自然界では、日々さまざまな生き物たちが、生き残りをかけた戦いを繰り広げています。中でも、ミツバチとスズメバチの攻防は非常に激しく、まさに命を懸けた真剣勝負です。
スズメバチは、ミツバチの巣を襲って幼虫や蜂蜜を奪おうとしますが、ミツバチも黙ってはいません。驚くような防衛策を駆使し、仲間と連携して立ち向かうのです。
本記事では、スズメバチがミツバチを襲う理由やその手順、そしてミツバチの防衛戦略をわかりやすく解説します。
スズメバチがミツバチを襲う理由とは?
スズメバチがミツバチを襲うのは、自分たちの巣の維持と幼虫の成長のために栄養を確保するためです。詳しく解説します。
ミツバチを幼虫のエサにするため
スズメバチの幼虫は、動物性タンパク質を必要とするため、成虫は積極的に狩りを行います。小型の昆虫も餌の対象であり、ミツバチも捕食対象となります。
捕獲されたミツバチの成虫や幼虫は、スズメバチの巣の中で肉団子に加工され、幼虫の栄養源として利用されるのです。
ミツバチの蜂蜜を奪うため
スズメバチの幼虫は成虫が作った肉団子を食べて育ちますが、成虫は花の蜜も食べます。奪ったハチミツは持って帰らず、その場で食べてしまうようです。
スズメバチがミツバチを襲う手順
スズメバチは組織的な手順を踏んでミツバチの巣を襲撃します。
スズメバチの偵察兵が巣を探索
最初に、偵察兵が単独でミツバチの巣を探します。偵察は、ミツバチの巣への侵入口を確認することと、仲間を呼ぶための準備をすることが目的です。ミツバチの集団に近づいたり、巣の中に入り込むことはありません。
フェロモンで仲間を呼ぶ
偵察を終えたスズメバチはフェロモンを放出し、仲間を呼び寄せます。フェロモンが攻撃の合図となり、集団で襲撃する準備が整います。
ミツバチの巣へ集団で侵入
集まったスズメバチは一斉に巣へ向かい、偵察隊の情報に基づいて巣の入口(巣門)や隙間から侵入します。スズメバチは顎の力が強く、巣門や隙間が狭いときは、かじって広げることもあります。
侵入後は強力なアゴでミツバチを噛み殺しながら進撃し、成虫や幼虫を肉団子に変えていきます。蜂蜜を略奪するケースもあるようです。
ミツバチの驚異の防衛策
ミツバチも、スズメバチに一方的に攻撃されるだけではありません。さまざまな方法で対抗します。
ニホンミツバチの「熱殺蜂球」
ニホンミツバチはスズメバチの攻撃に対抗するため、独自の防衛策「熱殺蜂球」を用います。これは、ミツバチが集団でスズメバチを包み込み、高温を発生させて撃退する方法です。
熱殺蜂球の仕組み
ミツバチはスズメバチを取り囲み、密集状態(蜂球)を作ります。そして、羽と胸の筋肉を震わせることで熱を発生させます。蜂球の中心部の温度は47~48℃に及ぶ高温です。この熱によって、スズメバチを蒸し殺します。
スズメバチを倒すための温度の秘密
ミツバチは50℃近くまで耐えることができますが、スズメバチは44~46℃が致死温度です。この微妙な温度差を利用して、スズメバチを撃退します。
ただし、ミツバチも完全にノーダメージというわけではありません。高温にさらされたミツバチの寿命は縮みます。また、蜂球の中心部でスズメバチに接触しているミツバチは、噛み殺されることもあります。まさに命がけです。
セイヨウミツバチの「窒息スクラム」
セイヨウミツバチもスズメバチに襲われたときは蜂球を形成しますが、中心部の温度はスズメバチの致死温度に達しません。
そのため、かつてはセイヨウミツバチがスズメバチに対して脆弱であるといわれていましたが、窒息スクラムという技を持っていることが明らかになってきました。
複数のセイヨウミツバチがスズメバチを取り囲み(スクラム)、腹部を圧迫して窒息死させる仕組みです。窒息させるのにかかる時間は1時間近くかかるため、ニホンミツバチほどの防衛力ではありませんが、命がけで戦います。
ミツバチのその他の防衛手段
ミツバチがスズメバチに襲われないように、また襲われた際にとる対抗策は他にもあります。
巣の入り口を狭くする
ミツバチはスズメバチの侵入を防ぐため、巣の入り口を狭くすることがあります。これにより、スズメバチが簡単に侵入できなくなります。
警戒フェロモンを放出する
ミツバチはスズメバチの接近を察知すると、警戒フェロモンを放出し、仲間に危険を知らせます。このフェロモンによって、巣の中のミツバチが一斉に防御態勢を取ることで、スズメバチに対抗します。
ただし、この警戒フェロモンは毒針を刺したときに出るものです。ミツバチは毒針を刺すと、針と一緒に内臓も抜けてしまうため死にます。警戒フェロモンはミツバチ一匹が犠牲となって仲間に知らせる警報です。
集団でスズメバチを押し返す
巣門や隙間から侵入しようとしたスズメバチにミツバチが群がり、集団で押し返すことがあります。
なお、スズメバチに対しては効果を期待できませんが、「ウイング・スラッピング」という防衛手段も持っています。アリなどの小さな虫を、羽ばたきによる風圧で遠ざける方法です。
ミツバチとスズメバチは巧妙な戦略合戦を繰り広げている
スズメバチとミツバチは蜂の仲間でありながら、捕食・被食の関係にあることがわかりました。スズメバチは偵察によって侵入・捕獲の成功率を高め、ミツバチは団結と自己犠牲によって巣を守ります。
とくに、ニホンミツバチの「熱殺蜂球」やセイヨウミツバチの「窒息スクラム」といった独自の技は、進化の過程で生まれた巧妙な生存戦略の一例といえるでしょう。