多くの蜂は樹上・茂み・軒下・屋根裏などに営巣しますが、一部の蜂は土の中に巣を作ります。土の中に営巣する蜂の性格はおだやかな傾向がありますが、中には極めて危険な種類もいるため注意が必要です。また、おだやかな性格の蜂の巣でも、気づかずに踏み抜けば、大群で攻撃してくる恐れがあります。
本記事では、日本に住む蜂の中で土の中に営巣するものをピックアップしています。後半では土の中の巣の見つけ方や駆除方法も解説するので、ぜひ参考にしてください。
土の中に巣を作る蜂の種類

土の中に巣を作る蜂の種類は、主に次のとおりです。
- スズメバチ科スズメバチ亜科の一部
- ツチバチ科ツチバチ亜科
- アナバチ科の一部
- コシブトハナバチ
- マルハナバチ
1.スズメバチ科スズメバチ亜科の一部
スズメバチの多くは樹上や木の洞、屋根裏、床下などに営巣しますが、一部は土の中を好んで営巣します。
1-1.オオスズメバチ

| 分類 | スズメバチ科スズメバチ亜科スズメバチ属 |
|---|---|
| 和名 | オオスズメバチ |
| 学名 | Vespa mandarinia |
| 体長 | 27~37mm(女王蜂は40~55mm) |
| 見た目の特徴 | オレンジと黒の縞模様 一般的なスズメバチより大きい 頭楯と顎のつなぎ目に2つの突起 |
| 性格 | 極めて攻撃的 |
| 分布 | 北海道、本州、四国、九州 |
オオスズメバチは基本的には土の中に営巣するため、外から見えることはほとんどありません。5月頃に女王蜂が単体で営巣を開始し、6~7月に働き蜂が羽化すると巣の規模が大きくなります。大きくなった巣はマーブル模様・貝殻模様の外殻を持つ層状です。最盛期では直径が50cmを超えるものも少なくありません。
1-2.ヒメスズメバチ

| 分類 | スズメバチ科スズメバチ亜科スズメバチ属 |
|---|---|
| 和名 | ヒメスズメバチ |
| 学名 | Vespa ducalis |
| 体長 | 24~37mm |
| 見た目の特徴 | オレンジと黒の縞模様 お尻の先端が黒い 大きい |
| 性格 | 比較的おだやか |
| 分布 | 四国、九州、佐渡島、屋久島など |
釣り鐘型あるいは、きのこの笠のような形の巣を作ります。波模様で外皮が薄く、とても小さなサイズです。閉鎖的な場所を好むため、屋根裏や床下、木のうろの中などを巣作り場所に選びます。土の中に巣を作ることもあるため、気づかずに踏み抜いてしまう危険がある点では危険です。
1-3.クロスズメバチ

| 分類 | スズメバチ科スズメバチ亜科クロスズメバチ属 |
|---|---|
| 和名 | クロスズメバチ |
| 学名 | Vespula flaviceps |
| 体長 | 10~14mm(女王蜂は15mm) |
| 見た目の特徴 | 全体的に黒く白の縞がある 複眼の内側が白い部分がえぐれていない 顔の中央の黒帯が下縁まで達していない |
| 性格 | おだやか |
| 分布 | 北海道、本州、四国、九州、佐渡島、奄美大島 |
蜂は小さいものの、巣は20~30cmとそれなりに大きくなります。平地の閉鎖的な場所を好み、屋根裏・壁の隙間・軒下・土の中など多様なところに巣を作るのも特徴です。巣の外皮は薄い波模様で、形は釣り鐘型です。ピーク時には500~1,500匹が巣に住んでいます。
1-4.シダクロスズメバチ
| 分類 | スズメバチ科スズメバチ亜科クロスズメバチ属 |
|---|---|
| 和名 | シダクロスズメバチ |
| 学名 | Vespula shidai |
| 体長 | 10~14mm(女王蜂は15~19mm) |
| 見た目の特徴 | 全体的に黒く白の縞と点がある 複眼の内側の白い部分がえぐれている 顔の中央の黒帯が下縁まで達している |
| 性格 | おだやか |
| 分布 | 北海道、本州、四国、九州 |
基本的には土の中に巣を作ります。家族経営的な習性を持っており、次世代の女王蜂が巣を引き継ぐため、何世代もかけて巨大な巣を地下に作っている可能性があります。ただし、屋根裏や木のうろで巣を作った事例もあるため、必ず土の中というわけではありません。
1-5.ツヤクロスズメバチ
| 分類 | スズメバチ科スズメバチ亜科クロスズメバチ属 |
|---|---|
| 和名 | ツヤクロスズメバチ |
| 学名 | Vespula rufa |
| 体長 | 12~14mm(女王蜂は16~17mm) |
| 見た目の特徴 | 全体的に黒く白の縞がある 腹部の中央あたりに点線 |
| 性格 | おだやか |
| 分布 | 北海道、本州、四国 |
和紙に似た素材で直径15~25cmほどの巣を作ります。土の中がほとんどで、その他は壁の隙間、屋根裏などの閉鎖的な場所です。なお、ピーク時の巣は3層ほどになりますが、初期段階でヤドリスズメバチに乗っ取られると、新たな働き蜂が生まれないため、1層程度で終わります。
1-6.キオビクロスズメバチ

