすい場所です。水場が近く他の虫が豊富で、巣材となる草や泥、木々も多いため営巣に適しています。河原で巣を作りやすい蜂の種類は次のとおりです。
- トガリフタモンアシナガバチ
- キアシトックリバチ
- クロスズメバチ
森林
森林は花や虫などのエサと巣材が豊富なため、数多くの種類の蜂が住んでいます。代表例は次のとおりです。
- キボシアシナガバチ(平野部~低山)
- ヤマトアシナガバチ
- ヒメホソアシナガバチ
- オオスズメバチ
- モンスズメバチ
森林の木のうろや茂みの中、乾いた地面の中などは蜂が巣を作りやすい場所です。散策するときは、羽音やカチカチと顎を鳴らす威嚇音に注意しましょう。
山
暑さが苦手な蜂は標高の高い山に巣を作る傾向があります。具体的な蜂の種類は次のとおりです。
営巣場所自体は森林と同じで、木々や土の中です。種類によっては、ネズミや鳥の巣跡に移り住んでいることもあります。
蜂の産卵と越冬の場所は異なる場合がある

ミツバチは働き蜂を含めた集団で越冬できますが、アシナガバチとスズメバチは女王蜂以外は11月頃に死滅します。越冬場所は次のとおりです。
蜂の種類 | ミツバチ | アシナガバチ | スズメバチ |
---|---|---|---|
女王蜂 | 自分の巣 |
| 土の中 |
働き蜂 | 自分の巣 | ―(死滅) | ―(死滅) |
オス蜂 | ―(死滅) | ―(死滅) | ―(死滅) |
ミツバチは女王蜂と働き蜂が自分の巣で越冬しますが、オス蜂は冬を迎える前に巣から追い出されて死滅します。
アシナガバチとスズメバチは女王蜂のみ巣から離れて土の中で越冬、女王蜂以外は死滅します。アシナガバチとスズメバチの巣は、冬になると基本的には空になるため、自分でも撤去できるでしょう。
ただし、アシナガバチの女王蜂は、空になったスズメバチの巣で越冬することもあるようです。スズメバチの巣を撤去するときは、念のために蜂駆除スプレーを用意しておきましょう。
蜂の巣を探すときの4つのポイント

ここでは、蜂の巣を探すときの服装や行動のポイントを4つ解説します。
明るい色の服を着る・帽子を被る
蜂は黒いものを攻撃しやすいと言われています。天敵である熊の色に由来するなど諸説ありますが、いずれにしても暗い色は危険です。
蜂の巣を探すときは明るい色の長袖・長ズボンを着用しましょう。また、黒髪も狙われやすいので、明るい色の帽子をかぶることをおすすめします。
理想は蜂駆除用の防護服ですが、購入するとなると高額です。蜂の巣に近づかないことを前提とすれば、防護服でなくても構いません。
蜂から3mの距離を保つ
蜂の巣の場所を探す方法としては蜂の行動を追いかけることが定番ですが、蜂との距離は3m以上をキープしましょう。接近しすぎると刺されるリスクがあります。
また、周辺を飛ぶ蜂の数が増えたときは、巣が近い可能性が高いため、それ以上進まずに引き返すのが鉄則です。巣の周辺では多数の蜂が警戒態勢をとっており、不用意に近づくと集団に攻撃される恐れがあります。
静かに行動する
機敏に動くと蜂を刺激する可能性があるため、ゆっくりと静かに行動しましょう。万が一、蜂が向かってきた場合はゆっくりと後ずさりして距離をとることをおすすめします。蜂から3mの距離を保っていても蜂が向かってくるということは、巣の周辺の警戒行動中である可能性が高いからです。
スマートフォンのカメラを活用する
蜂にそれ以上近づけない場所に来たら、スマートフォンのカメラを使って周辺に目を向けましょう。ズーム機能で蜂を追いかけると、巣を見つけやすくなります。
蜂の巣の場所に関するよくある質問
最後に、蜂の巣の場所に関する質問に回答します。
- 家に巣を作りやすい蜂は何ですか?
-
民家などの人の生活圏に巣を作る可能性が高いのは、都市に適応した蜂です。具体的には次のような蜂が挙げられます。
- 蜂の巣の場所がわからなくても蜂駆除業者を呼べますか?
-
呼べます。蜂の巣の場所を特定できない段階でも、蜂が頻繁に飛来するようであれば蜂駆除業者に相談しましょう。周辺を調査して巣の場所を特定してくれます。
ただし、巣の場所を特定できている場合と比べて調査料金がかかる場合があるため、契約前に料金や作業内容を確認することをおすすめします。
- 蜂がずっと同じ場所にいるのはなぜですか?
-
アシナガバチやスズメバチ1匹がずっと同じ場所にいる場合は、狩りの途中の休憩である可能性が高いといえます。また、多くの蜂は夜に休むため、日没までに巣に帰れなかった蜂が民家周辺で休止していることも少なくありません。
ミツバチの場合は分蜂のシーズンに集団で一カ所に留まることがあります。引っ越し先を探している最中の休憩なので、放っておいてあげましょう。
- 蜂は巣からどれくらいの距離を飛びますか?
-
蜂の行動範囲は種類によって異なります。アシナガバチは50~100mほどですが、スズメバチは1~2km、ミツバチは3kmが目安です。1~2匹が飛来するだけであれば、遠くの巣から飛んできているだけという可能性があります。
蜂が巣を作りやすい場所を定期的に確認しよう
蜂は雨風や直射日光をしのげる場所、外敵が侵入しづらく、エサ場が近い場所を好んで営巣することがわかりました。都市に適応している蜂であれば人の生活圏に巣を作ることもあるため注意が必要です。
家の軒下や室外機周辺、外壁の亀裂など、蜂が巣作りに好む場所を把握して定期的に確認しましょう。発見が早いほど安全かつ低コストで駆除できます。
また、河原や森林、山などで散策を楽しむときは、周辺を飛び交う蜂の存在に気を付けましょう。姿が見えなくても、羽音やカチカチという音がしたら蜂がいる可能性があります。一般的な虫よけでは防御できないので、引き返すのがおすすめです。