世界には多くの種類の蜂が存在します。特に巨大な蜂として知られるのが「ウォレスの巨大蜂」です。19世紀に博物学者アルフレッド・ラッセル・ウォレスによって発見され、一時は絶滅したと考えられていました。
しかし、2019年に再発見され、再び世界中の注目を集めています。本記事では、ウォレスの巨大蜂の特徴や生態、発見の歴史を紹介します。後半では、その他の大きな蜂も紹介しているので、ぜひご覧ください。
ウォレスの巨大蜂とは?

※写真は同属のハキリバチ
通称 | ウォレス・ジャイアント・ビー(ウォレスの巨大蜂) |
---|---|
学名 | Megachile pluto |
分類 | ミツバチ上科ハキリバチ科 |
体長 | 約40mm |
見た目の特徴 | 横幅が2.5インチ(約64mm) 大きく太い顎 全体的に黒い |
生息地 | インドネシアのモルッカ諸島 |
巣の場所 | シロアリの塚がある場所 |
巣材 | 樹脂・木の繊維 |
ウォレスの巨大蜂(Wallace’s Giant Bee)は通称で、学名はMegachile plutoです。体長(縦幅)は38mmで最大級ではありませんが、横幅(翼幅)が大きく約64mmもあり、腹が太いため、世界最大の蜂とされています。
分類はミツバチ上科ハキリバチ科で、大きな顎を持っているのが特徴です。ハキリバチは全般的に顎が目立ちますが、その中でもウォレスの巨大蜂はひときわ大きく太い顎を持っています。
営巣場所はシロアリの塚です。トンネルを巣穴として活用し、防水加工を施します。使用する防水材は大きな顎でこそぎとった樹脂と木の繊維を混ぜたものです。ねばつくため、シロアリの侵入防止にも役立つと考えられています。
\ 蜂の巣駆除のお問い合わせはこちらから /
ウォレスの巨大蜂の新発見と絶滅説の経緯

ウォレスの巨大蜂の新発見から絶滅説が囁かれるまでの経緯を紹介します。
1850年代に標本で確認
ウォレスの巨大蜂が初めて記録されたのは1859年でした。博物学・生物学者であり探検家でもあったアルフレッド・ラッセル・ウォレスがインドネシアで採集活動をしていたとき、現地住民が持ち込んだ標本の中に、ウォレスの巨大蜂がありました。ウォレスの観察記録の中では「クワガタムシのように巨大」と記されています。
1981年に生きた姿が確認される
ウォレスの記録は他の生物学者の興味の対象となりましたが、生きた姿が確認されたのはウォレスの記録から100年以上が経過した1981年です。発見したのは昆虫学者のアダム・メッサ―で、採集されたウォレスの巨大蜂は標本として持ち帰られます。その後、1984年に発表されたメッサ―の記録によって、次のような特徴や習性が示されました。
- メスの異常に長い下顎
- 顎と上唇で樹脂をこそぎとる
- 樹脂を塊にする
- 樹脂と木片で巣を要塞化する
- 比較的単独行動
1991年の発見以降確認されず絶滅説が囁かれる
1991年にはフランスの研究者ロッシュ・デスミエ・デ・シュノンが、ウォレスの巨大蜂の採集に成功します。採集したのは1匹ですが、現地では20~30匹を確認したということです。しかし、1991年の発見以降は新たな発見報告がなく、絶滅説が囁かれるようになりました。
\ 蜂の巣駆除のお問い合わせはこちらから /
2019年にウォレスの巨大蜂を再発見

1991年の発見から38年が経過した2019年1月に、ウォレスの巨大蜂が再発見されます。自然保護を目指すための国際的な調査隊による発見でした。生きた姿が写真とビデオに収められたのは初めてのことです。この発見により、次のようなことが確認されました。
- 体長は約4cm
- 横幅(翼幅)は2.5インチ(約6.4cm)
- クワガタムシのような大きな顎
- 深くゆったりした、うなるような羽音
- シロアリの巣の中に営巣する
- 食べ物は花蜜と花粉
なお、調査隊は採集したウォレスの巨大蜂の計測や観察をおこないましたが、個体数の減少を懸念し、標本にはせず野生に返しています。
絶滅から守るために詳細な場所は公開されていない

極めて珍しいウォレスの巨大蜂がコレクターの興味の対象になれば、密猟者に乱獲される恐れがあります。そこで、2019年に再発見した調査隊は発見場所を秘密にしました。その上で、インドネシア当局や地元住民と、ウォレスの巨大蜂の種を守る方法を話し合っています。
現在、ウォレスの巨大蜂は国際自然保護連合(IUCN)によって「危急種(Vulnerable)」に指定されています。絶滅の危機に瀕しているが、まだ生息が確認されている種に対する分類です。しかし、乱獲と売買を取り締まる法律はまだありません。
また、森林伐採や気候変動による生息地の減少が、存続を脅かす大きな要因となっています。今後の保護活動が、ウォレスの巨大蜂の未来を左右するでしょう。
\ 蜂の巣駆除のお問い合わせはこちらから /
ウォレスの巨大蜂以外の大きい蜂
世界には他にも大きい蜂が存在します。代表的な2種類の蜂を紹介します。
タランチュラホーク(Pepsis spp)

タランチュラホーク(Pepsis spp)はアメリカ国内最大の蜂です。体長は6cmほどで、その名の通り、タランチュラを獲物とします。地中に巣穴をつくるタランチュラを狙い、強力な毒針を打ち込んで捕獲するのが特徴です。毒で麻痺したタランチュラは巣穴に運ばれ、卵を産みつけられます。つまり、タランチュラは孵化した幼虫のための生き餌です。
なお、タランチュラホークは人間を好んで襲う性格ではありませんが、万が一刺されると強烈な痛みや発熱、水膨れが生じるとされています。
オオスズメバチ(Vespa mandarinia)

オオスズメバチは日本国内で最大・最強の蜂です。女王蜂の体長は4.5cm~5.5cmにも達し、働き蜂でも2.7~3.7cmと他の在来種とは一線を画す大きさを誇ります。マンダラトキシンという独自の神経毒を持つほど毒性は強力で、飛行力・攻撃力ともに高いため、近づくことすら危険な種類です。ミツバチを襲い、巣を壊滅させることもあります。
オオスズメバチについては次の記事で詳しく解説しています。ぜひご覧ください。

世界一大きい蜂・ウォレスの巨大蜂は危急種
ウォレスの巨大蜂は、翼幅や腹が大きく「世界一大きい蜂」とされています。一度は絶滅したと考えられていましたが、2019年の再発見によって存在が確認されました。
しかし、調査隊を結成してようやく見つかるほど個体数が少ない希少種です。乱獲による個体数減少や森林伐採等の環境変化による生息地の減少も危惧されています。タランチュラホークも含め、大きいからといって危険なわけではないため、人間側が距離をとり、保護を重視することも大切です。
ただし、日本国内最大のオオスズメバチには注意しましょう。攻撃性・毒性ともに強く、巣に近づくだけでも人を刺すことがあるからです。絶滅危惧種ではないからといってむやみに駆除すべきではありませんが、人の生活圏に出没・営巣した場合は、人への被害が出る前に蜂駆除業者による駆除を検討してください。
