スズメバチの活動時期は夏のイメージがありますが、実は春~秋という長期間です。地域によっては11月下旬~12月に活動することもあります。時期によって規模や攻撃性にも違いがあるので、危険を回避するためには時期ごとの活動を把握しておくことをおすすめします。
そこで本記事では、一般的なスズメバチの月別の活動から、地域や種類によって異なる活動時期まで詳しく解説します。周辺の見回りや駆除を検討する際の参考にしてください。
スズメバチの平均的な活動時期は4~11月

| 月 | 攻撃性 | 活動 |
|---|---|---|
| 1月 | ― | 女王蜂単体で冬眠 |
| 2月 | ― | 女王蜂単体で冬眠 |
| 3月 | ― | 冬眠 気温が18度を超えると活動開始 |
| 4月 | 弱い | 女王蜂が営巣場所を探し始める |
| 5月 | 弱い | 女王蜂単独で営巣開始 巣の形はとっくり型や提灯型 |
| 6月 | 強い | 女王蜂が産卵 一部の働き蜂が羽化する |
| 7月 | 強い | 多くの働き蜂が羽化する 巣の形状が丸型になる |
| 8月 | とても強い | 巣が肥大化 活動が活発化 |
| 9月 | とても強い | 巣がさらに肥大化 活動も活発 |
| 10月 | 極めて強い | 新女王蜂が誕生 巣の守備のため攻撃的 巣の大きさがピークに |
| 11月 | 弱い | 多くの働き蜂が死亡 新女王蜂は土の中で越冬 |
| 12月 | ― | 新女王蜂単体で冬眠 |
気温が18℃を超えると女王蜂が目覚める
地中で冬眠していたスズメバチの女王蜂は、気温が18℃を超えると目覚めて地中から出てきます。多くの地域では3月下旬~4月に達する気温ですが、北海道や東北では5月頃の気温です。
女王蜂が好む営巣場所は、自然の中では木の洞や地中、人の生活圏では屋根裏や床下などが挙げられます。共通するのは雨風・直射日光の影響がなく、気温と湿度が安定した閉鎖的な場所という点です。
冬眠から目覚めた段階では働き蜂がいないため、女王蜂単体で営巣を開始します。この初期段階の巣はとっくり型や提灯型が多く見られます。ただし、キイロスズメバチの場合は女王蜂単体でも小さな丸形まで仕上げるようです。


6月下旬に働き蜂の1回目が羽化
女王蜂は初期段階の営巣を完了すると産卵します。この1回目の産卵で生まれた働き蜂(メス蜂)が羽化するのは6月下旬が目安です。働き蜂が羽化すると、女王蜂は狩り・防衛・営巣・育児を働き蜂にバトンタッチします。産卵に専念できるようになるため、働き蜂の数が加速度的に増える時期です。
働き蜂は女王蜂よりも攻撃的なので、スズメバチによる刺傷事故が増えてくる時期でもあります。とくに巣の周辺は要注意です。
7月には巣が丸形へ変化・活動が活発化

7月になると巣は球型に変化し、直径が10cmを超えます。6月よりも多くの働き蜂が羽化するため、営巣スピードが上がるからです。
なお、働き蜂の寿命は4週間程度です。羽化後1週間は身体がまだ完全体ではないため内勤で、育児や営巣を担当します。1週間が経過すると外勤となり、狩り・防衛・巣材集めのために巣から出るようになります。
8~9月で巣が肥大化
7月に活動していた働き蜂は死亡しますが、新たな働き蜂が次から次へと羽化するため数は増え続けます。スズメバチの種類によっては2,000匹を超えるコロニーを形成するため要注意です。巣の規模も大きくなり、30cmを超えることも少なくありません。
攻撃性が極めて高まるのは10月
スズメバチの被害は夏のイメージが強いかもしれませんが、攻撃性が最も高まるのは実は10月です。実際の事故事例でも10月の被害が多く確認されています。攻撃性が高まる理由は、新女王蜂とオス蜂が誕生し、交尾のシーズンに突入するからです。次世代を守るために、防衛活動が活発化します。
また、スズメバチが元気に活動できるラストシーズンであり、巣の規模が最大化しているのもこの時期です。スズメバチの種類によっては巣の直径が60cmを超えます。
11月以降は新女王蜂以外が死亡
巣の外で交尾に成功した新女王蜂は地中や朽木の中に引っ越し、オス蜂は巣には戻らず静かに死を待つようです。巣に残った働き蜂は気温が15℃以下になると活動が鈍化し、10℃以下になると徐々に死亡します。11月下旬になると、基本的にはすべての働き蜂が死亡するため、巣は空になります。
12月~翌年3月は女王蜂の冬眠シーズンです。働き蜂は死亡しているため、人への被害もありません。ただし、沖縄県などの温かい地域では、12月でもスズメバチを見かけることがあるでしょう。
地域別の気温とスズメバチの活動

