蜂に刺された際の症状は人によって大きく異なります。軽いかゆみや腫れで済む場合もあれば、重篤なアレルギー反応を引き起こすなど命に関わるケースもあります。特に注意が必要なのが、急激に症状が進行するアナフィラキシーショックです。
本記事では、蜂に刺された際に現れる症状の種類や重症度の見分け方、早めに対応すべきサインについて詳しく解説します。正しい知識を身につけ、万が一の事態に備えておきましょう。
蜂に刺されるとどんな症状が出る?
蜂に刺されたときの症状は、刺した蜂の種類や刺された人の体質によって大きく異なります。ここでは、症状を軽度・中等度・重度に分けて紹介します。
軽度の症状
軽度の場合、主に次のような反応が見られます。
- 刺された部分の腫れや赤み
- 強い痛みやかゆみ
- 熱を持つ
刺された直後はズキッとするような強い痛みを感じることがありますが、時間が経つにつれて徐々に和らいでいきます。腫れや赤みは数時間から数日で治まることがほとんどで、全身症状がなければ重症化する心配は少ないといえます。
中等度の症状
中等度の症状では、次のような反応が現れることがあります。
- 刺された周囲が大きく腫れる(直径10cm以上)
- 痛みやかゆみが数日続く
- 軽い頭痛や発熱
このレベルになると局所の反応だけでなく、体調全体に影響が出ることもあるため注意が必要です。特に腫れが大きく広がったり、腫れが数日たっても引かない場合には、炎症が強まっている可能性があります。
患部を冷やす、かゆみを抑える市販薬を使用するなど、早めのケアが重要です。
また、頭痛や発熱などの全身症状が出た場合や、体調の変化を感じたときは、念のため病院で診察を受けることをおすすめします。放置せず、経過をよく観察することが大切です。
重度の症状
重度の場合、命に関わる危険な反応が現れることがあります。
- 全身にじんましんが出る
- 息苦しさや呼吸困難
- めまいや意識障害
- 血圧の急激な低下
これらの症状が見られる場合は、アナフィラキシーショックの可能性が高く、迅速な対応が必要です。特に、刺されてから数分〜数十分以内に全身症状が出た場合は緊急事態と考え、迷わず救急車を呼んでください。放置すると命に関わるため、自己判断で様子を見るのは危険です。
なお、アナフィラキシーショックのメカニズムについては、次の項目をご覧ください。
アナフィラキシーショックとは?蜂刺されの危険な症状
蜂に刺された際に特に注意すべき症状が、アナフィラキシーショックです。体が蜂の毒に対して過剰なアレルギー反応を起こすことで発生し、放置すれば命に関わる危険性もあります。
アナフィラキシーショックのメカニズム
アナフィラキシーショックは、免疫系の防御反応によるものです。
蜂に刺された瞬間に毒が体内に入り、免疫系が過剰な防御反応を始めると、ヒスタミンなどの化学物質が大量に放出されます。ヒスタミンが放出されると、血管が拡張して血圧が急激に低下したり、気道が狭まることで呼吸がしづらくなったりします。
特に、過去に蜂に刺されたことがある人は体内に蜂毒に対する抗体(IgE)ができている可能性が高く、再び刺されると激しいアレルギー反応が起こりやすくなるため注意が必要です。
アナフィラキシーショックの症状
アナフィラキシーショックが起こると、短時間のうちに次のような全身症状が現れることがあります。
- 全身のじんましんやかゆみ
- 呼吸困難や息苦しさ
- 血圧低下による意識障害
- 嘔吐やめまい
アナフィラキシーショックは蜂に刺されてから数分〜30分以内に急速に進行することが多く、迅速な対応が必要です。
アナフィラキシーショックが起こったら?
