ツマアカスズメバチは2015年に特定外来生物に指定されました。人や農業だけでなく生態系も脅かす存在です。本記事では、ツマアカスズメバチが特定外来生物に指定される理由として、その恐るべき習性・特徴を詳しく解説します。後半では学名や体長などの基本情報、見た目や巣の特徴なども解説するのでぜひご覧ください。
ツマアカスズメバチは特定外来生物

ツマアカスズメバチは日本の在来種ではありません。原産地は中国、台湾、インド北部、パキスタン、東南アジア、南アジアです。日本では2012年に初めて対馬(長崎県)で確認されており、2013年には50を超える巣の定着が確認されました。2015年には特定外来生物に指定されています。
しかし、分布は拡大を続けており、宮崎県・福岡県・大分県・山口県でも確認されています。対馬以外はまだ定着の段階ではありませんが、環境省は定着阻止の重要性を示しています。
なお、ツマアカスズメバチを駆除した地方自治体や駆除業者は、巣の駆除をおこなった際に管轄区域の地方環境事務所に連絡する必要があります。
特定外来生物は外来生物法に基づくものです。海外起源の外来種の中で、次のものに対して被害を及ぼす、あるいは被害を及ぼす恐れがある侵略的外来種が指定されます。
- 生態系
- 人の生命と身体
- 農林水産業
指定された生物の飼育・保管・輸入などは規制され、防除が実施されます。
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ツマアカスズメバチの侵略力