気象庁の2024年の気象データから各地の月別の平均気温を記載し、多くのスズメバチが目覚める18℃と死亡する10℃以下になる時期を確認します。
北海道(札幌(石狩地方))の平均気温とスズメバチの活動
| 月 | 気温 | スズメバチの活動 |
|---|---|---|
| 1月 | -1.8℃ | 冬眠 |
| 2月 | -1.9℃ | 冬眠 |
| 3月 | 0.8℃ | 冬眠 |
| 4月 | 10.4℃ | 冬眠 |
| 5月 | 14.2℃ | 冬眠 |
| 6月 | 19.0℃ | 目覚め |
| 7月 | 23.3℃ | 活動 |
| 8月 | 24.6℃ | 活動 |
| 9月 | 19.9℃ | 活動 |
| 10月 | 13.8℃ | 鈍化 |
| 11月 | 6.0℃ | 死亡/冬眠 |
| 12月 | -1.9℃ | 冬眠 |
北海道は10℃以下の期間が11月~翌年5月までと長いため、女王蜂は長期間冬眠している可能性があります。また、他の地域では最も活発な10月も平均気温は13.8℃であるため、活動が鈍化している可能性もあります。
東京都の平均気温とスズメバチの活動
| 月 | 気温 | スズメバチの活動 |
|---|---|---|
| 1月 | 7.1℃ | 冬眠 |
| 2月 | 8.0℃ | 冬眠 |
| 3月 | 9.6℃ | 冬眠 |
| 4月 | 17.1℃ | 冬眠/目覚め |
| 5月 | 20.0℃ | 活動 |
| 6月 | 23.1℃ | 活動 |
| 7月 | 28.7℃ | 活動 |
| 8月 | 29.0℃ | 活動 |
| 9月 | 26.6℃ | 活動 |
| 10月 | 20.6℃ | 活動 |
| 11月 | 13.7℃ | 鈍化 |
| 12月 | 8.1℃ | 死亡/冬眠 |
東京都の4月の平均気温んは17.1℃で、4月後半には18℃を超える日が多くなるため、女王蜂が目覚める可能性が高いといえます。5~10月に活動し、11月下旬には鈍化、12月には働き蜂が死亡、女王蜂は冬眠に入ります。
福岡県の平均気温とスズメバチの活動
| 月 | 気温 | スズメバチの活動 |
|---|---|---|
| 1月 | 8.3℃ | 冬眠 |
| 2月 | 9.9℃ | 冬眠 |
| 3月 | 11.5℃ | 冬眠 |
| 4月 | 17.6℃ | 冬眠/目覚め |
| 5月 | 20.2℃ | 活動 |
| 6月 | 23.9℃ | 活動 |
| 7月 | 29.9℃ | 活動 |
| 8月 | 30.5℃ | 活動 |
| 9月 | 28.8℃ | 活動 |
| 10月 | 22.0℃ | 活動 |
| 11月 | 15.7℃ | 活動/鈍化 |
| 12月 | 9.1℃ | 死亡/冬眠 |
福岡県は東京と比べると温かく、11月の平均気温は15.7℃、12月も9.1℃あるため、スズメバチが長く活動する可能性があります。
沖縄県(那覇)の平均気温とスズメバチの活動
| 月 | 気温 | スズメバチの活動 |
|---|---|---|
| 1月 | 17.9℃ | ― (例外的に冬眠) |
| 2月 | 19.8℃ | ― (例外的に冬眠) |
| 3月 | 19.5℃ | ― (例外的に冬眠) |
| 4月 | 23.9℃ | 目覚め |
| 5月 | 24.7℃ | 活動 |
| 6月 | 26.9℃ | 活動 |
| 7月 | 30.5℃ | 活動 |
| 8月 | 30.2℃ | 活動 |
| 9月 | 28.8℃ | 活動 |
| 10月 | 27.6℃ | 活動 |
| 11月 | 23.9℃ | 活動 |
| 12月 | 18.6℃ | 活動 |
沖縄県は平均気温が10℃以下になる月がないため、気温で見れば冬眠しないと考えられます。ただし、沖縄県に生息するスズメバチの種類数自体が少ないため、他の蜂の活動時期とは異なります。
沖縄県の気候に適応しているのは主にツマグロスズメバチとコガタスズメバチで、一部のキイロスズメバチが確認されている程度です。日本では沖縄県のみに生息するツマグロスズメバチは4月に目覚め、12月まで活動してから新女王蜂が冬眠します。
スズメバチの種類による活動時期の違い

