スズメバチの毒が「毒のカクテル」と呼ばれることを聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。たしかにスズメバチの毒は他の蜂と比べて多様ですが、実はスズメバチ以外の蜂の毒も複合的な成分で構成されています。
本記事では、17種類のハチ毒の成分の作用を詳しく解説します。前半には蜂の種類別の成分一覧、後半には体質や持病別の気を付けるべき毒の種類も掲載しているので、ぜひご覧ください。
このような方におすすめ
- 蜂の種類ごとの毒の成分の違いを知りたい方
- 毒の成分それぞれがどのように影響するか気になる方
- どの成分がアナフィラキシーにつながるのか疑問に思っている方
- 自分の体質や持病が蜂刺されの重症化に関係するのか気になる方

※1 対応地域・対応する加盟店により異なります
※2 対応地域・加盟店・現場状況により、お事前にお客様の同意を得たうえで、調査・見積り費用をいただく場合がございます
※3 作業後1週間以内に同じ場所に再発した場合に限ります
目次
【蜂の種類別】ハチ毒の成分一覧
オオスズメバチ・スズメバチ・アシナガバチ・ミツバチでは毒の成分が異なります。まずは一覧で確認しましょう。
| 成分名 | 作用 | オオスズメバチ | スズメバチ | アシナガバチ | ミツバチ |
| ヒスタミン | 血管拡張(腫れ、熱感、かゆみ) | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
| セロトニン | 強い痛み | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
| カテコールアミン | 神経興奮、動悸等 | 〇 | 〇 | ✖ | ✖ |
| アセチルコリン | 強い痛み | 〇 | 〇 | ✖ | ✖ |
| ポリアミン | 不明(毒の効率を高める可能性) | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
| ハチ毒キニン | 痛覚誘発等 | 〇 | 〇 | 〇 | ✖ |
| マストパラン | 細胞障害性等 | 〇 | 〇 | 〇 | ✖ |
| メリチン | 発痛等 | ✖ | ✖ | ✖ | 〇 |
| MCDペプチド | ヒスタミン放出促進等 | ✖ | ✖ | ✖ | 〇 |
| アパミン | 神経毒(中枢神経興奮作用) | ✖ | ✖ | ✖ | 〇 |
| ホスホリパーゼA1 | 溶血、細胞障害等、アレルゲン | 〇 | 〇 | 〇 | ✖ |
| ホスホリパーゼA2 | 溶血、炎症等、アレルゲン | 〇 | 〇 | ✖ | 〇 |
| ヒアルロニダーゼ | ヒアルロン酸の分解・溶解(毒の拡散) | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
| アンチゲン5 | アレルゲン | 〇 | 〇 | 〇 | ✖ |
| プロテアーゼ | タンパク質の分解 | 〇 | 〇 | 不明 | 不明 |
| 酸性ホスファターゼ | アレルゲン | 不明 | 不明 | ✖ | 〇 |
| マンダラトキシン | 神経毒 | 〇 | ✖ | ✖ | ✖ |
成分の多様性はオオスズメバチを含むスズメバチが圧倒的です。このことから、スズメバチの毒は毒のカクテルと呼ばれています。
各蜂で共通している成分はヒスタミン、セロトニン、ポリアミン、ヒアルロニダーゼです。その他の成分では種類によって差があります。
なお、上記の17種類の成分は4つに大分類(アミン類・ペプチド類・酵素類・塩基性蛋白質)できます。以下で詳しく解説します。
参考
国立健康機器管理機構感染症情報提供サイト「わが国における蜂刺症」
同友会グループ「ハチ毒アレルギー」
アミン類

アミン類はアミノ酸から産生される有機化合物です。ハチ毒には次のようなアミン類が含まれています。
