「クマバチは理論上飛べない」と聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。たしかに、20世紀前半ではクマバチが飛べる理屈が解明されておらず、当時の航空力学による計算上では不可能であったため気合で飛んでいるともいわれていました。
しかし、現在はクマバチが飛べる理由は科学的に解明されています。以前の説と解明された理由をどちらも詳しく解説するので、ご興味のある方はぜひご覧ください。
このような方におすすめ
- クマバチが飛べないと言われた理由を知りたい方
- クマバチが飛べる理由を知りたい方
- クマバチとレイノルズ数の関係を知りたい方
- クマバチと鳥の飛び方の違いを知りたい方

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目次
クマバチは「飛べると信じているから飛べる」といわれていた

クマバチは「航空力学上は飛べない」といわれていました。当時の理論による計算上では、クマバチの体や羽ばたきが飛ぶための条件を満たさず、説明がつかなかったためです。このことから、クマバチについて「飛べると信じているから飛べる」という逸話が誕生しました。
欧米ではこのエピソードは有名で、「不可能を可能にする」というイメージから、企業・団体のロゴにクマバチが用いられています。具体的には、デンマークのスポーツブランド「ヒュンメル」、アメリカ海軍建設工兵隊(Seabees / シービー)などです。
ただし、ロゴに用いられている蜂の種類は、正確にいえばBumblebee(マルハナバチ)です。日本で「クマバチは飛べない」という説が定着したのは、マルハナバチのような丸く大きい蜂をクマバチと呼ぶ習慣があったことに由来しています。
とはいえ、マルハナバチもクマバチも飛べないとされていた蜂であり、飛ぶメカニズムも同様であるため、本記事は双方の解説として読んでいただいて問題ありません。
参考
hummel「ABOUT hummel」
Navy Expeditionary Combat Command「SEABEES」
クマバチが「航空力学上は飛べない」とされる理由

20世紀前半の航空力学では、クマバチの体重と羽の大きさの比率から計算すると、理論上は飛行不可能とされていました。
この理論は1930年代のフランスの昆虫学者アントワーヌ・マニャンのエピソードによるものです。助手のエンジニアにクマバチの飛行を計算させた際、「航空力学の法則では、クマバチは飛べない」と結論づけたとされています。
鳥の羽ばたきと同じように、気圧差を利用した揚力で飛ぶと仮定して計算した場合、クマバチの翅は実際の3倍の面積が必要、あるいは数倍の速度で羽ばたく必要があるとされました。
なお、スズメバチに関しては当時の航空力学の計算上でも飛べると判断されたようです。そのことからも、スズメバチの飛行能力が優れていることがわかります。スズメバチの飛行能力を詳しく知りたい方は、次の記事をご覧ください。
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クマバチが飛ぶ仕組みの理解に役立つレイノルズ数

