蜂に関する解説記事やSNS投稿などを見ているとき「腹部第一背板」「口吻」などの単語が登場し、「いまいちよくわからない」と思ったことがある方も多いのではないでしょうか。
本記事では、蜂の体の仕組みと構造を、頭部・胸部・腹部・翅(はね)・脚に分けて詳しく解説します。蜂特有の口の構造やパーツごとの役割、節の数まで紹介するので、ぜひご覧ください。
このような方におすすめ
- 蜂の各部位の名称を知っておきたい方
- 蜂がどうやって蜜を吸っているのか興味がある方
- 蜂を見分けるときのポイントをおさえておきたい方
- 幼虫から成虫になるまでの変化が気になる方

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蜂の頭部

蜂の頭部を次の5つに分けて解説します。
蜂の頭部を構成するパーツ
- 目(複眼と単眼)
- 頭楯
- 触覚
- 大顎
- 口吻
複眼と単眼

蜂の目は、大きな複眼と頭頂部にある単眼で分けられます。複眼は物の形や色などの複合的な情報を感知する目です。数千の個眼で構成されているので「複眼」という名前がつけられています。
一方の単眼は光を感知しています。頭頂部に3つありますが、それぞれの目はその名のとおり単眼で、複数の個眼で構成されたものではありません。
蜂の目で見える色や動体視力などの詳細は次の記事で解説しているので、ぜひご覧ください。
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頭楯(とうじゅん)

頭楯は複眼に挟まれた、大顎の付け根までの部分です。大顎を支える土台であり、大顎の力が強いものは頭楯も大きい傾向があります。
また、よく似た蜂を見分けるポイントとしても有用です。見分けが難しいコガタスズメバチとオオスズメバチの場合、頭楯の先端にある突起の数が異なります。
なお、頭楯の両サイド、複眼の下から大顎の付け根までのエリアのことをマーラーエリアと呼びます。人間でいえば頬にあたる部分です。マルハナバチなどの説明をするときに、「本種はマーラーエリアが長い」などと表現することがあります。
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触角

触角は聴覚・嗅覚・触覚の機能を持つ部位です。エサの確認や空気の流れ・振動の察知、温度感知のほか、相手が同じ巣の仲間かどうかの判断などにも使われます。
触角の部位は、頭部とつながっている柄節(へいせつ)、運動を制御する梗節(こうせつ)、複数の節で構成された鞭節(べんせつ)に分けられます。鞭節は可動な節が多いため、触れるものにあわせて滑らかに曲がります。
触角全体の節の数は蜂によって異なりますが、スズメバチやミツバチの場合は、メスが12節、オスは13節です。オスは交尾をする際に、相手が女王蜂かどうかを確かめるために触角でフェロモンや体表の成分を確認するといわれています。
大顎(だいがく)

大顎は左右に開く構造で、さまざまなシーンに使われます。具体的には次のとおりです。
大顎が使われるシーン
- 外敵を攻撃するとき
- エサを噛み砕くとき
- ハナバチが花粉団子をこねるとき
- スズメバチが威嚇するとき
- コシブトハナバチが寝るとき
毒針をもっている蜂の場合、外敵を確実に攻撃するために大顎でしがみついてから毒針を刺すことがあります。蜂に噛みつかれたら、すぐさま刺される可能性があるので注意しましょう。
大顎のユニークな使い方としては、コシブトハナバチがあげられます。夜になると草や枝に噛みつき、体を宙ぶらりんにしたまま寝るというものです。逆に疲れそうですが、顎の開閉にロックがかかるような仕組みで、脱力はできるとされています。
エサの獲得と威嚇に関する詳細は、次の記事をご覧ください。
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大顎が発達している蜂の種類
大顎の力を必要とする習性を持つ蜂の場合、他の蜂と比べて大顎が大きく発達している傾向があります。具体例は次のとおりです。
| 蜂の種類 | 大顎の力が必要な使い方 |
| スズメバチ | 巣材となる樹皮をかじる 甲虫を噛み砕く 外敵に対して威嚇音を発する |
| アシナガバチ | 巣材となる樹皮をかじる 獲物や外敵に噛みつく |
| クマバチ | 営巣のために木をかじりとって穴をあける |
| ハキリバチ | 葉をかじりとって巣材にする |
単に噛みつくというよりも、かじったり噛みちぎったりする作業において、大顎の力が必要になるようです。
口吻(こうふん)

蜂の口吻は採蜜のために重要な器官です。主に次の3つのパーツで構成されています。
| 部位の名称 | 詳細 |
| 下唇鬚(かしんしゅ) | 別名「パルピ」。においや感触を確かめるための器官と考えられているが、諸説ある。 |
| 外葉(がいよう) | 1対の外葉を合わせることで筒状(ストロー)にする。 |
| 中舌(ちゅうぜつ) | 粘度の高い蜜をストローの中に送る役割を持つ器官。 |
粘度の低いサラサラとした花蜜は、外葉のストローと体内の減圧で吸い上げますが、樹液や蜂蜜などの粘度の高い蜜は中舌でストローに送り込みます。また、口吻はフェロモンの受け渡しなどのコミュニケーションにも使われるようです。
なお、ミツバチやマルハナバチなどのハナバチの口吻は長い傾向がありますが、スズメバチやアシナガバチなどの狩り蜂の口吻は短い傾向にあります。

