一般的に「ミツバチ」というときは、ミツバチ科ミツバチ亜科ミツバチ族を指します。蜂蜜を集めるほか、農業や園芸の受粉を助けるなど、人間にとって有益な習性を持つ蜂です。小さく可愛らしい見た目とおだやかな性格という点でも親しまれてします。しかし、意外と詳しいことは知らないという人も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、日本に生息する2種類のミツバチ、ニホンミツバチとセイヨウミツバチの特徴を詳しく解説します。違いの比較表もあるので、ミツバチをより深く知りたい人はぜひご覧ください。
日本に生息するミツバチは2種類

一般的に「ミツバチ」と呼ばれるのは、ミツバチ科ミツバチ亜科ミツバチ族に属する蜂です。同じミツバチ科でも、クマバチやコシブトハナバチ、マルハナバチなどに区分されます。日本に住むミツバチ族はニホンミツバチとセイヨウミツバチの2種類です。
ニホンミツバチの基本情報

| 和名 | ニホンミツバチ |
|---|---|
| 学名 | Apis cerana japonica |
| 体長 | 働き蜂:10~11mm オス蜂:13mm 女王蜂:17~19mm |
| 見た目の特徴 | 全体的に黒っぽい 白に近い黄色の縞がある 胸にふわふわの毛が生えている |
| 性格 | おだやか |
ニホンミツバチは日本に住む野生のミツバチです。絶滅危惧種ではありませんが、個体数の現象が懸念されています。
セイヨウミツバチの基本情報

| 和名 | セイヨウミツバチ |
|---|---|
| 学名 | Apis mellifera |
| 体長 | 働き蜂:12~14mm オス蜂:15~17mm 女王蜂:15~20mm |
| 見た目の特徴 | 全体的に黄色い 黒の縞がある 胸にふわふわの毛が生えている |
| 性格 | おだやか |
セイヨウミツバチは養蜂のために海外から輸入された外来生物です。野生としては生息していません。
ニホンミツバチとセイヨウミツバチの共通点

ニホンミツバチとセイヨウミツバチの共通点を、食べ物・巣の特徴・活動時期・毒針の使い方に分けて解説します。
食べ物
| 孵化~3日間 | ローヤルゼリー |
|---|---|
| 4日目以降 | 花粉団子 |
| 成虫 | 花蜜・花粉・蜂蜜・蜂パン |
孵化から3日間は、働き蜂が花粉を体内で分解合成したローヤルゼリーを与えられて育ちます。乳白色のクリーム状のもので、たんぱく質・ミネラル・ビタミンなどの栄養が豊富なエサです。4日目からは、働き蜂が花蜜と花粉を混ぜて作った花粉団子を食べるようになります。
成虫になると花蜜と花粉、あるいはそれらを加工した蜂蜜や蜂パンを食べます。他の昆虫を狩るなどの肉食性はありません。なお、女王蜂は生涯にわたってローヤルゼリーのみを食べます。
ミツバチを含めた、さまざまな蜂の食べ物の集め方や作り方は次の記事で詳しく解説しています。ぜひご覧ください。

巣の特徴
六角形のハニカム構造ををつなぎ合わせた、楕円形・板状の巣を形成します。六角形の穴の役割は、育房室と蜂蜜の貯蔵用です。営巣期間が長くなると巣板が増設され、規模が拡大します。
営巣では雨風と直射日光を遮れる閉鎖的な場所を好み、自然界では木の洞や岩の隙間などが中心です。野生のニホンミツバチは民家の屋根裏や床下に営巣することもあります。セイヨウミツバチは養蜂箱の中です。
活動時期
アシナガバチやスズメバチとは違い、ミツバチは女王蜂だけでなく働き蜂も越冬できます。12月から翌年2月の寒い時期は蓄えた蜂蜜などを食べながら巣にこもり、温かくなる3月から採蜜に出かけ始めます。活動の本格化と新女王蜂の誕生は5月です。
6月には働き蜂の数が3倍になり、分蜂シーズンを迎えます。ミツバチの大群をみかけたら、巣分かれ(引っ越し)中の新女王蜂の群れと見て間違いありません。その後、旧女王蜂と新女王蜂は別の群れとして生活を始めます。
7~8月の暑い時期は活動が低下し、出かけるのは涼しい夕方がメインです。9月に再度活発に採蜜をおこないますが、10月には冬支度を始めるスケジュールです。
毒針の使い方
どちらも毒針を出すと内臓も一緒に抜けて死亡するため、自滅覚悟で攻撃しなければならない状況以外では毒針を使いません。また、毒針を出すときも攻撃のためというよりは、毒針とともに放出される警報フェロモンを出すことがメインです。外敵に気づいた働き蜂1匹が自分を犠牲にして毒針を出し、フェロモンで仲間を呼びます。
ニホンミツバチとセイヨウミツバチの違い

