とっくり型の巣を作るのは、スズメバチまたはトックリバチです。スズメバチは攻撃的で数が増えるため、巣を放置すると危険です。一方、トックリバチは農業にとって益虫であるため、むやみに駆除するのはおすすめできません。
同じとっくり型でも、スズメバチの巣とトックリバチの巣では特徴が大きく異なります。この記事を参考に、蜂の種類を見分けて適切に対処しましょう。
逆とっくり型の巣はスズメバチの作り始め

コガタスズメバチやツマグロスズメバチの巣の初期段階は、とっくりを逆さまにしたような形です。4~5月に巣を作り始め、6月上旬頃まではとっくり型が多くみられます。
時期 | 巣の形 | 営巣担当 |
---|---|---|
4~6月上旬 | ![]() | 女王蜂 |
6月下旬~10月 | ![]() | 働き蜂 |
6月後半あたりから働き蜂が卵から孵り、営巣が本格化すると丸型に変化していくのが特徴です。コガタスズメバチやツマグロスズメバチは攻撃性・毒性の強いスズメバチ属の蜂で、繁殖すると危険性が高まります。初期段階で駆除するのがおすすめです。スズメバチの種類を詳しく知りたい人は、次の記事をご覧ください。


小さなとっくり型の巣はトックリバチ

トックリバチ属の蜂の巣は、とっくり型が完成形です。泥を固めて作られた巣で、大きいものでも4cmほどしかありません。ここでは、トックリバチの分類や特徴を詳しく解説します。
分類 | ハチ目スズメバチ科ドロバチ亜科トックリバチ属 |
---|---|
体長 | 15mm程度 |
見た目の特徴 | 小さい 胸が丸い 腹がくびれている 尻は膨らんでいる |
分布 | 本州・四国・九州(寒い地域を除く) |
性格 | おだやか |
幼虫のエサ | 芋虫、シャクトリムシ |
成虫のエサ | 花の蜜 |
トックリバチの分類と種類
トックリバチはドロバチ亜科トックリバチ属に属する蜂の総称です。日本でも寒い地域を除いて本州・四国・九州に広く分布しています。日本に生息するトックリバチの種類は次のとおりです。
- ミカドトックリバチ
- キボシトックリバチ
- キアシトックリバチ
- ムモントックリバチ
次の記事では、トックリバチ族を含むドロバチ亜科17種類を詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。

巣の特徴
トックリバチは集めた泥と唾液と練り合わせて、とっくり型の巣を作ります。営巣が完了すると幼虫のエサとなる昆虫を狩り、巣に入れて産卵します。産卵後は巣に蓋をして飛び去り、戻ってくることはありません。育児などをおこなわない、社会性のない蜂です。
卵から孵った幼虫は、成虫が巣に入れた昆虫を食べながら春を待ちます。春になる頃には成虫になり、蓋を破って飛び立つため、巣は空になります。
巣の大きさは1~2cmが中心で、大きいものでも4cmほどです。巣の周辺に成虫がいる期間は極めて短いため、蜂の巣には見えず、泥汚れと間違われることがあります。
性格
おだやかな性格で、巣を守る防衛本能もないため刺されることは稀です。単独行動なので集団で襲ってくる心配もありません。積極的に攻撃・刺激しない限り、刺されることはまずないといえるでしょう。
毒性
トックリバチは毒を持っていますが、芋虫などを麻痺させて捕食するための毒なので強くはありません。ただし、刺されればかゆみや痛みが生じることがあります。アナフィラキシーショックの可能性もゼロではないので、トックリバチを見つけても攻撃したり、刺激したりしないようにしましょう。
食性
トックリバチは芋虫を狩って幼虫のエサにするため、芋虫の食害に悩まされる農業や園芸においては益虫です。成虫になっても攻撃性はほとんどなく、食べるものは花の蜜なので放っておいても問題ありません。
とっくり型の向きと大きさで駆除するかを判断しよう
逆トックリ型の巣は、放置すると球形に変化するスズメバチの巣の可能性が高いと考えられます。初期の段階で対処できれば被害も少ないため、駆除を検討しましょう。
一方、とっくり型の巣の大きさが1~4cm程度で、泥汚れのような見た目であれば、トックリバチの巣と考えられます。トックリバチはおだやかな性格で、農業や園芸にとって益虫なので、放っておくことをおすすめします。