| 分類 | スズメバチ科スズメバチ亜科クロスズメバチ属 |
|---|---|
| 和名 | キオビクロスズメバチ |
| 学名 | Vespula vulgaris |
| 体長 | 10~18mm(女王蜂は18mm) |
| 見た目の特徴 | 小さい 黄色の帯が目立つ 頭と胸は黒 |
| 性格 | おだやか |
| 分布 | 北海道、本州、佐渡島 |
涼しい場所を好む蜂で、日本では東北や北海道などの山の中に住んでいます。土の中や木のうろを中心に巣を作るため、なかなか目にすることはできません。掘り起こした巣の全体像はフットボールに似ています。
その他のスズメバチ亜科を含めた国内の全17種は次の記事で紹介しています。ぜひご覧ください。

2.ツチバチ(ツチバチ科ツチバチ亜科)

| 分類 | ハチ目ツチバチ科ツチバチ亜科 |
|---|---|
| 学名 | Scoliidae |
| 体長 | 10~25mm |
| 見た目の特徴 | 全体的に黒い 腹部に黄色や白の模様が入っている種類もいる |
| 分布 | 北海道、本州、四国、九州、屋久島など (市街地以外のほぼ全域) |
| 生息地 | 平地、山地 |
| 性格 | おとなしい 単独行動が多い |
ツチバチはキオビツチバチなどのツチバチ亜科の総称です。基本的に黒い体で、ところどころに白や黄色の模様が入った種類が属しています。体の大きさにはバラツキがあり、1cmほどの小さいものから、2.5cmの比較的大きいものまで多様です。一見すると蜂には見えないタイプもいるため気づかないこともあるでしょう。
ツチバチ亜科の性格はおとなしく、集団で行動しない習性から、人への害はほとんどありません。刺激すれば刺されることはありますが、毒性が低いため冷静に対処できるでしょう。
3.アナバチ科の一部
日本に住むアナバチ科アナバチ亜科4種の内の2種とアナバチ科ジガバチ亜科の4種の内の3種が土の中に営巣します。
3-1.クロアナバチ

| 分類 | アナバチ科アナバチ亜科 |
|---|---|
| 和名 | クロアナバチ |
| 学名 | Sphex argentatus |
| 見られる時期 | 7~9月 |
| 体長 | 25~30mm |
| 見た目の特徴 | 全体的に黒い 羽は暗褐色 頭部に白い毛が生えている |
| 分布 | 北海道、本州、四国、九州、伊豆諸島、種子島、屋久島など |
| 幼虫のエサ | キリギリス ※成虫が狩ったもの |
| 成虫のエサ | 花の蜜 |
クロアナバチは土を掘って営巣するアナバチです。地下40~50cm程度まで掘り進め、奥の方に1~5つの育房室を作ります。なお、巣穴は1つだけですが、ダミーの穴を両脇に作るため巣穴が3つに見えます。
3-2.キンモウアナバチ
| 分類 | アナバチ科アナバチ亜科 |
|---|---|
| 和名 | キンモウアナバチ |
| 学名 | Sphex diabolicus flammitrichus |
| 見られる時期 | 7~10月 |
| 体長 | 28~32mm (日本最大のアナバチ) |
| 見た目の特徴 | 全体的に黒い 頭楯と胸に金色の毛が生えている |
| 分布 | 本州、四国、九州、奄美大島など |
| 幼虫のエサ | ツユムシ類、クダマキモドキ ※成虫が狩ったもの |
| 成虫のエサ | 花の蜜、花粉 |
キンモウという名前のとおり、金色の毛が目立つアナバチです。土の中に60cmほどの深さの巣を作ります。同じ場所に大量発生することがありますが、自分が狩ったエサ以外には興味がないようです。
3-3.フジジガバチ
| 分類 | アナバチ科ジガバチ亜科 |
|---|---|
| 和名 | フジジガバチ |
| 学名 | Ammophila clavus |
| 見られる時期 | 5~9月 |
| 体長 | 25~30mm |
| 見た目の特徴 | 全体的に黒い メスは脚と腹が赤褐色 |
| 分布 | 本州、九州 |
| 巣の場所 | 土の中 |
| 幼虫のエサ | 蛾や蝶の幼虫 ※成虫が狩ったもの |
| 成虫のエサ | 花の蜜、虫 |
地面に穴を掘るアナバチで、腹と脚の赤褐色が特徴です。アジアからオーストラリアまで広範囲に分布していますが、日本においては希少種で準絶滅危惧に指定されています。
3-4.タイワンジガバチ※フジジガバチの亜種
| 分類 | アナバチ科ジガバチ亜科 |
|---|---|
| 和名 | タイワンジガバチ |
| 学名 | Ammophila clavus formosana |
| 見られる時期 | 5~9月 |
| 体長 | 20~30mm |
| 見た目の特徴 | 全体的に黒い メスは脚と腹が赤褐色 |
| 分布 | 南西諸島(沖縄島以南) |
| 幼虫のエサ | 蛾や蝶の幼虫 ※成虫が狩ったもの |
| 成虫のエサ | 花の蜜、虫 |
フジジガバチの琉球亜種です。基亜種のフジジガバチと見た目や特性にほとんど差はなく、生息地が主な違いといえます。
3-5.サトジガバチ

