民家やビルの外壁に蜂の巣が作られることがあります。窓を開けたときや出入りの際の刺される被害にあうリスクがあるため要注意です。
本記事では、壁に巣を作ることが多い蜂の種類と巣の特徴、壁が選ばれる理由を解説します。後半では駆除方法と再発予防策、壁に大群がとまっているケースや壁の中に侵入するケースも解説するので、ぜひ参考にしてください。
壁に巣を作りやすい蜂の種類
壁に巣を作りやすい蜂は、アシナガバチとドロバチです。この2種類の蜂は、屋根がない場所でも営巣可能な巣の構造・特性を持っています。
アシナガバチ

アシナガバチの巣は傘型・お椀型と呼ばれる形状で、質感は紙に似ています。接着面から柄のようなものを伸ばして営巣できるため、壁に営巣することも少なくありません。
色は灰色~茶色のものが多く、民家の壁の色と同化しやすいため、大きくなってから気づくことも多いようです。春の初期段階は女王蜂単体で営巣していますが、6月下旬~7月には働き蜂が羽化し、8月にかけて巣が15~20cm程度まで大きくなるため注意しましょう。アシナガバチを詳しく知りたい人は、次の記事をご覧ください。

ドロバチ

ドロバチは名前のとおり泥で巣を作る蜂です。巣の見た目は泥の塊そのもので、壁に泥を貼り付けて営巣します。サイズも1~4cmと小さいため蜂の巣とは気づかないケースが多いようです。
巣内にいるのは卵または蛹だけで、成虫が巣で暮らすことはありません。卵を産みつけた成虫(親蜂)は去り、巣の中で羽化した新たな成虫も巣にとどまることなく飛び去ります。ドロバチを詳しく知りたい人は、次の記事をご覧ください。

壁が蜂の営巣場所に選ばれる理由

壁が営巣場所に選ばれる主な理由は次の3つです。それぞれを詳しく解説します。
- 雨風・直射日光を遮れるから
- 外敵が少ないから
- エサ場が近いから
雨風・直射日光を遮れるから
雨風は飛行の妨げとなり、直射日光が当たる高温下では弱りやすいため、営巣場所選びでは雨風と日光を遮れる場所を重視します。壁は風と日光を遮れるほか、上部に屋根または雨よけとなる凹凸があることが多いため、蜂にとって好条件です。
外敵が少ないから
蜂の天敵はクマやアナグマ、ハチクマ(鳥)などです。人の生活圏には出没しにくいため、民家やビルの外壁は巣作りに適した場所といえます。なお、蜂にとっては人も外敵になるため、出入りが少ない場所が選ばれる傾向にあります。放置している空き家などは要注意です。
エサ場が近いから
蜂のエサは花の蜜や果実の汁、他の虫(幼虫用のタンパク質)です。具体的には次のようなもの、場所がエサ場と判断されます。
- 花のプランター
- 果樹(庭木)
- 飲み残しのある空き缶
- 生ごみ
- 落ち葉溜まり(他の虫が繁殖)
果汁の代わりとなるジュースの飲み残し、他の虫の代わりとなる生ごみ(肉や魚など)も要注意です。また、落ち葉溜まりなどの他の虫が繁殖しやすい環境も撤去することをおすすめします。
壁の蜂の巣を放置した場合のリスク

- 蜂に刺される危険性が高まる
- 蜂が室内に侵入する可能性がある
- カビ・汚染の原因になる
アシナガバチの場合ですが、壁にできた巣を放置すると肥大化し、働き蜂の数が増えるため危険です。建物周辺をウロウロされれば、玄関や窓の開け閉めで室内に侵入するリスクも高まります。
また、冬に働き蜂が死滅、女王蜂が地中に潜った後の空の巣であっても、放置することはおすすめできません。蜂の糞・巣材・死骸が乾燥して塵になったもの(ハウスダスト)を吸い込むと、健康に害が出る恐れがあります。カビの発生源にもなり得るため、建物にも悪影響です。
壁にできた蜂の巣の駆除方法

壁にできたアシナガバチとドロバチの巣の駆除方法をそれぞれ解説します。
アシナガバチの巣の場合
蜂用殺虫スプレーを2本用意し、両手に持ちます。片方の手で、巣全体に薬剤の成分が行き渡るように、30秒以上を目安として噴射を続けてください。飛んでくる蜂には、もう1本のスプレーで対処しましょう。
巣を落とす前にゴミ袋を広げておくと、回収作業が楽になります。ゴミ袋が破けないように、二重するのがおすすめです。
虫取り網の硬い部分や高枝切りバサミを使い、壁と巣の接合部(根本)から巣を落としましょう。手が届く位置であれば、通常のハサミでもOKです。落とした巣はゴミ袋の中に入れます。なお、根本部分が壁に残ってしまった場合は、ステップ5まで完了してから、ブラシや高圧洗浄機で洗い落としましょう。
散らばった巣の破片や蜂の死骸を、トングまたはホウキで片づけましょう。死骸であっても毒針が危険なので、素手で回収するのはNGです。片付けが終わったらゴミ袋に入れ、袋の口を閉じます。捨て方は各自治体の指示に従ってください。
なお、アシナガバチの巣の駆除には防護服相当の装備が必要です。次の記事で詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。

