蜂の食べ物といえば花蜜のイメージがありますが、実は蜂の種類や成長過程(幼虫・成虫)によってエサは異なります。また、女王蜂のみ異なるものを食べることもあり、エサは多様です。本記事では、ミツバチ・スズメバチ・アシナガバチなど各種蜂の食べ物(食性)を成長過程ごとに詳しく解説します。
蜂を観察したい人や蜂の寄り付きを防ぎたい人は、蜂の食べ物に注目すると準備や対策がしやすくなるので、ぜひ参考にしてください。
ミツバチ(ミツバチ科ミツバチ族)の食べ物

「ミツバチ」といえば養蜂場にいるセイヨウミツバチや日本在来のニホンミツバチが代表的です。数千匹から数万匹の巨大なコロニーを持ち、エサを貯蓄して年を越します。
ミツバチの幼虫の食べ物
ミツバチの幼虫の食べ物は、孵化から3日間と4日以降で変わります。
孵化~3日間 | ローヤルゼリー |
---|---|
4日目以降 | 花粉団子 |
孵化から3日間は、働き蜂が花粉を体内で分解合成したローヤルゼリーを与えられて育ちます。乳白色のクリーム状のもので、たんぱく質・ミネラル・ビタミンなどの栄養が豊富なエサです。4日目からは、働き蜂が花蜜と花粉を混ぜて作った花粉団子を食べるようになります。
花粉団子の作り方

採蜜中に体中の毛に花粉がつく

- 前脚の毛(花粉ブラシ)で花粉をこそげとる
- 前足と顎で花粉と蜂蜜を混ぜる

- 前脚→中脚→後脚へ花粉を送る
- 後脚の花粉籠(かご)に貯める
- 巣に戻る
ミツバチ科の成虫の食べ物
ミツバチは成虫になると、次のものを食べるようになります。
- 花蜜
- 花粉
- 蜂蜜
- 蜂パン
花蜜と蜂蜜は別の物です。働き蜂が巣穴に持ち帰った花蜜を別の働き蜂が受け取り、巣内で熟成・濃縮させることで蜂蜜に変化させます。熟成と濃縮を促すものは、働き蜂の体内にある酵素と高温に保たれた巣内の環境、働き蜂の羽ばたきです。完成した蜂蜜は、蜂の活動量が低下する真夏や冬ごもり中の保存食として蓄えられます。
蜂パンは、蓄えた花粉団子に蜂蜜を塗った保存食です。貯蓄担当の働き蜂は、採集担当の働き蜂から花粉団子を受け取ります。それを噛み砕いて巣房に貯め込み、巣房が満たされると保存のために上から蜂蜜を塗ります。これが蜂パンです。
ミツバチの女王蜂の食べ物
女王蜂は幼虫から成虫になっても変わらずローヤルゼリーのみを食べます。育児担当の働き蜂が花粉を食べ、体内で分解合成したクリーム状のものです。ここで、女王蜂の誕生プロセスを見てみましょう。
- 女王蜂が「王台」に卵を産む
- 王台の卵が孵化する(幼虫の誕生)
- ローヤルゼリーが与えられる
- 新女王蜂になる
つまり、王台で孵化した個体だけが生涯ローヤルゼリーを食べ、王台以外で孵化した幼虫は4日目以降から花粉団子を食べるようになるという仕組みです。
なお、市販されているローヤルゼリーサプリなどの原料は、人工王台で卵を孵化させることで大量生産させたローヤルゼリーを主に使っています。次の記事では、ローヤルゼリーを含めて、人が蜂の巣を食べた場合の栄養を解説しています。ぜひご覧ください。

\ 蜂の巣駆除のお問い合わせはこちらから /
ミツバチ族以外のミツバチ科の食べ物

上記のミツバチと同じミツバチ上科ミツバチ科に属するマルハナバチやコシブトハナバチ、クマバチ、さらにミツバチ上科ハキリバチ科に属するハキリバチも食性はほぼ同じです。ただし、幼虫・成虫・女王蜂ともに花蜜と花粉、または花粉団子のみを食べます。ローヤルゼリーや蜂蜜、蜂パンは作りません。
スズメバチ(スズメバチ科スズメバチ属)の食べ物

