蜂の目は人間の目とは数も見えているものも大きく異なります。蜂が見る世界は、人間が見ている世界とは別物のようです。逆に人間には見えて蜂には見えないものもあるので、この違いを活用すると蜂を駆除するときの安全性が高まります。
本記事では、蜂の目の構造と見えている色、動体視力などの詳細を解説します。後半では、蜂の視力と追跡距離の関係、黒が狙われるという説の詳細、駆除に赤いライトが有用といわれる理由も解説します。ぜひ参考にしてください。
蜂の目とは?
蜂の目は、人間とはまったく異なる世界を映し出しています。彼らは「複眼」と呼ばれる特殊な目を通して、広い視野と優れた動体視力を持ち、紫外線まで見通すことができるのです。
複眼と単眼の違い
蜂の目には「複眼」と「単眼」の2種類があり、それぞれ役割が異なります。
項目 | 単眼 | 複眼 |
数 | 3 | 2 (個眼の数は3,000~9,000) |
感知しているもの | 光 | 周囲の様子、色、形 |
単眼は光を感知しています。太陽の位置を認識することで、進行方向を制御するために使われています。また、朝日がのぼると活動を開始し、日が沈むと巣に帰るなど、行動を判断しているともいわれています。
複眼は小さなレンズ(個眼)で構成された目です。個目の数は女王蜂が3,000~4,000個、働き蜂が4.000~5,000個、オス蜂が7,000~9,000とされています。視野が広く、物の形や色、動くものを感じ取るための目です。
ただし、個眼でキャッチした情報を統合して処理する網膜はないため、物体を認識しても人間が見るほどには立体的に認識していないとされています。
蜂は色をどう見ている?
蜂の色覚は、人間とは大きく異なります。蜂が見える色(光)の波長は300nm~650nmで、人間の可視光線は360~830nmです。紫を超える波長、人間には見えない380mm以下の色(紫外線)も蜂は捉えられます。逆に、700nm程度の赤色は認識できません。
紫外線を認知する能力によって、人間には見えない見えない花の色「蜜標(ネクターガイド)」を捉えるといわれています。どこに蜜があるかを正確に判断でき、効率的な訪花行動が可能になるということです。
動体視力は人間以上
単眼は光を感知し、物体が横切ったという情報を素早く脳に伝えています。その情報サポートを受けて、複眼が動く物体をとらえる仕組みです。
複眼は1万個以上の個眼で構成されており、それぞれが少しずつ異なる方向を向いています。この構造によって広い視野を確保しているため、近づく外敵や捕食対象の存在を逃しません。
また、人間は動くものを1秒間で30~40回捉えますが、蜂は約10倍の300回も捉えるとされています。相手の動きがスローモーションのように見えるということです。
蜂の追跡能力は嗅覚も関係している
スズメバチの中には、外敵とみなした物体を30m程度追跡できる種類がいます。この追跡行動が可能な理由は、眼だけでなく嗅覚も関係しているといわれています。
視力だけでいえば、蜂の目は人間に置き換えると0.01程度の近眼で、遠くを見通すことはできません。しかし、光の感知能力が高く動体視力は優れています。
そして嗅覚は、数十メートル先の物体まで感知できるといわれています。外敵を目でとらえ、臭いを覚えて追跡していると考えられます。
蜂は黒い物を狙う?
蜂は黒いものを狙うといわれています。その理由は諸説あり、天敵である動物の急所である目が黒いから、クマの色が黒いからなどさまざまです。
今回の蜂の目の特徴からわかるのは、人間が思う「黒」とは違う可能性があることです。蜂は紫外線を捉えられますが、赤は見えづらく700nm以上の波長の赤はグレーまたは黒に見える可能性があります。つまり、赤色の服も危険な可能性があるということです。
なお、夜間は黒が安全な色に変わります。暗闇と同化すれば、蜂も視認しづらくなるからです。
蜂駆除の際に赤いライトを使うべき理由
蜂の駆除は蜂の活動が低下する夜間におこなう方が安全ですが、人間も夜間は視界が悪くなるため、光源が必要です。そのときのライトの色として、赤が推奨されています。
蜂は赤の光を認識できないため、赤のライトを当ててもグレーまたは黒に感じられ、光とはとらえません。人間が紫外線を光として感知できないのと同じです。
赤のライトを人間は視認できるため、安全に駆除できる可能性が高まります。
蜂と人間では見えている世界が違う
蜂は人には見えない紫外線をとらえ、動体視力も人より高いことがわかりました。蜂の目から見れば、花の色がまったく異なって見えるというのは面白いポイントです。
また、黒いものを攻撃すると言われていますが、人間が見ている黒と認識しているものとは異なる可能性があります。
そして、蜂は赤色を認識しづらいこともわかりました。これは夜間の蜂駆除に役立つ情報です。赤色のライトを活用すれば、人間の視界を確保できることを示しています。
ただし、赤いライトなら絶対に安全というわけではありません。蜂は嗅覚も優れているので、巣に近づくだけでも危険な場合があります。蜂の巣が大きい、高所にあるなど危険性が高いときはプロに相談してください。