コシブトハナバチは丸く小さなボディとふわふわの毛で、かわいいと人気の蜂のひとつです。人にとってはほぼ無害なので、観察対象として親しまれています。
本記事では、日本に生息するコシブトハナバチの特徴を詳しく解説します。中には絶滅危惧種に指定されている希少種もいるので、個体を守るためにも、分布や生態を知っておきましょう。
日本に生息するコシブトハナバチ5種類の一覧

日本に生息しているコシブトハナバチは、次の5種類です。
| 種類 | 見られる時期 | 分布 |
|---|---|---|
| アオスジコシブトハナバチ | 4~11月 | 南西諸島 |
| スジボソフトハナバチ | 5~10月 | 本州、四国、九州、対馬、南西諸島 |
| ミナミスジボソフトハナバチ | 不明 | 沖縄島、石垣島、西表島 |
| ケブカコシブトハナバチ | 4~6月 | 本州、四国、九州、対馬 |
| シロスジコシブトハナバチ | 8~9月 | 本州、四国、九州 |
コシブトハナバチはハチ目ミツバチ科コシブトハナバチ亜科(Anthophorini)に分類される蜂です。腰のくびれが目立たず太いことが主な特徴ですが、サイズ自体は小さく11~15mmほどしかありません。
エサは花蜜と花粉で、幼虫のときは成虫が花蜜と花粉を混ぜて作った花粉団子を食べます。花粉を集めるために、ふわふわの毛が生えているのもコシブトハナバチ共通の特徴です。巣は地中にあり、液体状の花粉蜜を蓄えて産卵します。
以下で、日本に生息する5種類のコシブトハナバチの特徴を詳しく解説します。
アオスジコシブトハナバチ

| 和名 | アオスジコシブトハナバチ |
|---|---|
| 学名 | Amegilla dulcifera |
| 体長 | 14mm |
| 見た目の特徴 | ボディカラーは黒がベース 腹部に青い縞模様 胸部や脚には褐色の毛 |
| 性格 | おだやか |
| 分布 | 奄美大島、喜界島、石垣島など南西諸島 |
| 見られる時期 | 4~11月 |
見た目
アオスジコシブトハナバチは腹部の青い縞模様が目立つ、体長14mmほどの蜂です。ボディのベースカラーは黒ですが、胸や脚には黄色~褐色の毛が生えているため、角度や光の加減によっては黒さは控えめに見えます。
その他の特徴
昼間は単独行動ですが、夜は集団で休みます。休むときは大顎を使って枝やツタにぶら下がるのが特徴です。活動時期は4~11月で、夏場に多く見られます。生息地は奄美大島、喜界島、石垣島など南西諸島に限定されます。
スジボソフトハナバチ
| 和名 | スジボソフトハナバチ |
|---|---|
| 学名 | Amegilla florea |
| 体長 | 12~16mm (メス:13~16mm、オス12~13mm) |
| 見た目の特徴 | ボディカラーは黒がベース 腹部に白く細い縞模様 胸部や脚にはオレンジ色の毛 |
| 性格 | おだやか |
| 分布 | 本州、四国、九州、対馬、南西諸島 |
| 見られる時期 | 5~10月 |
見た目
スジボソフトハナバチは腹部の白く細い縞模様と胸部のオレンジの毛が特徴的な蜂です。サイズはオスとメスで異なり、メスの方が大きい傾向があります。全体的な色としては、べースの黒と胸のオレンジが目立ちます。
その他の特徴
ツリフネソウやホウセンカなどに訪花し、長い舌を使って花蜜を吸います。分布は全国的ですが、自然環境を好むため民家の近くではあまり見られません。
ミナミスジボソフトハナバチ
| 和名 | ミナミスジボソフトハナバチ |
|---|---|
| 学名 | Amegilla urens |
| 体長 | 12~16mm (メス:13~16mm、オス12~13mm) |
| 見た目の特徴 | 胸部に鮮やかなオレンジの毛 ボディカラーは黒がベース 長めの触角(オスは特に長い) 縞模様の色が濃いめ |
| 性格 | おだやか |
| 分布 | 沖縄島、石垣島、西表島 |
| 見られる時期 | 不明 |
見た目
先述のスジボソハナバチと似た、オレンジの毛が目立つ蜂です。体長もオスメスともにスジボソハナバチと同様で見極めは難しいものの、触覚がやや長く腹部の縞模様は白よりも濃いめの色という違いがあります。しかし、遠目では識別は難しいといえるでしょう。生息地が沖縄島、石垣島、西表島に限定されるため、場所で判断するのもひとつの方法です。
その他の特徴
ミナミスジボソフトハナバチも夜間は枝やツタにぶら下がって休む行動がみられますが、そのぶら下がる順番について、筑波大学と近畿大学の研究グループが新たな発見をしました。最初にポジションを選んだ個体ほど、捕食者から回避できる地面に近い場所を選ぶとのことです。
ケブカコシブトハナバチ