ミツバチ

スズメバチ

蜂の胸部

蜂の胸は主に次の5つのパーツに分けられます。
| 部位の名称 | 詳細 |
| 前胸(ぜんきょう) | 前脚が生えている部分。前胸の色が特徴的な蜂が多く、見分けるポイントになりやすい。 |
| 中胸(ちゅうきょう) | 胸のメインの部分でアシナガバチなどでは特徴的な模様が入る。中脚が生えている。 |
| 肩板(かたいた) | 中胸と後胸の間にある部分。小楯板の色は蜂の種類を見分けるポイントになりやすい。 |
| 後胸(こうきょう) | 腹とつながる細い部分。後翅と後脚が生えている。 |
胸の各部位の色や模様は蜂を見分けるときのポイントです。たとえば、キイロスズメバチを見分けるときは、小楯板が黄色であるかどうかがポイントとなります。
なお、胸といっても内部に肺があるわけではありません。呼吸に関連する器官は、後述の腹部に備わっています。
蜂の翅(はね)

蜂の翅は前翅(ぜんし)2枚、後翅(こうし)2枚の計4枚です。
| 部位の名称 | 詳細 |
| 前翅(ぜんし) | 中胸の肩板から生えている翅。 |
| 後翅(こうし) | 後胸に生えている翅。 |
後翅のフチ、前翅と隣接する部分にはカギ(ひっかけ)があります。このカギが前翅にひっかかり、前翅の開きと連動して後翅も開く仕組みです。
蜂の飛び方については、クマバチの飛び方に関する記事で詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。
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蜂の脚

蜂の脚は前脚・中脚・後脚に分かれており、左右それぞれにあるため計6本です。脚の先には爪や褥盤という吸盤があり、ガラス面などにもとまれるようになっています。
脚は歩行や停留のためだけでなく、毛づくろいにも使われます。とくに、ハナバチはふわふわの毛に花粉がくっつくため、毛づくろいが熱心です。かき集めた花粉は、後脚にある花粉籠(かふんかご)に入れられます。
ハナバチに花粉籠があるのは、花粉を持ち帰って幼虫のエサにするためです。次の記事では蜂の食べ物を詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。
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蜂の腹部

蜂の腹部を次の3つに分けて解説します。
蜂の頭部を構成するパーツ
- 前伸腹節
- 腹柄
- 腹部(膨腹部)
前伸腹節(ぜんしんふくせつ)
後胸のすぐ下にある前伸腹節は胸の一部に見えますが、区分としては腹です。スズメバチ・アシナガバチ・ミツバチを含む細腰亜目にくびれがあるのは、前伸腹節が細いためです。
前伸腹節の側面に気門という息をするための器官があります。肺にあたる器官はなく、気門から取り込んだ酸素がは気管を通して全身に送られます。二酸化炭素の排出も気門からです。
腹柄(ふくへい)

腹柄は前伸腹節と腹部をつなぐ部分です。
細腰亜目の腹柄は極めて細いため、固形物は通りません。成虫が甘い汁のみを食べるのはこれが理由です。
左図のジガバチのように、腹柄が長い種類もいます。
腹部(膨腹部)

一般的に蜂の腹部と言うときは、丸みのある膨腹部(ぼうふくぶ)を指します。膨腹部はいくつかの節に分かれており、胸に近い方から順に「腹部第1背板(はいばん、せいた)」「腹部第2背板」などと表記します。節の数はオスが7節、メスが6節です。
メスの腹部先端には毒針や生殖腔があり、オスには交尾器があります。以下で解説します。
毒針と毒嚢
毒針を持つ蜂の種類では、メスの腹部先端(お尻)から毒針が出ます。毒針は産卵管が進化したものなので、オス蜂や産卵管を使用する種類の蜂(寄生蜂やハバチ)は持っていません。
毒針には毒をためておく袋(毒嚢)がつながっており、毒嚢は毒腺で体とつながっています。なお、ミツバチは毒針を刺すと毒嚢ごと抜けます。内臓が抜けるということなので、ミツバチは毒針を刺すと死んでしまいます。
交尾器
オスには毒針がなく、二股にわかれた形状の交尾器があります。蜂の交尾はメスの腹部先端にある生殖腔にオスが交尾器を挿入するというものです。
ミツバチのオスは交尾に成功すると、体液を送り出すための圧力によって交尾器が破裂するので死亡します。
また、交尾器には基本的には攻撃力がありませんが、ドロバチの一部はトゲのような交尾器をもっており、外敵を突き刺すこともあるようです。また、スズメバチは威嚇として刺すような仕草をすることもあります。
スズメバチのオスについては以下でも詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。
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蜂の成長過程における体の変化

蜂は卵から孵化すると幼虫になり、その後、蛹化(ようか)してから成虫になります。
幼虫は芋虫のようなもので、手足のない体と口しかありません。口の形状も成虫とは大きく異なっています。また、幼虫の頃は固形物を食べられるのも特徴です。
蛹化すると徐々に成虫の体に近づいていきます。幼虫と同じ乳白色の色のまま目や触角の形ができ始め、その後は目の色が成虫に近づきます。さらに外殻や毛が整えば、羽化のときです。
なお、スズメバチの蛹は全身を繭でくるむようなものではありません。1匹ずつ入っている育房室の入口に糸を履き、蓋をするという方法です。以下の記事では、スズメバチが羽化するまでの工程を解説しているので、ぜひご覧ください。
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蜂の体の仕組みはシステマティック
蜂の体はムダのない、機能美ともいえるような仕組みと構造です。前翅に連動して開く後翅、噛む対象にあわせて発達した顎などは見事といえます。また、粘度の低い蜜は吸引、粘度の高い蜜はなめとるなど、シーンに応じた使い分けもスムーズです。
一方で、ミツバチについては毒針や交尾器の使用で死ぬという、不条理な仕組みも持ち合わせています。なぜそこが進化しなかったのかはわからなかったものの、種全体でみれば合理的な理由があるのかもしれません。
蜂の種類によっては近づくだけでも危険なので注意が必要ですが、安全に観察できる蜂であれば、これを機に体の部位に注目してみましょう。

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