スズメバチは攻撃性が高く、人間にも危険をもたらす昆虫ですが、自然界では多くの天敵が彼らを捕食しています。
この記事では、スズメバチの天敵TOP5をランキング形式で紹介し、それぞれの生物の特性や行動を詳しく解説します。天敵の特徴から、ススズメバチの被害を軽減するためのアイデアが得られるか考えてみましょう。
なお、この記事には蜂以外の動物や虫の画像も掲載されています。苦手意識のある方はご注意ください。
スズメバチの天敵ランキングTOP5
スズメバチの天敵とされている動物は数多くいますが、成虫を駆逐するという視点でTOP5を選定しました。詳しく見ていきましょう。
- ハチクマ
- オニヤンマ
- シオヤアブ
- オオカマキリ
- 大型の蜘蛛
1位:ハチクマ

- 蜂の巣を掘り起こす
- 蜂の成虫も幼虫も食べる
- 蜂の毒針が刺さりにくい
- 集団攻撃も可能
ハチクマは名前の通り「蜂を食べる鷹」として知られ、地中にある蜂の巣すらも掘り起こし、幼虫・蛹・成虫を食べます。つまり、スズメバチを全滅させられるということです。好むのはクロスズメバチですが、アシナガバチや国内最強のオオスズメバチも狩ります。それでいて、ミツバチを襲うことは稀なので、養蜂にはほとんど影響しません。
危険な蜂を捕食対象にできる秘密は、鱗(うろこ)状の羽毛と鱗に覆われた足です。羽の下や頭部に鱗状の羽毛がびっしりと生えているため、蜂の毒針が皮下まで到達しにくくなっています。硬い足も含めて、鎧を装備しているようなものです。また、蜂毒に対する免疫を持っているという説もあります。
また、他のハチクマが同じ蜂の巣を狙った場合でも牽制し合わず、複数羽で巣を襲う点もスズメバチにとっては脅威です。渡り鳥ですが、蜂が最盛期を迎える夏~秋に日本を訪れるため、危険なスズメバチの巣を効率的に駆除してくれます。
2位:オニヤンマ

- 飛行速度がスズメバチを上回る
- 動体視力が優れている
- 体長が大きい
- スズメバチの上から攻撃する
- 強靭な顎
オニヤンマは日本最大のトンボで、時速60km以上の飛行速度を誇ります。瞬間的には時速100kmに達することもあるようです。飛行に長けたオオスズメバチでも時速30~40kmなので、オニヤンマに狙われたスズメバチが逃げ切ることは困難といえます。動体視力が優れているのもポイントです。
また、オニヤンマは国内最大の蜂であるオオスズメバチ(体長27~37mm)よりも大きく、90~110mmもあります。素早い飛行と大きな体を駆使してスズメバチの上から覆いかぶさることで、毒針を刺せない角度から捕食するようです。強靭な顎でスズメバチの硬い外皮を噛み砕きます。ただし、巣を襲うことはないため2位としました。
3位:シオヤアブ

- 最高飛行速度は時速145km
- 待ち伏せして奇襲
- 鋭い口器を突き刺す
肉食性の昆虫であるシオヤアブは、獲物を奇襲する習性があります。獲物が近くに来るまで待ち、飛びぬけた飛行速度で接近、鋭い口器を突き刺すという戦略です。上空から狙われたスズメバチは毒針を刺したり噛んだりといった抵抗ができないため、そのまま体液を吸われて死亡します。
国内最強の蜂・オオスズメバチに加え、昆虫界最強とも名高いオニヤンマを狩ることもあるほどの攻撃力です。「空の殺し屋」「昆虫界の殺し屋」と呼ばれています。
4位:オオカマキリ

- 強力な前脚で捕獲
- 動きが俊敏
- 大顎で外殻を引き裂く
オオカマキリは強力な前脚と俊敏な動きで、油断したスズメバチを捕食します。巣から離れた個体を標的とした、待ち伏せ型の捕食スタイルです。ただし、スズメバチを積極的に狩るわけではありません。スズメバチの反撃を受けるリスクも高いため、命がけの攻防になることもあります。
5位:大型の蜘蛛

