ハキリバチは名前のとおり、葉を切り取る習性を持つ蜂です。バラの葉を好んで持ち帰る種類もいるため、園芸にとっては厄介な蜂といえます。動きが素早く、退治できずに困っている人もいるのではないでしょうか。
本記事では、ハキリバチの特徴と好む葉の種類、駆除方法を詳しく解説します。後半では駆除の前に気を付けておきたいポイントも紹介するので、ぜひ参考にしてください。
ハキリバチとは?
ここでは、ハキリバチの属性と習性を解説します。
ミツバチの仲間
ハキリバチは蜂蜜を集めるミツバチと同じ、ミツバチ上科に属するハキリバチ科の蜂の総称です。葉を切り取って巣作りに使う習性があります。ハキリバチ科の蜂には、次のような種類がいます。
- トモンハナバチ
- ハラアカヤドリハキリバチ
- ヤノトガリハナバチ
- キバラハキリバチ
- オオハキリバチ
- クズハキリバチ
- バラハキリバチ など
葉を食べるわけではない
ハキリバチは葉を切り取りますが、巣に使うだけで食べるわけではありません。幼虫・成虫ともに花粉や花の蜜を食べます。
このように、花粉や花の蜜だけを食べる蜂は「ハナバチ」とも呼ばれます。ハキリバチ以外のハナバチは、ニホンミツバチ・セイヨウミツバチ・クマバチ・マルハナバチなどです。花粉を集めるのに適した、ふわふわの毛が生えている傾向にあります。
花粉を運んでくれるので、受粉を助けるという意味では園芸や農業に利益のある虫(益虫)です。
ハキリバチの葉を使った巣作り方法
ハキリバチの巣作り手順は次のとおりです。
- 葉を丸く切り取る
- 葉を持ち帰る
- 木の穴に葉を敷き詰める
- 葉で仕切りをつくる(育房)
- 花粉と蜜で団子を作る
- 団子を育房に入れて卵を産みつける
小さな牙のような顎で葉を丸い形に切り取ると、巣穴となる木の穴に持ち帰り、葉を敷き詰めながら仕切りを作ります。仕切られた空間が幼虫が育つ育房です。育房に花粉と蜜で作った団子を入れ、そこに卵を産みつけます。
巣作りに好む場所
巣作り場所には狭い穴・空洞が好まれます。具体例は次のとおりです。
- 枯れ木の穴
- 爬虫類が開けた木の穴
- 土の中
- 建材用の竹の中
- ホース
しばらく使っていなかった竹やホースを使うときは、ハキリバチが中にいる可能性を考えておきましょう。ハキリバチの性格はおだやかですが、巣を刺激されると攻撃することがあります。
バラの葉を好むハキリバチ
バラの葉を狙うハキリバチの知名度が高いものの、すべてのハキリバチがバラを選ぶわけではありません。
バラを好むのはバラハキリバチ
バラハキリバチは黒い体に茶色の毛を持つハキリバチです。北海道・本州・四国・九州に分布しており、対馬や屋久島、種子島にも住んでいます。
バラの葉を好んで切り取ってしまうため、放っておくとバラの見た目が悪くなります。また、光合成の効率が下がるため元気がなくなる恐れがあり、注意が必要です。
バラの葉が丸い形に切り取られているのをみつけたら、バラハキリバチの可能性を疑いましょう。
1種類の葉を使うとは限らない
クズの葉を好むクズハキリバチでも、クズの葉だけを使うわけではないようです。調査結果によれば、巣に使われた467枚の葉の内、クズの葉は450枚(96.4%)と最多ですが、ヤマハギやムラサキツメクサの葉も使われていました。
バラハキリバチも、バラの葉以外を使う可能性があります。
参考:片山英助「クズハキリバチの営巣習性、 特に育房葉片の加工と接着の状況について」一般社団法人 日本昆虫学会 昆蟲.ニューシリーズ2004年7巻1号
ハキリバチの駆除方法
ハキリバチは動きが素早いため、飛んでいる状態の個体を駆除するのは困難です。巣を探して駆除しましょう。手順は次のとおりです。
- 行動を観察し巣の場所を特定する
- 防護服を着用する
- ハキリバチが出入りする穴に蜂用スプレーを噴射する
- 1~2本分のスプレーを使い切る
- 癒合剤やパテなどで穴をふさぐ
スプレーの噴射口を穴に入れ、1~2本を使い切るまで噴射しましょう。奥まで薬剤が回れば駆除は完了です。
その後は、再発防止のために穴を埋めます。木の穴であれば植物用のケイソウセラミック粉や癒合剤、壁などの穴であればパテがおすすめです。ホースや竹材などであれば、廃棄しましょう。
トモンハナバチは絶滅危惧種なので注意
※画像はトモンハナバチと似ているハキリバチの一種
ハキリバチの一種であるトモンハナバチは京都や宮城、関東北部3県などで絶滅危惧種や準絶滅危惧種、要注目種などに指定されています。個体数が減っているため、不必要な駆除はおすすめできません。
なお、トモンハナバチが好むのはヨモギの葉や綿毛で、巣作り場所には竹やヨシの筒を選びます。直接的な被害がなければ、放っておきましょう。
ハキリバチは益虫にも害虫にもなる蜂
ハキリバチは花粉を運ぶため、受粉を助けてくれる面では園芸や農業にとって益虫です。性格はおだやかで、巣を刺激しない限り襲ってくることはまずありません。しかし、名前のとおり葉を切り取るため、植物の光合成に悪影響が及ぶこともあります。
駆除すべきかどうかは、育てている植物の被害レベルで判断しましょう。葉が多く切り取られ、植物が弱ってしまうようであれば駆除を検討することをおすすめします。防護服相当のウェアを着用し、蜂用スプレーで駆除してみてください。
ただし、トモンハナバチは絶滅の可能性があるため、できれば放っておきたいところです。プランターの場所を変えるなど、工夫してみてはいかがでしょうか。