地蜂(ジバチ)は正式名称ではなく、黒いボディに白の模様が入った小さな蜂の俗称です。全国的に分布しているため、耳にしたことがある人もいるでしょう。
本記事では、地蜂の正体と特性、日本における食文化との関わりを詳しく解説します。地蜂について詳しく知りたい人は、ぜひ参考にしてください。
地蜂はクロスズメバチ・シダクロスズメバチのこと
※写真はイメージです
地蜂はハチ目スズメバチ科スズメバチ亜科クロスズメバチ属のクロスズメバチとシダクロスズメバチの俗称です。地蜂以外に、ヘボやスガレ、スガリとも呼ばれます。
比較項目 | クロスズメバチ | シダクロスズメバチ |
体長 | 1~1.4cm(女王蜂は1.5cm) | 1~1.4cm(女王蜂は1.5~1.9cm) |
全体の模様 | 全体的に黒く白の縞がある | 全体的に黒く白の縞と点がある |
複眼の内側 | 白い部分がえぐれていない | 白い部分がえぐれている |
顔の中央の黒帯 | 下縁まで達していない | 下縁まで達している |
性格 | おだやか | おだやか |
毒性 | 弱い | 弱い |
巣の場所 | 閉鎖的な場所(屋根裏・壁の隙間・軒下・土の中など) | 基本的には土の中 |
クロスズメバチ・シダクロスズメバチの見た目
クロスズメバチとシダクロスズメバチは、体長・色・模様ともによく似ているため、飛んでいる地蜂を遠目から見分けるのは困難です。
捕獲してじっくり観察すれば、複眼の内側の白い部分と顔の中央の黒帯に微妙な違いがあることがわかります。しかし、個体差によって上記の特徴に当てはまらない場合もあります。
クロスズメバチ・シダクロスズメバチの巣
巣の場所は、クロスズメバチが比較的幅広い場所であるのに対し、シダクロスズメバチは基本的に土の中です。しかし、シダクロスズメバチが屋根裏に巣を作った事例もあるため、巣の場所でも一概に判断できません。
クロスズメバチ・シダクロスズメバチの性格
クロスズメバチ、シダクロスズメバチともに攻撃性は低く毒性も弱いため、危険性の判断においては見誤っても問題はないといえるでしょう。巣を攻撃したり、踏み抜いたりしない限り、襲ってくることはほとんどありません。
地蜂の一年間
地蜂の活動期間は4~12月で、1~3月は冬眠します。一年間の活動内容は次のとおりです。
月 | 活動 |
1~3月 | 女王蜂が土の中で冬眠 |
4~5月 | 女王蜂が巣作り、産卵 |
6月 | 最初に生まれた働き蜂が成虫になる |
6~9月 | 働き蜂が活発に働く。数が増える |
10~12月 | 新女王蜂が羽化する |
基本的には秋~冬に生まれる新女王蜂だけが越冬します。暖冬でない限り、働き蜂は冬を乗り切れません。巣を自力で安全に駆除するなら、働き蜂が少ない冬を狙うのがおすすめです。
ただし、地蜂は何世代にもわたって同じ巣を利用するため、春以降で再び働き蜂が増えます。また、年月が経過するほどに巣が大きくなる傾向があります。
地蜂は珍味として食べられている
おだやかな性格で捕獲しやすいこともあってか、山間部では地蜂が貴重なたんぱく質として食されていたようです。現代でも、信州(長野県)を中心に珍味として愛されています。
地蜂追い・スガリ追い
巣が最大化する夏から秋にかけて、地蜂の巣を見つけるための地蜂追い(スガリ追い)がおこなわれます。次のような手順でおこないます。
- エサをしかける
- エサに白い目印をつけて地蜂に持たせる
- 目印を追いかけて巣にたどり着く
- 巣に向けて煙を炊く
- 巣を掘り起こす
白の布や札をとりつけた「糸目」と呼ばれる目印をエサにつけて、地蜂に抱えさせます。白は木々や草の中でも目立つため、追いかけやすくなるからです。巣を発見したら、食べても問題ない煙を炊いて地蜂を仮死状態にし、巣を掘り起こします。
地蜂の養蜂
掘り起こした巣を木箱に移して、養蜂をおこなうこともあります。養蜂によって巣を肥大化させ、蜂の子を多くとれるようにするためです。地蜂が効率よく活動できるように、木箱の周辺に生肉や魚、砂糖水などのエサを置いて育てます。
巣が最大化したときの育房数は8,000~12,000房です。上手く育てられれば、数千匹まで増やせる可能性があります。
佃煮や炊き込みご飯に
珍味として食べられるのは主に蜂の子(幼虫)ですが、蛹(さなぎ)や成虫を食べることもあります。
醤油・砂糖・みりんで味付けした佃煮にしたり、炒ってから塩を振ったりするのが一般的です。佃煮をご飯に混ぜたヘボ飯は郷土料理として愛されています。
地蜂は養蜂できるほど害の少ない蜂
地蜂はクロスズメバチとシダクロスズメバチの俗称であることがわかりました。どちらもおだやかな性格で、積極的に人を襲うことはありません。巣が通行の邪魔になる場所にないのであれば、放っておいて問題ないといえるでしょう。
巣を駆除する必要がある場合は、夏~秋であれば蜂駆除の専門業者に依頼するのがおすすめです。蜂の巣がピークを迎えていれば、数千匹の働き蜂に攻撃される恐れがあります。一方、冬であれば働き蜂がほとんどいないため、自分で駆除をおこなっても比較的安全です。
なお、珍味の原料として捕獲・採取したい場合は、地元の経験者に相談しましょう。蜂の巣のピークを狙って作業する必要があるため、ノウハウを持たずに取り組むのは危険です。また、捕獲後に食べることが前提となるため、殺虫の薬剤は使えません。蜂追いの方法を含めて、経験者に相談することをおすすめします。