- 巣にひっかかったスズメバチを捕食
- 糸を吐いてスズメバチの動きを止める
ジョロウグモやコガネグモなど、大型かつ巣を張るタイプの蜘蛛もスズメバチの天敵といえます。飛行中に誤って蜘蛛の巣にひっかかると、スズメバチの運動能力をもってしても、逃げ出すことは困難です。さらに蜘蛛が吐き出す糸によってミイラのようにくるまれると、徐々に弱っていくしかありません。その後は体液を吸われます。
積極的にスズメバチを狩らないこと、巣にひっかかるまで待つ必要があることから5位としましたが、スズメバチを確実に狩るという点では上位といえます。
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スズメバチの巣の破壊が可能な哺乳類
成虫を狩る意図がないため今回はランク外としましたが、スズメバチの巣に対する破壊力が高い動物を紹介します。
クマ

山の中に住むクマにとって、スズメバチの巣にいる幼虫や蛹は貴重なタンパク源です。土の中のスズメバチの巣も掘り起こし、自らの巣穴に持ち帰って食べます。熊の皮膚は厚く毛も密集しており、毒針が通りづらいため、反撃してくる成虫のことは無視して巣を狙うようです。
巣を根こそぎ破壊して食べつくすという点で、スズメバチにとっては脅威といえます。ただし、スズメバチも無抵抗なわけではありません。毒噴射によってクマの目を潰したり、比較的毒針が刺さりやすい耳や鼻を狙ったりします。また、スズメバチが黒い色を狙うのは、クマ対策として進化したという説があります。
アナグマ

地面に巣を作るタイプのスズメバチにとっては、アナグマの存在が脅威です。鋭い嗅覚で巣を探し出し、硬い爪で掘り起こして幼虫を食べてしまいます。アナグマの皮膚は厚く、多少の刺し傷では怯みません。なお、蜂蜜を狙って養蜂されているミツバチの巣箱を襲うこともあるようなので、人間にとっても厄介な存在といえます。
スズメバチの天敵になり得る鳥類
スズメバチを積極的に捕食するわけではないものの、一部の鳥類も天敵として機能します。
モズ

モズはスズメバチを含めて、さまざまな昆虫や小動物を捕獲します。すぐに食べずに、木の枝や鉄線などの鋭いものに突き刺して保管する「はやにえ」という習性があるのも特徴です。庭の枝などにスズメバチが突き刺されていれば、モズの仕業と考えられます。
カラス

山に住むカラスにとっても、蜂の巣内にいる幼虫や蛹は貴重なタンパク源です。カラスは知能が高いため、スズメバチの巣を観察し、隙を突いて襲うほか、他のカラスと協力して集団攻撃することもあります。
ニワトリ

ニワトリは雑食性があり、地上に落ちたスズメバチをついばむことがあります。ただし、積極的に襲うわけではなく、あくまで偶発的なケースです。
スズメバチの天敵になり得る昆虫
天敵というほど積極的にスズメバチを襲うことはないものの、スズメバチを倒す可能性はある昆虫を紹介します。
ギンモンシマメイガ

蛾の一種であるギンモンシマメイガは、スズメバチの巣に寄生する蛾です。巣の外皮や巣盤に産卵し、孵化した幼虫が巣に穴を開けて侵入します。その後は巣盤・幼虫・蛹を食べて成長するため、巣の内部からダメージを与える存在です。
ニホンミツバチ

ニホンミツバチはオオスズメバチに捕食される側ですが、ただでやられるわけではありません。集団戦術でスズメバチに対抗します。代表的な方法が「熱殺蜂球(ねっさつほうきゅう)」です。スズメバチを取り囲み、体温で熱して殺すという高等な戦法を用います。詳しくは次の記事をご覧ください。

ムカデ

海外の資料によれば、ムカデがスズメバチを捕食した事例があるようです。しかし、積極的に巣を襲うものではなく、弱って落ちたスズメバチの可能性が高いといえます。データが少なく、ムカデがスズメバチの天敵になり得るのかは不明瞭です。
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スズメバチの天敵は駆除に役立つ?