ハチ毒に含まれるアミン類
- ヒスタミン
- セロトニン
- カテコールアミン
- アセチルコリン
- ポリアミン
なお、アミン類自体は神経伝達物質としての重要な役割も果たしており、必ずしも有害な成分とは限りません。
参考
井部明広「食品に含まれるアミン類」
ヒスタミン
| オオスズメバチ | スズメバチ | アシナガバチ | ミツバチ |
| 〇 | 〇 | 〇 |
ヒスタミンの作用
- 血管弛緩因子の放出(血圧低下)
- 血管透過性の亢進(傷口の腫れ、息苦しさ)
- 気管支平滑筋の収縮(息苦しさ)
- 消化管の収縮(腹痛、吐き気)
- 神経細胞にヒスタミンの刺激が伝わると痒みとして感じられる
ヒスタミンはハチ毒に含まれているだけでなく、ハチ毒アレルギーの反応によって人間の体内でも放出される成分です。血管弛緩因子によって血管が広がるため、血圧が低下します。また、血管の拡張によって赤みが生じやすくなります。
上記のように、アレルギーと同じような症状が出ることを仮性アレルゲンと呼びます。
血管透過性の亢進は、血しょうの成分が血管外に漏れだしやすくなる状態のことです。蜂刺され跡に血しょうの水分等がたまることで腫れにつながります。
このほか、気管支や消化管にも影響を及ぼすため、息苦しさ・腹痛・吐き気などをもたらすことがあります。また、ヒスタミンの刺激が神経に伝わると、脳が痒み(かゆみ)として認識します。
参考
日本薬学会「薬学用語解説 ヒスタミン」
株式会社シー・アール・シー「よくある検査のご質問 アレルギー症状があるのに特異IgEは陰性(クラス0)でした。なぜですか?」
セロトニン
| オオスズメバチ | スズメバチ | アシナガバチ | ミツバチ |
| 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
セロトニンの作用
- 発痛
- 神経筋症状(ふるえ、痙攣、筋肉の硬直等)
- 自律神経症状(発熱・発汗・血圧上昇・下痢)
セロトニンは幸せホルモンとして知られ、痛みをやわらげる作用をもつ成分ですが、血管や組織などの末梢においては痛覚を過敏にさせる作用があります。痛みを感じやすくなるということです。
また、過剰なセロトニンによる副作用「セロトニン症候群」にも注意が必要です。ふるえや痙攣などの神経筋症状のほか、発汗・発熱・血圧上昇といった自律神経症状が出ます。さらに重症化すると意識障害や横紋筋融解症、腎不全が起こります。
実際に、蜂の大群に襲われた方が横紋筋融解症を伴う多臓器不全になったケースがありました。なお、セロトニンも仮性アレルゲンを引き起こす物質のひとつです。
参考
小山 なつ「感覚系における抑制系の意義と下行性疼痛制御系を再考する」
潮下 敬ほか「スズメバチ刺症による横紋筋融解症で多臓器不全をきたし血液透析にて救命しえた1例」日本透析医学会雑誌 36 (2), 131-134, 2003 一般社団法人 日本透析医学会
シンセルクリニック「【整形外科医が解説】セロトニンとは?慢性疼痛との深い関係・増やす方法・セロトニン症候群の注意点」
MSDマニュアル家庭版「セロトニン症候群」
株式会社シー・アール・シー「よくある検査のご質問 アレルギー症状があるのに特異IgEは陰性(クラス0)でした。なぜですか?」
カテコールアミン
| オオスズメバチ | スズメバチ | アシナガバチ | ミツバチ |
| 〇 | 〇 | ✖ | ✖ |
カテコールアミンの作用
- 心機能亢進(心収縮力増大等)
- 血管収縮(血圧上昇)
- 血管拡張(血流量の増加)
カテコールアミンはアドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミン等の神経伝達物質の総称です。緊急時の機動力や逃走反応を高めるために必要な物質で、人間の機能としても備わっていますが、過剰になると害になります。