| 和名 | ケブカコシブトハナバチ |
|---|---|
| 学名 | Anthophora villosula |
| 体長 | 13~15mm (メス:15mm、オス13~14mm) |
| 見た目の特徴 | ボディカラーは黒がベース 黒い複眼 全身に白~薄茶色の毛が密集 |
| 性格 | おだやか |
| 分布 | 本州、四国、九州、対馬 |
| 見られる時期 | 4~6月 |
見た目
ボディカラーは黒がベースですが、全身に白~薄茶色の毛が密集しています。「ケブカ(毛深)」の名前の由来です。小さい体ながら飛翔力が強く、羽音が大きいといわれています。
その他の特徴
平地~山地まで、全国的に分布していますが、営巣に好むのは粘土質の地中や土塀です。人の生活圏でも見られます。働き蜂がいるようなコロニーは形成しませんが、複数匹が同じ場所に営巣することは少なくありません。切り立った土の斜面に、いくつもの巣穴が作られる様子が観察されています。活動期間は4~6月と短めです。
シロスジコシブトハナバチ

| 和名 | シロスジコシブトハナバチ |
|---|---|
| 学名 | Amegilla quadrifasciata |
| 体長 | 14~15mm |
| 見た目の特徴 | 胸部と脚に黄褐色~灰白色の毛 腹部は黒と白の縞模様 ボディカラーは黒がベース |
| 性格 | おだやか |
| 分布 | 本州、四国、九州 |
| 見られる時期 | 8~9月 |
見た目
胸や脚の毛の色は個体によって異なり、黄褐色~灰白色のバリエーションがあります。中には、極めて白に近い毛の個体もいるようです。腹部は黒い帯と白く細い線の縞模様です。
その他の特徴
分布は全国的ですが、生息地は自然環境が残された海岸に限定されます。そのうえ、ウスルリモンハナバチに労働寄生(※)されることもあるようです。ただし、やられるばかりではなく、自身のテリトリーに侵入する虫を追い出す行動もとるといわれています。
なお、京都府レッドデータブック2015では、シロスジコシブトハナバチは絶滅危惧種に指定されています。
(※)労働寄生:他の生き物にエサを与えてもらうなど、宿主の労働を搾取する寄生方法。
コシブトハナバチ属を観察してみよう
コシブトハナバチは丸く小さいうえに、ふわふわとした毛が生えているかわいい蜂です。人にはほぼ無害といえるレベルで攻撃性がないため、安全に観察できます。本記事を参考に、ぜひ毛の色や縞の模様、触覚などに注目しながら観察してみてください。
ただし、全国的に分布しているコシブトハナバチも、基本的には自然環境を好みます。地域によっては絶滅危惧種もいるため、環境を変えることなく、静かに観察しましょう。
また、自然環境にはコシブトハナバチ以外の危険な蜂が生息している可能性も大いにあります。安全を確保できない場所には近づかない、スズメバチやアシナガバチが活発な7~10月を避けるなど、安全対策を講じることも大切です。
コシブトハナバチに関するよくある質問
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