| 分類 | アナバチ科ジガバチ亜科 |
|---|---|
| 和名 | サトジガバチ |
| 学名 | Ammophila vagabunda |
| 見られる時期 | 5~9月 |
| 体長 | 10~25mm |
| 見た目の特徴 | 全体的に黒い 腹が細く赤い |
| 分布 | 北海道、本州、四国、九州、対馬、屋久島、種子島、口永良部縞 |
| 幼虫のエサ | 蛾や蝶の幼虫 ※成虫が狩ったもの |
| 成虫のエサ | 花の蜜、虫 |
ミカドジガバチとそっくりな見た目ですが、よく観察すると背板の末端がやや太いという特徴があります。また、ミカドジガバチが木の孔などに営巣するのに対し、サトジガバチは土の中に営巣します。
ミカドジガバチを含め、日本に生息するアナバチ10種の詳細は次の記事で紹介しています。ぜひご覧ください。

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4.コシブトハナバチ

| 種類 | 見られる時期 | 分布 |
|---|---|---|
| アオスジコシブトハナバチ | 4~11月 | 南西諸島 |
| スジボソフトハナバチ | 5~10月 | 本州、四国、九州、対馬、南西諸島 |
| ミナミスジボソフトハナバチ | 不明 | 沖縄島、石垣島、西表島 |
| ケブカコシブトハナバチ | 4~6月 | 本州、四国、九州、対馬 |
| シロスジコシブトハナバチ | 8~9月 | 本州、四国、九州 |
コシブトハナバチはハチ目ミツバチ科コシブトハナバチ亜科(Anthophorini)に分類される蜂です。腰のくびれが目立たず太いことが主な特徴ですが、サイズ自体は小さく11~15mmほどしかありません。
エサは花蜜と花粉で、幼虫のときは成虫が花蜜と花粉を混ぜて作った花粉団子を食べます。花粉を集めるために、ふわふわの毛が生えているのもコシブトハナバチ共通の特徴です。巣は地中にあり、液体状の花粉蜜を蓄えて産卵します。詳しくは次の記事をご覧ください。

5.マルハナバチ

| 種類 | 見られる時期 | 分布 |
|---|---|---|
| トラマルハナバチ | 4月下旬~10月 | 日本に広く分布 |
| コマルハナバチ | 3~7月 | 日本に広く分布 |
| クロマルハナバチ | 4~10月 | 本州 |
| オオマルハナバチ | 4月中旬~10月 | 日本に広く分布 |
| ミヤママルハナバチ | 5~10月 | 標高の高い場所、北海道 |
| ヒメマルハナバチ | 5~10月 | 標高の高い場所 |
| ニセハイイロマルハナバチ | 5月下旬~10月 | 北海道、東北 |
| ハイイロマルハナバチ | 5月下旬~10月 | 北海道、本州の一部 |
| ニッポンヤドリマルハナバチ | 6~9月 | 本州の一部 |
| ウスリーマルハナバチ | 5~10月 | 本州の一部 |
| ナガマルハナバチ | 5月下旬~9月 | 本州の一部 |
| エゾナガマルハナバチ | 6~9月 | 北海道 |
| シュレンクマルハナバチ | 5月中旬~9月 | 北海道 |
| アカマルハナバチ | 4月中旬~8月 | 北海道 |
| ノサップマルハナバチ | 6~9月 | 北海道 |
| セイヨウオオマルハナバチ | 5~10月 | 北海道、本州 |
ハチ目ミツバチ科ミツバチ亜科マルハナバチ属に分類される、ふわふわの毛が特徴的な蜂です。ネズミが開けた穴などを活用し、地中で営巣します。一般的なミツバチと同じように花蜜や花粉を食べ、性格はおだやかです。人間に対する害はほとんどありません。詳しくは次の記事をご覧ください。

