春から秋にかけて庭木や果樹に発生するチュウレンジハバチは、バラの葉を食害する害虫として知られています。本記事では、チュウレンジハバチの特徴と被害のサイン、駆除・予防の方法を詳しく解説します。
チュウレンジハバチとは?

和名 | チュウレンジハバチ |
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学名 | Arge pagana |
分類 | ハチ目ハバチ亜目ミフシハバチ科 |
体長 | 8mm |
見た目の特徴 | 頭から胸が黒い 腹はオレンジ 翅は黒がかった透明 |
幼虫の捕食対象 | バラの葉 |
成虫の捕食対象 | 花の蜜 |
時期 | 4~10月 |
分布 | 北海道、本州、四国、九州、対馬、佐渡島、沖永良部島 |
生息地 | バラ科の植物がある場所 |
チュウレンジハバチはハバチ亜目に属する蜂の一種です。成虫は頭から胸までが黒く、腹部は鮮やかなオレンジ色をしています。毒針を持っておらず、人に対する攻撃性はありません。
幼虫は芋虫に似ており、緑色の体に黒い斑点が並んでいます。この幼虫がバラ科の葉を食い荒らすため注意が必要です。樹全体の葉を食べつくす例はないとされているものの、光合成による栄養の生産効率が落ちる恐れがあります。また、葉がボロボロになるため、園芸としての見栄えもよくありません。
なお、活動期間は4~10月ですが、この期間に次のサイクルを2~4回繰り返します。
- 成虫が産卵
- 卵が孵化
- 幼虫が葉を食べる
- 脱皮(3~4回)
- 地中にもぐって蛹になる
- 成虫になり交尾、産卵
上記のサイクルによって、長期間にわたって幼虫が葉を食べる可能性があります。早期発見と駆除が大切です。

チュウレンジハバチによる被害のサイン

チュウレンジハバチによる、バラ科の植物への被害のサインは次の2つです。
- 枝の切れ目
- 葉の欠け
- 植物が弱っている
画像のように、チュウレンジハバチはバラの茎に切れ込みを入れて産卵します。切れ目があれば、中に卵があるかどうかを確認しましょう。既に産卵され、孵化していた場合は葉が食害されます。葉が不規則な形の穴だらけになっていれば、幼虫が発生している可能性大です。とくに新芽や柔らかい若葉が集中的に狙われる傾向にあります。
また、葉が食害されると光合成による栄養の生産が減るため、植物が弱ることがあります。茎や葉がぐったりしている、花が咲かないといった症状がある場合は、チュウレンジハバチの存在を疑ってみましょう。
ただし、蛹の期間は地中にもぐっているため、枝の切れ込みや葉の欠けなどをみつけても、チュウレンジハバチ自体は発見できない可能性があります。この場合は、再度産卵されないように対策をしましょう。駆除・予防方法は以下で解説します。
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チュウレンジハバチを駆除する4つの方法

成虫は産卵するとすぐに飛び去るため、駆除するのは困難です。植物に寄り付かないように予防策を講じるしかありません。予防策は後述するので、ここでは卵・幼虫に限定した4つの駆除方法を解説します。
1.卵を掻き出す・針で潰す
バラの茎の切れ込み(産卵跡)をみつけたら、中の卵を掻き出して駆除しましょう。楊枝や歯ブラシを使うと掻き出せます。それでも掻き出しきれないときは、針で卵を潰しましょう。
2.幼虫をつまみ取る
既に孵化していた場合でも、早期に対処すれば被害の拡大を防げます。幼虫の数が少ないときは、ピンセットや割りばしでつまみ取る方法が効果的です。確実に個体数を減らせるため、安心感もあるでしょう。
ただし、幼虫は葉の裏や枝の陰で身を潜めていることが多く、一回の作業では取り切れない可能性があります。定期的にチェックし、発見次第つまみ取りましょう。
3.水圧高めの水流で洗い流す
葉の裏などのわかりにくいところにいる幼虫には、ホースの水で洗い流す(吹き飛ばす)方法を試してみましょう。水やり程度の水圧では抵抗して落ちないため、高めの水圧にするのがポイントです。ただし、茎や葉が折れないように水圧調整には気を使いましょう。
落ちた幼虫はそのまま放置せず、踏み潰すかトングなどで捕殺して処理します。土に落としたままにすると、茎や葉に戻ってしまうからです。
4.農薬の使用
大量発生してしまった場合は、農薬の使用が効果的です。次のような薬剤が効果を発揮します。
- 住友化学園芸 オルトラン粒剤
- 住友化学園芸 ベニカXファインスプレー
- 住友化学園芸 ベニカR乳剤
- KINCHO園芸 GFオルトランC
- KINCHO園芸 ベニカXスプレー
オルトラン粒剤は土に混ぜるタイプの薬剤です。植物が薬液を吸収して葉まで行きわたらせるため、葉を食べた幼虫は薬剤の効果によって死滅します。
オルトラン粒剤以外は液体の薬剤です。葉裏までしっかりと届くように、スプレー容器で散布しましょう。風がなく涼しい時間帯(朝や夕方)に散布すると、薬剤の効果を最大限に発揮できます。
チュウレンジハバチの予防策

最後に、チュウレンジハバチの予防策を3つ紹介します。
1.発生前(3~4月)に忌避剤を散布
3月末~4月初旬に忌避剤を散布することで、チュウレンジハバチが産卵のために寄り付くことを防げます。チュウレンジハバチに効く忌避剤には次のようなものがあります。
- サンヨール乳剤
- 木酢液
チュウレンジハバチが嫌う臭いや成分が含まれているため、狙われにくくなります。ただし、これらの薬剤は強力な原液であり、基本的には希釈しなければ使えません。ボトルに記載の希釈倍数を確認しましょう。
なお、希釈倍数は原液の量に対して、最終的な希釈液の量が何倍になるかを示しています。希釈倍率500倍で希釈液500mlを作る場合は、原液1mlに499mlの水を加える計算です。
2.定期的な見回りと早期発見
幼虫が発生してしまった場合でも、被害が拡大する前に早期発見できれば、大きな被害を防ぐことができます。
とくに春~夏は少なくとも週に1回は植物全体をチェックしましょう。葉裏や新芽周辺が狙われやすい部分です。産卵されていても、卵の段階や少数の幼虫であれば、薬剤を使用せずに駆除できる可能性が高まります。
3.天敵の保護と活用
チュウレンジハバチの幼虫は、クモやカマキリなどの天敵によって捕食されることがあります。クモやカマキリは植物の食害をもたらすことなく害虫を狩る益虫です。追い払わずに活躍してもらいましょう。クモやカマキリにとって好条件のエサ場と認定されれば、チュウレンジバチの駆除効果が長く続きます。
まとめ
チュウレンジハバチは、バラ科の植物に深刻な被害をもたらす害虫です。孵化すると葉の食害が広がるため、産卵の段階や幼虫の数が増える前に駆除しましょう。
駆除方法には、割り箸・ピンセット・高圧水流を使った物理的な方法と、薬剤を使用する方法があります。クモやカマキリが住んでいる場合は、追い払わずに駆除を任せてみるのもおすすめです。
ただし、バラ園などで被害が広範囲に及ぶ場合や幼虫の数が多すぎる場合は、自力で駆除しきるのが困難な可能性もあります。プロの機材で薬剤を噴霧してもらうのが効果的なので、蜂駆除業者に相談してみましょう。