スズメバチの種類によっても、活動時期には違いがあります。具体例は次のとおりです。
| スズメバチの種類 | 活動時期 |
|---|---|
| キイロスズメバチ | 4~11月 |
| オオスズメバチ | 5~11月 |
| モンスズメバチ | 5~10月 |
| チャイロスズメバチ | 5~10月 |
キイロスズメバチは活動期間が長い
キイロスズメバチは都市に適応しています。屋根裏や床下などの気温と湿度を一定に保ちやすい場所で営巣できた群れは、長く活動する傾向があります。また、肉や魚、ジュースの飲み残しなどのエサが豊富なので、駆除せずに放置すると営巣規模が大きくなることもあります。

オオスズメバチは地中が温かくなってから活発に
オオスズメバチは自然環境の土の中に巣を作ることが多いため、地中の温度が上がってから活発になります。活動開始時期は、広い地域で5月以降です。ただし、温度上昇が早い年や温暖な地域では、4月から活動することもあるため油断はできません。
秋冬は逆で、長く活動する可能性があります。地中の温度は気温よりも遅く下がるため、外気温が10℃以下でも地中の温度が下がり切っていなければ、巣内では活動可能です。巣を踏み抜かないよう注意が必要です。

モンスズメバチは活動期間が短め
モンスズメバチは自然の環境を好むため、気温変化の影響を受けやすい種類です。営巣は10月中頃には終了し、11月には女王蜂が冬眠に入っています。

チャイロスズメバチはスタートが遅い
チャイロスズメバチはキイロスズメバチやモンスズメバチの巣を乗っ取る、社会寄生性をもった蜂です。5月には目覚めますが、寄生する相手の巣ができ、1回目の産卵が完了する6月頃に本格的な活動を開始します。まだ働き蜂の成虫がいない状態のキイロスズメバチやモンスズメバチの女王蜂を殺し、自分が女王蜂の座におさまる仕組みです。
乗っ取りが完了したチャイロスズメバチの女王蜂は産卵に専念し、狩り・防衛・子育ては寄生相手の働き蜂に任せます。その後秋になると巣を離れ、自らの巣を作って次世代を産みます。

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スズメバチが活動しないのは冬~初春まで
スズメバチが活動を停止するのは、冬眠中の11月下旬~3月中旬頃という短い期間です。この時期は巣が空になっているので、高所・狭所ではない場所の巣であれば、自分でも撤去できるでしょう。
しかし、上記以外の期間は危険です。地域や種類にもよりますが、多くのスズメバチは4~11月の長期間活動できます。7月~10月は攻撃可能な働き蜂が多く、巣に近づくだけでも差荒れる恐れがあります。駆除等のために接近する際には、防護服が必須です。
ただし、防護服を着ていればリスクがゼロになるというわけではありません。大群に襲われれば、焦りによって転倒やケガの恐れがあるほか、防護服の状態によっては毒針が皮膚に到達することもあります。7月下旬以降~10月の巣の駆除はプロに任せるのがおすすめです。