また、医薬品においてはアドレナリンとノルアドレナリンの併用は禁忌(※)です。どちらも心筋や血圧に強く作用するため、不整脈や心停止につながる恐れがあります。これらをあわせ持つハチ毒の危険性がわかるでしょう。
| ※アナフィラキシー、重度のショック、急性低血圧等の治療時を除く |
参考
日本薬学会「薬学用語解説 アドレナリン」
名城大学薬学部「2.交感神経系に作用する薬物」
和歌山県立医科大学付属病院「患者さんへの情報公開」
日本医事新報社「抗精神病薬投与患者のアナフィラキシー・心肺蘇生時にどうノルアドレナリンを使用する? 【ノルアドレナリンの適応は乏しく,緊急時にはアドレナリン投与を考慮する】」週刊日本医事新報|4789号
林晃史「益虫・害虫の話 (17)〈Part 1〉ハチ刺されとハチ毒の話」東化研株式会社
アセチルコリン
| オオスズメバチ | スズメバチ | アシナガバチ | ミツバチ |
| 〇 | 〇 | ✖ | ✖ |
アセチルコリンの作用
- 疼痛物質としての作用
- 骨格筋の収縮
- 心拍数の低下
- 血管拡張作用(血圧の低下)
- 気管支収縮
- 消化管運動亢進
アセチルコリンは運動神経や交感神経、副交感神経ではたらく神経伝達物質です。脳にも深く関与しており人体に欠かせない成分のひとつですが、アセチルコリンが末梢神経を刺激すると痛みを感じる物質(疼痛物質)として作用します。
また、アセチルコリンは心臓の働きを弱める(休ませる)作用や消化管の収縮・運動を促進する作用もあります。これによって、だるさや胃腸の痛みなどが起こることがあります。
なお、アセチルコリンも仮性アレルゲンを引き起こす物質のひとつです。
参考
脳科学辞典「アセチルコリン」
日本医科大学「アセチルコリンによる心臓機能を解明して新たな治療戦略確立へ」
名城大学薬学部「副交感神経興奮薬(コリン作動薬)」
株式会社シー・アール・シー「よくある検査のご質問 アレルギー症状があるのに特異IgEは陰性(クラス0)でした。なぜですか?」
ポリアミン
| オオスズメバチ | スズメバチ | アシナガバチ | ミツバチ |
| 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
ポリアミンの作用
- 不明
ポリアミンは4種類の蜂のいずれも持っている成分ですが、毒としての機能は不明です。
しかし、ヘビ毒やクモ毒にも含まれており、毒を効率的に作用させる可能性が示唆されています。また、ポリアミンの中には神経毒として疾病を誘発するものがあるとされています。
参考
Linlin Wang, Ying Liuほか「Oxidative degradation of polyamines by serum supplement causes cytotoxicity on cultured cells」
佐賀大学「細胞の中で“毒”が生まれる?抗加齢物質ポリアミン代謝調節の重要性を解明!」
Anthony E Pegg「Functions of Polyamines in Mammals」
Gandhi Rádis-Baptista 、Katsuhiro Konno「Spider and Wasp Acylpolyamines: Venom Components and Versatile Pharmacological Leads, Probes, and Insecticidal Agents」
東京化成工業株式会社「ポリアミン」
Haifeng Liuほか「Ame-miR-1-3p of bee venom reduced cell viability through the AZIN1/OAZ1-ODC1-polyamines pathway and enhanced the defense ability of honeybee (Apis mellifera L.)」
