地蜂(ジバチ)は正式名称ではなく、黒いボディに白の模様が入った小さな蜂の俗称です。全国的に分布しているため、耳にしたことがある人もいるでしょう。
本記事では、地蜂の正体と特性、日本における食文化との関わりを詳しく解説します。地蜂について詳しく知りたい人は、ぜひ参考にしてください。
地蜂はクロスズメバチ・シダクロスズメバチのこと

地蜂はハチ目スズメバチ科スズメバチ亜科クロスズメバチ属のクロスズメバチとシダクロスズメバチの俗称です。地蜂以外に、ヘボやスガレ、スガリとも呼ばれます。
クロスズメバチの基本情報
| 和名 | クロスズメバチ |
|---|---|
| 学名 | Vespula flaviceps |
| 体長 | 10~14mm(女王蜂は15mm) |
| 見た目の特徴 | 全体的に黒く白の縞がある 複眼の内側が白い部分がえぐれていない 顔の中央の黒帯が下縁まで達していない |
| 性格 | おだやか |
| 分布 | 北海道、本州、四国、九州、佐渡島、奄美大島 |
| 巣の場所 | 屋根裏・壁の隙間・軒下・土の中 |
黒いボディに白の模様が映える蜂です。性格はおだやかで、巣の近くを踏んだりしなければ襲ってくることはほとんどありません。毒量が少なく毒性も弱い種類です。ただし、他の蜂と同様にアナフィラキシーショックのリスクはあります。
実害はほとんどありませんが、庭や民家の中に営巣されると厄介です。自然界を好むため稀ではありますが、屋根裏や壁の隙間、軒下などで営巣を拡大されないように気を付けましょう。巣の外皮は薄い波模様で、形は釣り鐘型です。
シダクロスズメバチの基本情報
| 和名 | シダクロスズメバチ |
|---|---|
| 学名 | Vespula shidai |
| 体長 | 10~14mm(女王蜂は15~19mm) |
| 見た目の特徴 | 全体的に黒く白の縞と点がある 複眼の内側の白い部分がえぐれている 顔の中央の黒帯が下縁まで達している |
| 性格 | おだやか |
| 分布 | 北海道、本州、四国、九州 |
| 巣の場所 | 土の中 |
クロスズメバチ同様に、性格はおだやかで、巣の近くを踏んだりしなければ襲ってくることはほとんどありません。毒量が少なく毒性も弱い種類です。ただし、他の蜂と同様にアナフィラキシーショックのリスクはあります。
見た目はクロスズメバチよりも黒の比率が高いものの、極めて似ています。違いの詳細は次の項目で解説します。
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クロスズメバチとシダクロスズメバチの違い
見た目が極めて似ているクロスズメバチとシダクロスズメバチの違いを、模様と巣の場所にフォーカスして解説します。
模様の違い


| 種類 | クロスズメバチ | シダクロスズメバチ |
|---|---|---|
| 全体の模様 | 全体的に黒く白の縞がある | 全体的に黒く白の縞と点がある |
| 複眼周辺の模様 | 白い部分がえぐれていない | 白い部分がえぐれている |
| 顔の中央の黒帯 | 下縁(口)まで達していない | 下縁(口)まで達している |
体長は同じですが、模様の入り方に違いがあります。クロスズメバチは白の縞模様ですが、クロスズメバチには白の縞模様に加えて白の点も入っています。また、クロスズメバチと比べると、顔はシダクロスズメバチの方が黒の比率が高いという点でも異なります。
巣の場所の違い
クロスズメバチは屋根裏・壁の隙間・軒下・土の中など、閉鎖的であれば幅広い場所に営巣します。一方、シダクロスズメバチは基本的に土の中です。ただし、屋根裏や木のうろで巣を作った事例もあるため、必ずしも土の中というわけではないようです。
また、クロスズメバチが平地でも広く生息するのに対し、シダクロスズメバチは北海道以外では山地を好むという点でも違いがあります。
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地蜂(クロスズメバチ・シダクロスズメバチ)の1年間