アナフィラキシーショックは命に関わる緊急事態です。少しでも症状が疑われる場合は、ためらわず次の行動を取りましょう。
- すぐに救急車を呼ぶ
- エピペンを持っている場合は使用する
- 仰向けになり、足を少し高くして安静にする
救急車を待つ間は、仰向けになり足を上げた体位を保ちましょう。血圧の低下を防ぎ、脳や心臓に血液を届きやすくするためです。
ただし、呼吸が苦しい場合や嘔吐の症状がある場合は、横向きに寝かせる方が安全なこともあります。吐しゃ物が喉に詰まって窒息してしまう恐れがあるからです。状況に応じて臨機応変に対応しながら、落ち着いて救急隊の到着を待ちましょう。
「大丈夫だろう」と自己判断せず、早めに医療機関のサポートを受けることが何よりも大切です。
蜂毒の種類と危険性
蜂の種類によって毒の成分や体への影響は異なります。特に日本では、スズメバチ・アシナガバチ・ミツバチの3種が人への被害で問題になることが多い傾向にあります。
1. スズメバチの毒
スズメバチの毒は非常に強力です。神経毒やタンパク質分解酵素、ヒスタミンなどが含まれ、刺されると激しい痛みと強い炎症を引き起こします。神経毒の影響により、刺された部位だけでなく全身に症状が及ぶこともあり、アナフィラキシーショックを引き起こすリスクも高いのが特徴です。
また、スズメバチは攻撃性が非常に高く、何度でも繰り返し刺すことができます。複数箇所を刺される場合もあり、さらに症状が重くなる危険性も高いです。
2. アシナガバチの毒
アシナガバチの毒には、主に酵素類やヒスタミンなどの成分が含まれています。スズメバチほどの強い毒性はありませんが、刺されると局所的に強い炎症反応や腫れを引き起こすことがあります。
刺されると激しい痛みや、赤み、腫れが数日続くこともあります。通常は局所的な反応にとどまりますが、体質によってはアナフィラキシーを引き起こす可能性もあるため油断は禁物です。
アシナガバチは比較的おとなしい性格とされていますが、巣に近づくと防衛本能から攻撃してくる可能性があります。不用意に近づいたり刺激したりしないように注意しましょう。
3. ミツバチの毒
ミツバチの毒には、メロチニンやヒスタミンといった成分が含まれており、毒性自体はスズメバチやアシナガバチと比べて比較的弱いとされています。ただし、ミツバチは一度刺すと毒針が皮膚に残るという特徴があり、そのままにしておくと針から毒が持続的に体内へ注入されてしまいます。
通常は局所的な腫れや痛みにとどまりますが、体質によってはアナフィラキシーを引き起こす可能性もあるため油断はできません。
なお、ミツバチは一度刺すと針を失って死んでしまうため、他の蜂のように繰り返し刺してくることはありません。
蜂に刺されたときの応急処置
蜂に刺されたときは、まず安全な場所に避難し、針が残っていればピンセットで抜きましょう。このとき、指や爪で針を抜き出すのは危険です。針が折れたり押し込んでしまったりする可能性があるため、抜くのが難しそうな場合は、医療機関を受診しましょう。
その後、患部を冷やして炎症を抑え、可能であれば毒を押し出すように軽く絞ります。かゆみや腫れが強い場合は、市販の抗ヒスタミン薬やステロイド外用薬を使うのも効果的です。
このような応急処置を素早く行うことで、症状の悪化を防ぐことができます。蜂に刺された際の具体的な対処法や注意点については、次の記事で解説しています。あわせてご覧ください。
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蜂刺されの症状が気になる時は迷わず医療機関を受診しよう
蜂に刺された際の症状は人によって異なります。軽いかゆみで済む場合もあれば、命に関わるアナフィラキシーショックを引き起こすこともあります。特に体調の異変を感じた場合は、自己判断せずすぐに医療機関を受診しましょう。
蜂の活動が活発な季節には、刺されるリスクも高まります。万が一に備えて正しい知識を身につけ、冷静に対処できるよう準備しておきましょう。