ペプチド類(低分子ペプチド)

ペプチド類はアミノ酸が結合したもので、なおかつタンパク質よりも結合が少ないものです。ハチ毒には次のようなペプチド類が含まれています。
ハチ毒に含まれるペプチド類
- ハチ毒キニン
- マストパラン
- メリチン
- MCDペプチド
- アパミン
なお、ペプチド類全体が有害なわけではありません。神経伝達物質としても作用するほか、大豆ペプチドなどに代表されるような栄養になる成分もあります。
ハチ毒キニン
| オオスズメバチ | スズメバチ | アシナガバチ | ミツバチ |
| 〇 | 〇 | 〇 | ✖ |
ハチ毒キニンの作用
- 痛覚誘発物質としての作用
- 平滑筋の収縮
- 血圧の低下
- 皮膚血管透過性の亢進
ハチ毒キニンは痛覚誘発物質のひとつと考えられています。傷や炎症が生じたときに、侵害受容器という神経の末端を刺激し、脳に痛みを感じさせる物質のことです。
また、ハチ毒キニンは消化管や内臓、血管の運動に関わる平滑筋を収縮させるほか、血圧の低下や皮膚の赤み・腫れにつながる血管透過性を高める作用もあります。
マストパラン
| オオスズメバチ | スズメバチ | アシナガバチ | ミツバチ |
| 〇 | 〇 | 〇 | ✖ |
マストパランの作用
- ヒスタミン、セロトニン、カテコールアミンの分泌を引き起こす
- ミトコンドリア透過性遷移の誘導(細胞死、壊死につながる)
マストパランはスズメバチ科(スズメバチ亜科、アシナガバチ亜科)が持つ毒のひとつです。人体の機能に作用し、ヒスタミン、セロトニン、カテコールアミンの分泌を促します。それぞれの成分の作用は上述のとおりです。
また、マストパランには細胞膜にポア(小さな穴、細孔)をつくる作用もあります。穴があくことで細胞質のタンパク質が漏れたり、逆にミトコンドリア内に水分が入り込んだりします。細胞毒性の出現やミトコンドリアの機能停止、細胞死の要因です。
参考
Miguel Moreno、Ernest Giralt「Three Valuable Peptides from Bee and Wasp Venoms for Therapeutic and Biotechnological Use: Melittin, Apamin and Mastoparan」
中畑則道、 須釜淳「マストパランの薬理活性:シグナル伝達への関与」
メリチン
| オオスズメバチ | スズメバチ | アシナガバチ | ミツバチ |
| ✖ | ✖ | ✖ | 〇 |
メリチンの作用
- 細胞の破壊(リン脂質の破壊による細胞溶解)
- ミトコンドリア等の細胞内膜の溶解
メリチンはミツバチの毒の主成分です。細胞膜のリン脂質を破壊し、細胞内膜の溶解などを引き起こします。この作用によってマスト細胞が損傷した場合はヒスタミン、血小板が損傷した場合はセロトニンが放出されます。
参考
小山なつほか「ハチ毒メリチンの発痛作用」(KAKEN)
Miguel Moreno、Ernest Giralt「Three Valuable Peptides from Bee and Wasp Venoms for Therapeutic and Biotechnological Use: Melittin, Apamin and Mastoparan」
MCD(肥満細胞脱顆粒)ペプチド
| オオスズメバチ | スズメバチ | アシナガバチ | ミツバチ |
| ✖ | ✖ | ✖ | 〇 |
MCD(肥満細胞脱顆粒)ペプチドの作用
- マスト細胞にヒスタミンを放出(脱顆粒)させる
MCDペプチドはミツバチが持っているハチ毒の一種です。アレルギー反応にも関係しているマスト細胞(肥満細胞)にはたらきかけ、ヒスタミンを放出させます。この放出は細胞内にある小さな袋(分泌顆粒)を空っぽにするので、脱顆粒と呼ばれます。
ヒスタミンによる影響は先述のとおりです。
参考
アパミン