ツマアカスズメバチが侵略的外来種とされる理由を解説します。
分布拡大のスピードが早い
ツマアカスズメバチの原産地は先述のとおりですが、分布の拡散速度が速く、韓国やヨーロッパにも広まっています。その拡散速度は韓国で年間10~20km、ヨーロッパでは年間100kmのペースです。韓国では2003年、フランスでは2005年にツマアカスズメバチの侵入が報告されています。
ヨーロッパの分布拡大は顕著で、2005年のフランスでの報告を始まりとし、2010年にはスペイン、2011年にはポルトガルでも報告されています。いずれも隣接した国であるため、陸路で分布が拡大したものと考えられます。
環境適応力が高い
地域によって気候は大きく異なるにも関わらず、ツマアカスズメバチはアジアからヨーロッパまで広く分布しています。各地域の気候の違いは次のとおりです。
| 国 | 気候帯 | 夏の気候 | 冬の気候 |
|---|---|---|---|
| 中国南部 | 亜熱帯モンスーン気候 | 高温多湿 | 温暖 |
| 台湾北部 | 亜熱帯 | 高温多湿 | 寒冷・乾燥 |
| インド北部 | 温帯夏雨気候 | 高温多湿(40℃超え) | 朝晩の寒暖差が激しい |
| パキスタン | 乾燥帯~亜熱帯 | 高温多湿(乾燥帯では40℃超え) | 朝晩の寒暖差が激しい |
| 韓国 | 温帯性気候 | 高温多湿 | 寒冷・乾燥 |
| フランス | 地中海性気候~大陸性気候 | 高温・乾燥 | 寒冷・乾燥 |
生えている植物や生息している虫にも違いがある中で、条件を問わず生息できることから、環境適応力の高さがうかがえます。
貨物・人の移動で侵入できる
ツマアカスズメバチがフランスに侵入した経路は、中国から輸入した園芸用品だったと考えられています。園芸用品に付随していたツマアカスズメバチがフランスに定着し、隣接する国へ拡大したようです。韓国の場合は、中国から輸入した建築用木材に付随していたと考えられています。
日本で最初にツマアカスズメバチが確認された対馬は、韓国との直行フェリーが運航している場所です。フェリーに乗って侵入した可能性があります。また、気流に乗って飛来した可能性もあります。
いずれにしても、長距離移動の中で生き残り、陸に着けば繁殖できるという生命力と繁殖能力の高さは脅威的です。
生態系・農業にもたらす被害が甚大
ツマアカスズメバチがもたらす被害は、人の刺傷被害だけではありません。ここでは、生態系や養蜂への被害を解説します。刺傷被害の危険性は後半で解説します。
在来種・生態系への被害
ツマアカスズメバチは育児のために他の虫を狩ります。クモやトンボなどの強い虫も捕食する上に、在来のスズメバチに競り勝つことが多いため、在来種を減少させます。
実際に、韓国韓国釜山市ではツマアカスズメバチの侵略によって在来のケブカスズメバチが激減し、ツマアカスズメバチが最優占種に台頭しました。
また、ミツバチなどの植物の受粉を助ける虫も狩るため、植物の繁殖に悪影響をもたらす恐れもあります。食物連鎖の起点である植物に影響が出れば、生態系全体のバランスが崩れるため被害は甚大です。
養蜂への被害
韓国ではツマアカスズメバチの侵略によって、2~3週間の間にミツバチの群が多く消滅しました。その数、300群中の50群に及びます。養蜂にとって多大な被害です。蜂蜜がとれなくなることはもちろん、農作物の受粉にも影響があります。
ミツバチの巣の周辺でホバリングし、帰巣するミツバチを捉える捕食スタイルです。とらえられたミツバチはツマアカスズメバチの顎で噛み砕かれ、肉団子にされて幼虫に与えられます。
オオスズメバチのようにミツバチの巣内に入り込んで襲うことはありませんが、数が圧倒的であるため被害は甚大です。ピーク時にはツマアカスズメバチの巣1つあたりに1,000匹の働き蜂が存在することがあり、狩りに出かける数だけでも数百匹に及ぶ可能性があります。
ツマアカスズメバチの大群に待ち伏せされることを考えれば、ミツバチが大量に捕食されて消滅に至るのも不思議ではありません。
対抗できる天敵が少ない
昆虫界の中では強い部類であるクモやトンボまで捕食するのがツマアカスズメバチです。昆虫界でツマアカスズメバチに対抗できるのは、ニホンミツバチといわれています。
ニホンミツバチには熱殺蜂球という、スズメバチを蒸し殺す技があるからです。この対抗手段があるため、セイヨウミツバチよりも狙われにくいといわれています。実際に中国では、ニホンミツバチの基亜種であるトウヨウミツバチよりも、セイヨウミツバチを好んで狩る様子が報告されました。
日本で定着が確認された対馬ではトウヨウミツバチを養蜂しているため、被害を抑えられる可能性があります。しかし、本土の養蜂はセイヨウミツバチがメインなので、本土にツマアカスズメバチが定着すれば、養蜂業へ甚大な被害をもたらすでしょう。
なお、昆虫以外では、ハチクマ(鳥)が主な天敵です。
ツマアカスズメバチの基本情報と見た目の特徴

| 和名 | ツマアカスズメバチ |
|---|---|
| 学名 | Vespa velutina |
| 見られる時期 | 3月下旬~12月 |
| 体長 | 女王蜂:30mm前後 働き蜂(メス蜂):20mm前後 オス蜂:24mm前後 ※東南アジアでは14~18mm |
| 見た目の特徴 | 全体的に黒っぽい 口の周辺は黄色 腹部は先端(尻)がオレンジ 脚は先端が黄色 |
| 分布 | 対馬 |
| 巣の場所 | 初期段階:低木、土の中ピーク時:樹上 |
| 幼虫のエサ | ミツバチ、アシナガバチ、毛虫、蝶、ハエ、トンボ、クモ※成虫が狩って肉団子にしたもの |
| 成虫のエサ | 花蜜、樹液、幼虫が出す分泌液 |
スズメバチ亜科スズメバチ属の蜂
スズメバチ科スズメバチ亜科スズメバチ属で、オオスズメバチやキイロスズメバチと同じグループに分類されています。攻撃性や毒性が強いスズメバチが多いグループです。
見た目の特徴
学名の「velutina」は「ビロード状の」という意味で、細かな起毛のビロード生地(ベルベット)を思わせる質感です。日本名の「ツマアカ」は、腹部先端(尻)がオレンジ色であることに由来しています。オレンジ色が入っているのは腹部のみです。口の周り(顎)や脚の先は黄色で、全体的には黒っぽい見た目をしています。
体長は20mm前後で、スズメバチの中では中程度です。ただし、東南アジアに生息するツマアカスズメバチは14~18mmで小型な部類といえます。
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ツマアカスズメバチの危険性