ここでは、スズメバチの天敵を駆除・忌避に活用できるのかどうかを考えてみましょう。
天敵を飼うのは現実的ではない
スズメバチを駆除するには天敵となる動物を屋外に放つ必要がありますが、生態系への影響や安全性の観点から推奨できません。さらに、ルール上の制約もあります。具体的には次のとおりです。
| 天敵の種類 | 捕獲・飼育の禁止ルール |
|---|---|
| ハチクマ | 絶滅危惧種で捕獲自体が禁止。 |
| クマ | 愛玩等を目的とする飼育は禁止。 (動物園、研究目的のみ可) |
| アナグマ | 鳥獣保護管理法の保護対象。 (無許可の駆除・捕獲は禁止) |
また、オニヤンマやシオアヤブを飼って育てることは極めて困難です。強いていえば、オオカマキリを庭やプランターで飼うことはできそうですが、スズメバチを駆逐するほどの威力は期待できません。
模型を使ってみる
昆虫界最強といわれるオニヤンマの模型を設置すると、害虫の被害を抑えられるといわれています。蜂にも視力があるため、天敵の姿が見える場所にわざわざ寄ってくることはないと考えられるからですスズメバチが飛来する場所にオニヤンマの模型を設置すれば、営巣場所に選ばれることを回避できる可能性があります。
ただし、物の見え方は蜂と人間では大きく異なるので、オニヤンマの模型がどの程度の範囲(距離)まで効果を発揮するかはわかりません。ベルト通しなどを使って腰からぶらさげていても、頭は狙われる可能性があります。窓辺に吊るすなど、限られた範囲かつ遠くからでも視認しやすい場所に限って有効な方法と考えておきましょう。
生態系を守ることはできる
スズメバチの天敵であるハチクマは広葉樹林を好みますが、スギ・ヒノキ植林地の拡大などによって自然林が減少したため、個体数が減っているといわれています。日本全土で絶滅危惧種や希少野生生物に指定されているほどです。
天敵となる動物の生態系を知り、守る活動をすることがスズメバチによる刺傷被害を減らすことにつながる可能性があります。一方で、スズメバチも生態系のひとつであるため、バランスが重要です。
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スズメバチの天敵から得られる駆除のヒント

ハチクマ、アナグマ、クマの特徴からわかることは、スズメバチの駆除には分厚い皮膚が必要であることです。また、毒噴射から目を守る装備も必要と言えます。人間に置き換えた場合は、厚手のウェアとゴーグルになるでしょう。これらを完備したものが、蜂駆除用の防護服です。
しかし、本格的な防護服は高額であるため、蜂駆除を生業としない限りは購入をおすすめできません。地域によっては自治体が無料貸し出しをおこなっているので、ホームページなどをチェックしてみましょう。
あるいは、一般的な服やアイテムを組み合わせた防護服相当のウェアで代用する方法もあります。次の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。

最も安全な方法は蜂駆除業者への相談

スズメバチの巣が住宅周辺にある場合、刺激すれば攻撃を受ける危険性があります。蜂の巣の規模によっては、防護服相当のウェアを着用していても、自力で駆除するのは困難です。危険性が高いときは、天敵の出現を待ったり、自力で駆除するのを試みたりするのではなく、専門の駆除業者に相談することをおすすめします。
スズメバチの天敵を飼うのは難しい
スズメバチの天敵には、スズメバチの攻撃を無効化する特徴があることがわかりました。人間でいえば、蜂駆除用の防護服と着用した状態が該当します。しかし、防護服を着用していても、比較的薄手な部分を狙われれば毒針が貫通するリスクもあるため危険です。
スズメバチの天敵が減らないように自然環境を守りつつ、駆除せざるを得ないときはプロに依頼するのが無難です。オニヤンマの模型の活用も、万全な対策とはいえないため、蜂の飛来に悩んでいるのであれば蜂用忌避剤などの使用も検討しましょう。
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