| オオスズメバチ | スズメバチ | アシナガバチ | ミツバチ |
| ✖ | ✖ | ✖ | 〇 |
アパミンの作用
- 小コンダクタンスカルシウム活性化カリウムチャネルの閉塞
アパミンは神経毒のひとつですが、神経のみに作用するのではなく、肝臓や副腎皮質にも入り込みます。そして、細胞内のカルシウム濃度上昇に反応してカリウムイオンを調整するためのチャネル(門のようなもの)の孔(あな)を閉塞させます。
その結果、神経細胞が元の状態に戻れなくなるため、神経や心筋の興奮を鎮めるブレーキが阻害されたり、神経伝達の調整が乱されたりします。
なお、チャネルのはたらきについては、本稿の塩基性タンパク質マンダラトキシンの項目で詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。
参考
酵素類

酵素類はタンパク質の一種で、毒の広がりの補助や細胞破壊等のはたらきを持ちます。ハチ毒に含まれる主な酵素類は次のとおりです。
ハチ毒に含まれる酵素類
- ホスホリパーゼA1
- ホスホリパーゼA2
- ヒアルロニダーゼ
- アンチゲン5
- プロテアーゼ
- 酸性ホスファターゼ
ホスホリパーゼA1(PLA1)
| オオスズメバチ | スズメバチ | アシナガバチ | ミツバチ |
| 〇 | 〇 | 〇 | ✖ |
ホスホリパーゼA1の作用
- リン脂質グリセロール骨格sn-1位の脂肪酸を切り出す
- アレルゲン
ホスホリパーゼA1のはたらきの正確な表現は上記のとおりですが、簡単に言えば細胞膜のバリアとして機能しているリン脂質の一部を切り離してしまうというものです。バリアが破壊されてしまうため、毒の影響が出やすくなります。
なお、ホスホリパーゼA1はアレルゲンでもあります。過去に蜂に刺された場合に、ハチ毒アレルギーを引き起こす要因の一つです。
参考
中山景太ほか「ホスホリパーゼ A1 の構造と機能」
井上圭三「総 説 ホスホリパーゼの機能」
ホスホリパーゼA2(PLA2)
| オオスズメバチ | スズメバチ | アシナガバチ | ミツバチ |
| 〇 | 〇 | ✖ | 〇 |
ホスホリパーゼA2の作用
- リン脂質グリセロール骨格sn-2位の脂肪酸を切り出す
- 炎症につながる
- アレルゲン
はたらきとしてはホスホリパーゼA1と似ていますが、切り離すものが異なります。これが、ホスホリパーゼA1にはない「炎症」という作用につながるポイントです。
ホスホリパーゼA2が切り離すリン脂質からは、アラキドン酸というものが出ます(遊離)。アラキドン酸が炎症・免疫・アレルギーなどを調整する代謝(※)につながり、痛みや腫れ、発熱などの症状が生じます。
| (※)プロスタグランジンやロイコトリエンなどのホルモン様物質、脂質メディエーターによる代謝。たとえば、プロスタグランジンの過剰分泌は血管や腸、下腹部を収縮させ、腰痛、頭痛、生理痛、吐き気などを引き起こす。 |
参考
中山景太ほか「ホスホリパーゼ A1 の構造と機能」
井上圭三「総 説 ホスホリパーゼの機能」
髙村(赤司)祥子「ハチ毒PLA2の機能と免疫応答への影響」
ヒアルロニダーゼ
| オオスズメバチ | スズメバチ | アシナガバチ | ミツバチ |
| 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
ヒアルロニダーゼの作用
- ヒアルロン酸の分解・溶解
ヒアルロニダーゼは人体がもともと持っている酵素であり、古くなったヒアルロン酸の分解をおこなうことで新陳代謝をうながすはたらきを持っています。
しかし、ハチ毒とともに注入されたヒアルロニダーゼは、古いヒアルロン酸だけを標的としません。細胞同士の隙間を埋めている主要な構成成分であるヒアルロン酸が分解することで、毒の効果を高めます。
参考
KOSHOクリニック「ヒアルロン酸の持ちはどのくらい?部位別の持続期間と長持ちさせるコツを解説」
