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チャイロスズメバチの生態と寄生性を詳しく解説

チャイロスズメバチは、攻撃性が高く毒性も強い蜂です。人にとっても危険な存在ですが、他のスズメバチのコロニーを破壊する脅威的な存在であるという点で、他のスズメバチとは一線を画しています。

本記事では、チャイロスズメバチの侵略的な生態を中心に、特徴を詳しく解説します。

チャイロスズメバチの基本情報

体長 1.7~2.7cm(女王蜂は3cm)
見た目の特徴 ・頭部と胸が赤褐色

・その他の胴体は黒

性格 攻撃的
毒性 強い
幼虫の捕食対象 クモ、バッタなど

※成虫が狩ったもの

成虫の捕食対象 果実の汁、樹液、昆虫
分布 北海道、本州、佐渡島(九州にも拡大の可能性あり)
巣の場所
  • 木のうろ
  • 屋根裏
  • 壁の中
  • キイロスズメバチやモンスズメバチの巣を乗っ取る

チャイロスズメバチは危険性の高いスズメバチです。攻撃力の高さから、殺人蜂ともよばれています。

目立った特徴として、キイロスズメバチやモンスズメバチの巣に寄生する点があげられます。また、外敵に対して毒噴射するという攻撃手段も持っています。

社会寄生という異端の生存戦略

チャイロスズメバチは社会性を持つ他の蜂の巣を乗っ取り、自分の代わりに子育てさせるカッコウのような社会寄生性を持っています。乗っ取りのプロセスと乗っ取りが成功する仕組みを解説します。

乗っ取りのプロセス

チャイロスズメバチの女王蜂は、1回目の産卵シーズンを迎える頃にキイロスズメバチやモンスズメバチの巣を乗っ取ります。まだ相手の働き蜂が羽化していない頃を狙い、無防備な女王蜂を殺して入れ替わる仕組みです。

その後、自分の卵を産みます。キイロスズメバチやモンスズメバチの働き蜂が先に羽化するので、女王蜂のフリをしたまま自らの卵や幼虫の世話をさせます。世話をさせる必要があるので、社会性のある蜂の巣を狙うというわけです。

フェロモン偽装の可能性

侵入後すぐに、女王蜂はターゲットとなるスズメバチのフェロモンに似た化学物質を分泌するといわれています。匂いが似ているため、働き蜂は自らの女王がすり替わったことに気づかず、侵入者の子孫を育て続けるのです。

卵の存在が気づかれていない可能性

2008年の論文では、匂いの効果ではない可能性も示唆されています。匂いの成分を分析したところ、化学擬態がおこなわれていなかったようです。

むしろ、チャイロスズメバチの卵は存在を目立たせる成分(炭化水素)の量が極端に少ないことがわかりました(化学的透明性)。

この結果から、キイロスズメバチやモンスズメバチは、卵の存在に気づいていない可能性が出てきました。異物として認識できないため、気づかずに育ててしまうようです。

参考:Stephen J. Martin、Jun-ichi Takahashi、Masato Ono、Falko P. Drijfhout「Is the social parasite Vespa dybowskii using chemical transparency to get her eggs accepted?」Journal of Insect Physiology Volume 54, Issue 4, April 2008,

働き蜂も次第に入れ替わる

キイロスズメバチやモンスズメバチの女王蜂はいないため、新たな卵が孵化することはありません。最初に羽化した働き蜂から増えないということです。

一方、チャイロスズメバチの卵は継続的に孵化するので、数が増えます。こうして、働き蜂も徐々にチャイロスズメバチに入れ替わっていきます。

秋に離巣して自分の巣を作る

秋になると、チャイロスズメバチの女王蜂と働き蜂は自らの巣を作るために離巣します。この頃にはチャイロスズメバチの働き蜂が多くなっているため、キイロスズメバチやモンスズメバチに頼る必要がなくなるからでしょう。

多彩で強烈な攻撃と強い防御力

チャイロスズメバチの攻撃手段は多彩で、威力も強烈です。その攻撃力に加えて、強い防御力も持っています。詳しく解説します。

太く長い毒針

チャイロスズメバチの毒針は太く、刺された瞬間に強烈な痛みが生じます。痛みの程度は日本国内最強の蜂、オオスズメバチを上回るといわれるほどです。クマなどの皮の厚い動物にもダメージを与える可能性があります。

集団攻撃

ピークを迎える9月頃には100~300匹が巣を起点に活動しています。巣に近づく外敵に大して総攻撃を仕掛ける可能性があり、極めて危険です。新女王蜂が生まれるタイミングでもあるので、防衛本能から攻撃性が増しています。

毒噴射で目潰し

保有している毒量はオオススメバチやキイロスズメバチと比べると少ないものの、毒噴射という攻撃手段を持っています。空中から外敵に毒液をふきかける技です。

目に入れば失明する可能性もあるため、毒針が刺さらないような強敵が相手でも撃退する威力を持っています。

強い外皮

キイロスズメバチやモンスズメバチの乗っ取りが成功するのも、硬く強い外皮があるからです。女王蜂同士の攻防で優位に立てるほどの強さがあるといわれています。ただし、オオスズメバチに勝てるほどではありません。

チャイロスズメバチは脅威だが絶滅危惧種

チャイロスズメバチは元々は外来種でしたが、日本の幅広い地域に分布を広げました。しかし、現在は群馬県や北海道、福井県などで絶滅危惧種または準絶滅危惧種に分類されています。

攻撃力や乗っ取りなどの強い習性を持っているにも関わらず個体が減る理由として、環境の変化があげられます。寄生性を持っている動物は環境変化に弱い傾向があるからです。

一方で、九州では目撃情報が増えるなど、分布は拡大している可能性があります。

チャイロスズメバチは人間にも同類にも脅威

チャイロスズメバチは攻撃力の高さから人間にとって危険な存在ですが、キイロスズメバチやモンスズメバチにとっても脅威であることがわかりました。また、毒噴射という攻撃方法も持っているため、天敵である動物たちにとっても油断ならない相手といえます。

その一方で、環境の変化には弱い可能性があり、一部地域では数が減っています。人の生活圏での遭遇率は低いので、不必要に近寄らないようにしましょう。

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