日本最強のオオスズメバチや殺傷件数最多のキイロスズメバチなどが分類される、スズメバチ科スズメバチ属の食性を解説します。
スズメバチの幼虫の食べ物
スズメバチの幼虫の食べ物は、働き蜂が作った肉団子です。肉団子は、他の昆虫や動物の死骸・生ごみなどから獲った肉が、成虫の顎で噛み砕かれて作られます。幼虫は昆虫や肉を噛み砕く力がないため、働き蜂がやわらかくする必要があるためです。幼虫はやわらかい肉団子をちぎり取って丸のみします。
なお、排泄は蛹になる直前の一回限りで、それまでは体内に貯め込んでいます。幼虫を捕獲すると黒い筋が体内にあることがわかりますが、それは糞です。蜂の糞にも興味がある人は、次の記事をご覧ください。記事の前半で蜂の糞の特徴と成分を解説しています。

スズメバチの成虫の食べ物
スズメバチの成虫(働き蜂)は肉団子を食べません。次のようなものを食べます。
- 幼虫が出す透明の液体
- 花蜜
- 果汁
- 樹液
成虫の主食は幼虫が分泌する、透明の液体です。幼虫が肉団子を食べると分泌されるもので、糖とタンパク質が含まれています。肉団子を与えて分泌液をもらう関係を、スズメバチの栄養交換と呼びます。
主食は幼虫の分泌液ですが、狩りや防衛の最中に栄養不足になると、花蜜や果汁、樹液なども食べることがあります。スズメバチには蜂蜜を貯める習性がないため、その場で吸うだけの栄養補給です。なお、成虫になると腰が細くなり、固形物が通らなくなるため、肉団子を食べることはありません。
スズメバチの女王蜂の食べ物
スズメバチの女王蜂の食性はタイミングによって変化します。次の表をご覧ください。
タイミング | 食べ物 |
---|---|
冬眠から目覚めた春 | 花蜜、果汁、樹液 |
幼虫が誕生 | 幼虫の分泌液 |
幼虫がある程度育つ | 幼虫の分泌液、肉、他の虫 |
スズメバチは女王蜂以外越冬できないため、冬眠から目覚めたばかりの女王蜂は単独行動です。糖分が多い花蜜・果汁・樹液を摂取して営巣と産卵をおこないます。また、最初の卵の幼虫が羽化して働き蜂になるまでは、女王蜂自らが昆虫を狩り、肉団子にして幼虫に与えます。働き蜂が羽化すると狩りの役目をバトンタッチする仕組みです。
その後、基本的に巣内にひきこもって幼虫の分泌液を主食とします。ただし、分泌液が十分にないときは、働き蜂が狩った虫や採集した肉を食べることもあるようです。

アシナガバチの食べ物

アシナガバチはスズメバチ科アシナガバチ亜科に属する蜂です。食性はスズメバチ属とよく似ていますが、肉団子用に狩る虫のサイズや種類に違いがあります。
アシナガバチの幼虫の食べ物
アシナガバチの幼虫は成虫が狩った昆虫の肉団子を食べて育ちます。排泄は蛹になる直前の1回限りです。スズメバチの食性とよく似ていますが、スズメバチがクモや他の蜂などの大型の昆虫も狩るのに対し、アシナガバチが狩るのは芋虫やバッタなど小型の虫が中心です。
アシナガバチの成虫の食べ物
アシナガバチの成虫の食べ物はスズメバチと同様で、次の4つです。
- 幼虫が出す透明の液体
- 花蜜
- 果汁
- 樹液
アシナガバチの成虫も腰が細く固体が通らないため、肉団子を食べることはありません。また、蜂蜜を蓄える習性もありません。
アシナガバチの女王蜂の食べ物
アシナガバチの女王蜂の食べ物は成虫と同じです。単独で越冬し、春に目覚めたときは花蜜や果汁などを食べ、幼虫が孵化すると幼虫の分泌液を主食とします。
\ 蜂の巣駆除のお問い合わせはこちらから /
蜂の食性を農業や駆除作業に役立てよう
ミツバチ科の蜂は花粉をエサとして運ぶため、植物の受粉に役立っています。農業や園芸に欠かせない存在です。また、スズメバチやアシナガバチも葉の食害をもたらす芋虫やバッタを狩ってくれるため、益虫の側面があります。
しかし、スズメバチやアシナガバチの中には人の殺傷被害に及ぶ危険な蜂もいるため、注意が必要です。民家などの人の生活圏へ頻繁に来訪する場合は、駆除を検討しましょう。成虫は甘い物を好むため、ジュースを活用したペットボトルトラップを仕掛ければ、個体数を減らせる可能性があります。
ただし、ペットボトルトラップでは駆除しきれない場合や巣が近くにある場合など、危険度が高い状況であればプロに相談しましょう。
蜂の食べ物に関するよくある質問