生化学工業株式会社「第4回 細胞外 マトリックス1 多機能な細胞のプロテクター」
アンチゲン5
| オオスズメバチ | スズメバチ | アシナガバチ | ミツバチ |
| 〇 | 〇 | 〇 | ✖ |
注意
- アレルゲン
アンチゲン5はスズメバチ科(スズメバチ亜科、アシナガバチ亜科)等の毒液に含まれるアレルゲンです。毒としての機能はわかっていません。
参考
プロテアーゼ
| オオスズメバチ | スズメバチ | アシナガバチ | ミツバチ |
| 〇 | 〇 | 不明 | 不明 |
プロテアーゼの作用
- タンパク質の分解
- アレルゲン
プロテアーゼはタンパク質分解酵素で、人体が食べ物を消化するときにもつかわれています。肉をやわらかくするとされる、パイナップルやタマネギ、ショウガなどにも含まれます。
しかし、ハチ毒とともに体内に入り込むと組織や細胞を破壊し、炎症やアレルギー反応を引き起こします。一方、人体のマスト細胞がプロテアーゼを放出した場合、毒の分解を補助する役割があるとも考えられています。
参考
鈴木 健文ほか「ハチ毒中毒による多臓器不全に対し,集学的治療で救命し得た1例(Successful management of multiple organ failure due to wasp venom intoxication: a case report)」
藤原 祐樹ほか「皮膚に侵入してきたハチ毒の吸収を抑える生体防御機構の発見」東京大学大学院農学生命科学研究科・農学部
酸性ホスファターゼ
| オオスズメバチ | スズメバチ | アシナガバチ | ミツバチ |
| 不明 | 不明 | ✖ | 〇 |
酸性ホスファターゼの作用
- アレルゲン
酸性ホスファターゼはミツバチの毒液に含まれるアレルゲンです。リン酸化合物を分解するはたらきがありますが、人体のさまざまな場所にももともと存在しており、これ自体に有害性はありません。
ハチ毒において有害にはたらくことがあるとすれば、過去にミツバチに刺された方が酸性ホスファターゼによるハチ毒アレルギーになった場合です。次に酸性ホスファターゼを持つ虫(ミツバチ等)に刺された場合にアレルギー反応が起こります。
塩基性タンパク質(非酵素蛋白)

塩基性タンパク質(非酵素蛋白)のハチ毒はマンダラトキシンです。以下で詳しく解説します。
マンダラトキシン
| オオスズメバチ | スズメバチ | アシナガバチ | ミツバチ |
| 〇 | ✖ | ✖ | ✖ |
マンダラトキシンの作用
- ナトリウムチャネルの不可逆な阻害(麻痺につながる)
マンダラトキシンはオオスズメバチ特有の神経毒です。極めて微量でも昆虫や甲殻類などの節足動物の神経伝達機能を麻痺させます。麻痺がおこるのは、上記のナトリウムチャネルの不可逆な阻害によるものです。以下で簡単に説明します。
神経が刺激を受けたとき、細胞の中にナトリウムイオンが流れ込みます。すると、そのイオンによって電気が生まれ、電気信号が全身に伝わります。このナトリウムイオンの流入をコントロールしているのが、ナトリウムチャネルです。
しかし、マンダラトキシンによってナトリウムチャネルが阻害されると、細胞内にナトリウムイオンが流れ込まなくなります。すると、接触・痛みなどの感覚や脳からの運動指令が伝わらなくなるため、麻痺が生じます。
不可逆ということは、細胞が死ぬまで阻害された状態が続くということです。昆虫や甲殻類などの節足動物の場合、麻痺によって動けなくなるためオオスズメバチに捕食されるものと考えられます。
節足動物と脊椎動物(人間など)では阻害の程度が異なりますが、大量の毒液注入(※)によって人間の神経細胞でも同様のことが起これば、筋肉の麻痺や呼吸困難、心停止などにつながる恐れがあります。
| ※オオスズメバチの大群に襲われた場合等。 |
参考
阿部 岳「スズメバチ毒中の神経毒 マンダラトキシン ナトリウムチャネル・ブロッカーとして不可逆的に作用」