ここでは、ニホンミツバチとセイヨウミツバチの違いを、見た目・性格・防衛手段・集める花蜜に分けて解説します。
見た目の違い
| 和名 | ニホンミツバチ | セイヨウミツバチ |
|---|---|---|
| 画像 | ![]() | ![]() |
| 体長 | 働き蜂:10~11mm オス蜂:13mm 女王蜂:17~19mm | 働き蜂:12~14mm オス蜂:15~17mm 女王蜂:15~20mm |
| 色 | 白と黒 | 黄色と黒 |
ニホンミツバチよりもセイヨウミツバチの方がやや大きいサイズです。また、ニホンミツバチは白(乳白色)と黒の縞模様であるのに対し、セイヨウミツバチは黄色と黒の縞模様で、一般的なミツバチのイメージ通りの姿をしています。
性格の違い
どちらもおだやかな性格で人に対する攻撃性はほとんどありませんが、どちらかといえばセイヨウミツバチの方が好戦的です。ニホンミツバチとセイヨウミツバチが同じ花に訪れた場合、セイヨウミツバチは縄張りを主張し、ニホンミツバチに対して体当たりをすることがあります。
防衛手段の違い
ミツバチの巣はスズメバチに襲われることがあります。1匹同士の戦いではスズメバチに敵わないため、集団で防衛するのが特徴です。
ニホンミツバチの場合は、スズメバチに群がって蒸し殺す熱殺蜂球を用います。一方のセイヨウミツバチには熱殺蜂球のような必殺技はないものと考えられていましたが、近年の研究で窒息スクラムを用いる群れがいることがわかりました。ミツバチとスズメバチの攻防は次の記事で詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。

集める花蜜の違い
ニホンミツバチはさまざまな花から蜜を集めます。ニホンミツバチが集めた蜂蜜を販売するときの名称は「百花蜜」が一般的です。さまざまな花の蜂蜜という意味があります。
一方のセイヨウミツバチは養蜂されていることも理由のひとつですが、1種類の花から蜜を集める傾向があります。セイヨウミツバチが集めた蜂蜜を販売するときは、花の種類に応じて「アカシア蜂蜜」「れんげ蜂蜜」などの名称がつけられます。
営巣場所の好みの違い
セイヨウミツバチは人間が用意した巣箱でも定住しやすいため、養蜂に適しています。ある程度の環境変化も許容してくれるようです。
一方、ニホンミツバチは環境の変化に敏感で、短期間で引っ越しすることが多く養蜂には適していません。人間からみれば同じ環境でも、わずかな湿度や温度の変化、ダニやカビなどを不快に感じると別の場所を求めて出ていきます。
ミツバチは人間にとって有益な存在

ニホンミツバチ、セイヨウミツバチともに人間への害はほとんどありません。むしろ、蜂蜜を集めたり、農作物の受粉を助けたりと、人間にとってのメリットが多い蜂です。とくにニホンミツバチに関しては個体数の減少が懸念されているので、可能であれば放っておきましょう。
ただし、家の屋根裏などに巣を作られると、蜜の浸出などによって腐食するリスクがあるため注意が必要です。放置できない場所に巣があったり、巣が大きかったりするときは、蜂駆除業者に相談することをおすすめします。