ドロバチの巣の場合
ドロバチの巣は小さく、中にいるのは幼虫か蛹のどちらかなので駆除の危険性はほとんどありません。また、巣材は泥でできているので、簡単に落とせます。親蜂が周辺にいないことを確認したら、高圧洗浄機またはブラシで洗い流すだけで駆除は完了です。幼虫や蛹が落ちてきた場合は、踏みつぶすなどしてからゴミ袋に入れましょう。
壁の蜂の巣の再発予防策

蜂の巣を駆除した後は、再発しないように次の予防策を講じておくのがおすすめです。
- 蜂用の忌避剤を散布する
- 定期的に家の周りを点検する
- 甘い香りがするものを撤去する
- 落ち葉溜まりなどを掃除する
忌避剤を散布することで、狩りから戻ってきた蜂や別の群れの蜂の寄り付きを防げます。ただし、効果の残存期間は商品によって異なるので、確認しておきましょう。定期点検と合わせて、蜂のシーズン中は繰り返し散布することをおすすめします。
エサ場となる物の撤去も大切です。花のプランターや空き缶ゴミなどは可能な限り室内に入れ、難しい場合は防虫ネットや蓋つき容器の導入を検討しましょう。他の虫が繁殖しやすい落ち葉溜まりの掃除も大切です。
壁に蜂の大群がとまっているのは営巣ではない可能性が高い

壁に蜂の大群がとまっていることがありますが、これは次の2つの可能性が高いといえます。
- ミツバチの分蜂
- 死を待つアシナガバチ
6月はミツバチの分蜂シーズンで、新女王蜂の群れが引っ越し場所を求めて休憩するときに、群れをなして一カ所にとどまります。一時的なものなので、放っておきましょう。
あるいは、巣を破壊されたり、女王蜂が冬眠に入って仕事がなくなったりした働き蜂が、静かに死を待つために集まってとまっていることもあります。短期間で死亡するため、人の出入りがない場所であれば放っておいても問題ありません。
壁の隙間に蜂が入り込むケースには要注意

壁に巣がなくても、壁の亀裂や隙間に蜂が入り込む様子がみられたときは要注意です。その理由と対策を解説します。
注意すべき理由
- 壁内の巣を駆除するのは困難
- 屋根裏・床下への侵入経路になり得る
アシナガバチは狭い場所でも営巣できるので、壁の中に巣を作るケースがあるようです。壁内は視認が難しく、蜂自体は駆除できても巣を撤去するのは困難であるため、自分で駆除するのはほとんど不可能といえます。既に営巣された可能性が高いときは、蜂駆除業者に相談してください。
また、スズメバチやミツバチなどの閉鎖的な場所を好む蜂や、柱や梁に穴を掘って営巣するクマバチが、壁の隙間を通って屋根裏や床下に侵入することもあります。この場合、気づかぬ内に巣が肥大化したり、柱や梁の穴が拡大したりして躯体に悪影響をもたらすことがあるため、人にも家にもハイリスクです。
壁の隙間への対策
- 外壁用パテで隙間を埋める
- 忌避剤を散布する
隙間から蜂が入り込むのを防ぐために、外壁用パテで埋めましょう。範囲が広ければ、リフォーム業者等に相談することをおすすめします。隙間を埋めるまでに期間を要する場合には、忌避剤を散布してリスクを低減することが大切です。
壁に蜂の巣ができる原因と対策を知って快適な暮らしを守ろう
アシナガバチは壁に巣を作りやすく、攻撃性が比較的強いため注意が必要です。また、壁に亀裂や隙間があると、ミツバチやスズメバチに屋根裏や床下に侵入される恐れもあります。壁の隙間はパテやコンクリートで埋め、忌避剤を使用するなど蜂が寄り付きにくい環境を作りましょう。巣作りが開始される5~6月がとくに要注意です。
万が一、巣が作られてしまった場合は、早急な駆除を検討する必要があります。巣が小さく蜂の数が少なければ自分でも駆除できる可能性がありますが、迷ったときは蜂駆除業者に依頼するのがおすすめです。駆除後は再発防止のための定期点検をおこないましょう。