脳科学辞典「ナトリウムチャネル」
命に関わる毒の成分には個人差がある

ハチ毒にはさまざまな成分が含まれており、それぞれに作用が異なるため、体質や持病によって影響を受けやすいものが異なります。
ハチ毒アレルギーの方はアレルゲン
ハチ毒アレルギーの方は次のようなアレルゲンに反応する可能性が高いため、注意が必要です。
| アレルゲン | 保有する蜂の種類 |
| ホスホリパーゼA1 | オオスズメバチ スズメバチ アシナガバチ |
| ホスホリパーゼA2 | オオスズメバチ スズメバチ ミツバチ |
| アンチゲン5 | オオスズメバチ スズメバチ アシナガバチ |
| 酸性ホスファターゼ | ミツバチ (スズメバチは不明) |
ハチ毒アレルギーは日常生活では自覚できないため、蜂に刺された経験がある方は一度検査を受けることをおすすめします。アレルギー反応およびアナフィラキシーのメカニズムについては以下の記事をご覧ください。
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呼吸器系疾患の方はアミン類
アミン類には呼吸器系に影響する成分があります。
| 毒の成分 | 作用 | 保有する蜂の種類 |
| ヒスタミン | 気管支平滑筋の収縮 血管透過性の亢進 (息苦しさ) |
オオスズメバチ スズメバチ アシナガバチ ミツバチ |
| アセチルコリン | 気管支収縮 | オオスズメバチ スズメバチ |
ただし、呼吸器への直接的な作用ではなくても、ペプチド類などによる炎症で喉の腫れなどが生じれば呼吸器に影響が出る恐れはあります。また、ヒスタミンの放出につながるメリチンやMDCペプチドなどの酵素類の影響も考えられます。
循環器系(心臓・血管等)疾患の方はアミン類とペプチド類
血圧や血管に関係する持病、心臓疾患等がある方はハチ毒との相性が極めて悪いため注意が必要です。アミン類やペプチド類が強く関係します。
| 毒の成分 | 作用 | 保有する蜂の種類 |
| ヒスタミン | 血管弛緩因子の放出(血圧低下) | オオスズメバチ スズメバチ アシナガバチ ミツバチ |
| セロトニン | 自律神経症状(血圧上昇) | オオスズメバチ スズメバチ アシナガバチ ミツバチ |
| カテコールアミン | 心機能亢進(心収縮力増大等) 血管収縮(血圧上昇) 血管拡張(血流量の増加) |
オオスズメバチ スズメバチ |
| アセチルコリン | 心拍数の低下 血管拡張作用(血圧の低下) |
オオスズメバチ スズメバチ |
| ハチ毒キニン | 血圧の低下 | オオスズメバチ スズメバチ アシナガバチ |
こちらについても呼吸器系疾患と同様に、ヒスタミンの放出につながるメリチンやMDCペプチドなどの酵素類の影響も考えられます。
体質や疾患によってハチ毒の影響を受けやすいと感じた方は、蜂との遭遇に注意しましょう。蜂に狙われにくい明るい色の服の着用、蜂駆除スプレーの携帯などの対策をおすすめします。自宅の敷地内に巣が作られた場合は、プロへの駆除依頼をご検討ください。
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毒が弱い蜂でも油断せずに避けよう
蜂の毒には、毒として直接的に作用するもののほか、毒の効率を高める成分やアレルゲンまで含まれていることがわかりました。攻撃方法としてみれば毒針を刺すという1つの手段に見えますが、体内で生じる攻撃は多種多様です。
なお、毒の種類がとくに多いのはスズメバチですが、スズメバチだけが危険というわけではありません。体質や持病によっては、弱い毒の蜂に刺された場合でも重篤な症状が出る恐れがあります。毒が弱い蜂に遭遇した場合でも油断せず、静かに離れましょう。

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