ツマアカスズメバチによる被害は先述のとおりですが、刺傷被害だけに着目しても危険な蜂です。
攻撃性・性格
東南アジアに生息するツマアカスズメバチの攻撃性は日本最強のオオスズメバチと同レベルです。ただし、対馬のツマアカスズメバチの攻撃性は控えめとする説もあります。
とはいえ、オオスズメバチと比べれば控えめと言う程度で、他のスズメバチ属とは同程度の攻撃性です。巣に近づく存在に対しては顎を鳴らして威嚇し、それ以上近づけば集団で攻撃します。
毒性
オオスズメバチの毒よりは弱いものの、毒性は強力です。刺されれば強い痛みと腫れが生じます。また、過去に蜂に刺されたことがある人は、ハチアレルギーによるアナフィラキシーショックを引き起こす恐れがあるため要注意です。最悪の場合は死に至ります。
群れの働き蜂の数
ツマアカスズメバチのコロニーの規模はスズメバチの中で最大級で、夏のピーク時には1,000匹を超える働き蜂の群れを形成することが少なくありません。働き蜂は育児・狩り・営巣・防衛などの役割分担をしていますが、1,000匹を超えた段階では、数百匹が集団攻撃のために備えている可能性があります。
追跡距離
追跡距離の長さ、つまり執拗さに関してはトップレベルです。平均的には40mほど追跡するとされており、これだけでも他のスズメバチと比べて各段に長距離です。その上、200mも追跡したという報告があります。
巣周辺の警戒範囲の広さもトップレベルで、モンスズメバチやコガタスズメバチが5m以下であるのに対し、10mを警戒範囲とします。日本の在来種のスズメバチと比べて俊敏であることも含めて、ツマアカスズメバチの巣に近づくのは危険です。
活動時期が長い
11月下旬になると多くのスズメバチは女王蜂以外が死亡します。しかし、冬でも比較的温暖な地域に住むツマアカスズメバチは活動時期が12月までと長いため注意が必要です。冬でも油断できない点でも危険といえます。
また、春の目覚めも早く、他のスズメバチの女王蜂が4月頃に冬眠から目覚めるのに対し、ツマアカスズメバチは3月から目覚めて営巣を開始します。
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ツマアカスズメバチの巣

ツマアカスズメバチの巣は営巣場所・形状ともに独特です。詳しく解説します。
引っ越しをするのが最大の特徴
スズメバチのほとんどは、最初に営巣した場所で巣を拡大していきます。一方、ツマアカスズメバチは低木の茂みや土の中などの閉鎖的な場所で営巣して働き蜂を羽化させ、群れが大きくなると樹上やビルの壁などの高所に引っ越すという習性を持っています。
引っ越しのときは、女王蜂と数匹の働き蜂が最初に移動して高所に営巣開始、産卵をしてコロニーを再度拡大する手順です。元の巣にいる幼虫は残った働き蜂が育てあげ、それが完了すると元の巣は放棄されます。
巣の形状
樹上などの空間が広い場所に営巣するスズメバチの巣の多くは、綺麗な球型です。しかし、ツマアカスズメバチの巣はやや歪(いびつ)で、巣の規模が大きくなると縦長になり、凹凸が目立つようになります。長径が1mに達するほど大きくなることもあります。
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ツマアカスズメバチの防除は国レベルの課題
ツマアカスズメバチは特定外来生物で、迅速な駆除が求められるほか、侵入を防止する対策も必要な蜂です。ツマアカスズメバチらしきものを見かけたら、迅速に蜂駆除業者・地方自治体に連絡する必要があります。
攻撃性が高く群れの数も多いため、自分で駆除を試みるのはやめましょう。また、万が一取り逃がした場合、行政への連絡などが煩雑になるリスクもあります。ツマアカスズメバチかどうかわからない場合でも、まずはプロに相談してください。
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