地蜂の活動期間は4~12月で、1~3月は冬眠します。1年間の活動内容は次のとおりです。
| 月 | 活動 |
|---|---|
| 1~3月 | 女王蜂が土の中で冬眠 |
| 4~5月 | 女王蜂が巣作り、産卵 |
| 6月 | 最初に生まれた働き蜂が成虫になる |
| 6~9月 | 働き蜂が活発に働く。数が増える |
| 10~12月 | 新女王蜂が羽化する |
基本的には秋~冬に生まれる新女王蜂だけが越冬します。暖冬でない限り、働き蜂は冬を乗り切れません。巣を自力で安全に駆除するなら、働き蜂が少ない冬を狙うのがおすすめです。
ただし、地蜂は何世代にもわたって同じ巣を利用するため、春以降で再び働き蜂が増えます。また、年月が経過するほどに巣が大きくなる傾向があります。駆除の必要がある場合は早めに対処しましょう。なお、土の中の蜂の巣の駆除するのはプロに任せるのがおすすめですが、自分で駆除を検討したい場合は次の記事をご覧ください。

地蜂は珍味として食べられている

おだやかな性格で捕獲しやすいこともあってか、山間部では地蜂が貴重なタンパク源として食されていた歴史があるようです。現代でも、信州(長野県)を中心に珍味として愛されています。
地蜂追い・スガリ追い
巣が最大化する夏から秋にかけて、地蜂の巣を見つけるための地蜂追い(スガリ追い)がおこなわれます。次のような手順でおこないます。
肉・魚・イカなどの強い匂いがするエサを、地蜂が住んでいそうな山や林に吊るします。
STEP1のエサを齧っている地蜂に、目印を持たせます。目印は、白の布や札を取り付けた小さなエサ(糸目)です。ピンセットなどで地蜂に近づけて抱えさせます。ちょうどいいサイズのエサがもらえた地蜂はエサを齧る必要がなくなるので、糸目ごと抱えて帰巣します。
糸目の白は自然の中でも目立つため、これを頼りに山や林に分け入って追跡します。巣穴に入っていく様子を確認し、巣お場所を特定します。
地蜂の行動を抑える(仮死状態にする)ために、人間には害のない地蜂追い用の煙を焚きます。
土や木の洞などを掘って巣を丸ごと持ち帰ります。その後は幼虫を採取したり、養蜂したりして食用に加工します。
地蜂の養蜂
掘り起こした巣を木箱に移して、養蜂をおこなうこともあります。養蜂によって巣を肥大化させ、蜂の子を多くとれるようにするためです。地蜂が効率よく活動できるように、木箱の周辺に生肉や魚、砂糖水などのエサを置いて育てます。
巣が最大化したときの育房数は8,000~12,000房です。上手く育てられれば、数千匹まで増やせる可能性があります。
佃煮や炊き込みご飯に
珍味として食べられるのは主に蜂の子(幼虫)ですが、蛹(さなぎ)や成虫を食べることもあります。醤油・砂糖・みりんで味付けした佃煮にしたり、炒ってから塩を振ったりするのが一般的です。佃煮をご飯に混ぜたヘボ飯は郷土料理として愛されています。
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地蜂は養蜂できるほど害の少ない蜂
地蜂はクロスズメバチとシダクロスズメバチの俗称であることがわかりました。どちらもおだやかな性格で、積極的に人を襲うことはありません。巣が通行の邪魔になる場所にないのであれば、放っておいて問題ないといえるでしょう。
巣を駆除する必要がある場合は、夏~秋であれば蜂駆除の専門業者に依頼するのがおすすめです。蜂の巣がピークを迎えていれば、数千匹の働き蜂に攻撃される恐れがあります。一方、冬であれば働き蜂がほとんどいないため、自分で駆除をおこなっても比較的安全です。
なお、珍味の原料として捕獲・採取したい場合は、地元の経験者に相談しましょう。蜂の巣のピークを狙って作業する必要があるため、ノウハウを持たずに取り組むのは危険です。また、捕獲後に食べることが前提となるため、殺虫の薬剤は使えません。蜂追いの方法を含めて、経験者に相談することをおすすめします。
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