航空力学上は飛べないクマバチが、実際には飛んでいる理由を理解する上で、役立つのがレイノルズ数です。空気に含まれる窒素や酸素の分子が物体の大きさや動きに対して、どのような抵抗になるかがわかります。
レイノルズ数とは
レイノルズ数は、空気が慣性と粘性のどちらとして作用するか(支配的か)をスコア化したものです。値は物体の大きさと動きのスピードで変わります。以下の表をご覧ください。
| 物体の大きさ・速さ | レイノルズ数 | 抵抗 | 例 |
| 大きい・速い | 高い | 正面衝突(慣性) | 飛行機、新幹線、スポーツカー |
| 小さい・遅い | 低い | まとわりつき(粘性) | 小さな虫、霧 |
大きいものでも、ゆっくり動く分には空気の分子の抵抗は大きくありません。しかし、動きが速くなると空気を押しのける必要があり、正面衝突のような抵抗を受けます。これは高所からプールに飛び込んだときに、水面に激突して痛みを感じることとよく似ています。
飛行機や新幹線、スポーツカーなどが流線形であることも、この正面衝突が理由のひとつです。流線形であれば、空気を正面から受け止めることなく上下に逃がせます。
一方、小さいものに対する空気の抵抗は、粘性として作用します。虫にとっての空気は粘り気がある「つかめるもの」であり、つかめるからこそ、小さな翅でも空気をとらえて利用できるというイメージです。
参考
河内 啓二「虫の飛行は、無視できない」Leave a Nest
理解に役立つ羽と鉄球の実験
レイノルズ数・空気抵抗を理解するのに役立つのは、羽と鉄球の実験です。同じ高さから鉄球と羽を落とすと、鉄球は速く落ちますが、羽はゆっくり落ちます。
小さく軽い羽にとって空気は粘性があるので、粘り気のある液体の中を落ちていくようなものです。一方、鉄球は大きく重いため、粘性の抵抗を受けることがなく急速に落下します。
ここで面白いのは、空気中に窒素や酸素などの分子がない真空状態にすると、羽と鉄球が同じ速度で地面に着くという点です。羽にとって「つかめるもの」がなくなるからであり、虫が空気をつかんで飛んでいるイメージが湧きやすくなるでしょう。
クマバチが空気抵抗を利用して飛ぶ仕組み

1mm以下の虫は空気の粘性だけを活用して飛びますが、実はクマバチは、航空力学上の飛び方である揚力と粘性活用をあわせ持つ、ハイブリッドな飛び方をしています。
クマバチは揚力と粘性活用のハイブリッド
鳥や飛行機が飛ぶのは航空力学の揚力です。羽によって気流を上下に分け、上下で流れの速さを変えることで気圧差を生み出します。気圧が高い方から低い方に向かって生まれる揚力(物体を持ち上げる力)によって飛ぶ仕組みです。
一方、1mm以下の小さな虫は揚力を使わず、空気の粘性のみを利用して飛んでいます。粘り気のある流体の中を泳いでいるようなものです。
クマバチはこのハイブリッドで、揚力と粘性を両方使って飛んでいます。とくに粘性の利用が効率的です。翅を8の字に動かし、水飴をかきまわすように空気の渦(前縁渦)を作り出します。つかんだ空気を足場としながら渦によって気圧を下げ、揚力を生む仕組みです。
ホバリングは立ち泳ぎのイメージ
クマバチは1秒間に200回という高速なはばたきで空気をつかみ、揚力を生み出す一方で、粘度の高い液体の中で浮いているような状態でもあります。立ち泳ぎのようなものです。立ち泳ぎだからこそ、その場に留まるホバリングや急旋回を実行できます。
参考
河内 啓二「昆虫の飛行メカニズム(流体力学的視点から)」
nature「蚊が飛べる理由を解明」

クマバチが飛べる理由の解明は1996年

クマバチが飛べる理由が解明される決定打となったのは、1996年、ケンブリッジ大学のチャールズ・エリントン教授による研究です。昆虫の羽の動きを模したロボットと、煙を使った空気の流れの可視化実験によって、そのメカニズムを解明しました。
解明された背景には、コンピュータとハイスピードカメラの進化によって計算・観測が可能になったこともあげられます。
参考
Charles P. Ellington 他「Leading-edge vortices in insect flight」
Charles P. Ellington「The Aerodynamics of Hovering Insect Flight. IV. Aeorodynamic Mechanisms」
クマバチは気合ではなく精巧な設計で飛んでいた
かつてクマバチは「飛べると信じているから飛べる」などといわれていましたが、実際は揚力と空気の粘性を活用して飛んでいたことがわかりました。
これにより、花蜜を吸うためのホバリングや外敵と遭遇した際の急旋回など、飛行機ではなし得ない動きを可能としています。クマバチが飛行するメカニズムは、現代のマイクロドローンでも活用されるほど精巧で効率的です。
なお、クマバチの見た目や巣の特徴、日本に住んでいる種類について気になった方は、ぜひ次の記事もご覧ください。実際の写真も多数掲載しています。
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