土の中の蜂の巣の見つけ方

土の中に巣を作る蜂はほとんどが自然の環境を好むため、林や森の中に棲んでいます。地上の小さな巣穴以外は見えないことが多いため、プロ・経験者でない限りみつけ出すのは困難です。また、近づくには防護服の着用が欠かせません。これらの前提をふまえた上での見つけ方を解説します。
狩りや巣材を集めた蜂、あるいは日没後の蜂は帰巣するため、行動を追跡すれば巣の場所を特定できる可能性があります。蜂から3m以上の距離を保ちながら追跡してみましょう。クロスズメバチ・シダクロスズメバチに関しては、地蜂追い・スガリ追いと呼ばれる、蜂に白い札を持たせて追跡する方法もあります。
蜂を見失った場合、近くに巣がある可能性があります。周辺の地面をよく観察し、巣の出入口となる穴を探しましょう。蜂の出入りがあれば、その下に巣が広がっています。誤って巣を踏み抜かないように、スマートフォンのカメラのズーム機能などで巣穴を探すのがおすすめです。
NG事項
オオスズメバチなどの危険な蜂を追いかけるのはNGです。追いかけることが刺激となり、蜂が攻撃態勢に入る可能性があります。気づかぬ内に巣の周辺に入ってしまうと、大群が押し寄せてくる恐れもあるためハイリスクです。蜂の種類を見極められないときも、速やかに離れることをおすすめします。
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土の中の蜂の巣の駆除方法

ここでは、土の中の蜂の巣を駆除するために必要なものと手順を解説します。なお、大前提としてオオスズメバチを自分で駆除するのは厳禁です。巣の規模や蜂の数に関係なく、プロ以外が手を出して良い蜂の種類ではありません。比較的おとなしい蜂の種類のみ、セルフ駆除を検討しましょう。
土の中の蜂の巣駆除に必要なもの
- 防護服
- 革手袋
- スプレー式の蜂用殺虫剤(600ml缶2本)
- 燻煙式の蜂用殺虫剤(60~120g缶2個)
- 3m前後の丈夫な棒
- 針金
- スコップ
- 厚手で丈夫なゴミ袋
防護服・革手袋・スプレーは蜂に襲われたときの対策として必要なものです。防護服を用意できないときは、手に入りやすいもので代用する方法もあります。詳しくは次の記事をご覧ください。

土の中の蜂の巣駆除の手順
棒に針金を巻きつけて燻煙剤の缶を固定すれば、巣から距離を保ったまま駆除できる装置が完成します。
燻煙剤に点火し、煙が出ることを確認します。
周辺を飛び交う蜂を弱らせるための手順です。
巣内に潜んでいる蜂を一掃するために、燻煙剤を巣穴に突っ込みます。煙が立ち上らなくなるまで突っ込んだ状態をキープしましょう。
煙をかいくぐって向かってくる蜂がいれば、蜂用の殺虫スプレーで対処します。瞬間的に吹きかけただけでは死なないので、蜂が落ちて動かなくなるまで噴射しましょう。
蜂が出てくる様子がみられなければ、巣内の蜂は全滅したものと考えられます。
狩りや巣材集めに出かけていた蜂が戻ってこれないように、巣穴(出入口)を塞ぐ作業です。埋めるときの土の厚さは10cmが目安です。埋めたところに残存性のある蜂用殺虫スプレーを散布しておけば、戻ってきた蜂にも効果があります。
駆除をおこなった当日では、まだ戻ってくる蜂がいる可能性があるため、巣の撤去は後日おこないましょう。スコップで掘り起こし、素早くゴミ袋に格納してください。念のために蜂用殺虫スプレーを吹きかけ、ゴミ袋の口を閉じれば完了です。捨てるときは自治体のゴミの区分を確認してください。
土の中の蜂の巣には近づかないのが一番
森や林などの自然環境で巣を作っている蜂には関わらないのが一番です。土の中に営巣する蜂はおだやかな種類が大半ですが、オオスズメバチの可能性もあるためリスクは高いといえます。見極めるために近づくのも危険です。可能であれば放っておきましょう。
一方、自宅の庭に巣を作られるなど、放置したときに実害がある場合は、駆除を検討することをおすすめします。離れた場所から蜂を観察し、おだやかな蜂であると判断できれば、自分でも駆除できる可能性があります。本記事の駆除方法を参考にしてください。
ただし、見極められないときなどオオスズメバチの可能性が少しでもある場合は、プロである蜂駆除の専門業者に相談することをおすすめします。
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